米津玄師 / Kenshi Yonezu / ハチ

米津玄師(よねづけんし)は、日本のシンガーソングライター。かつてはボカロP『ハチ』名義で活動していた。
2009年よりボカロP「ハチ」としてニコニコ動画等の動画サイトを中心に活動していたが、2012年に本人名義のアルバム『diorama』でデビュー後、2013年にシングル『サンタマリア』でメジャーデビューを果たす。
ネット出身のアーティストということもあり、デビュー当初は若者中心に人気を集めていたが、TBS系列ドラマ『アンナチュラル』の主題歌として2018年にリリースされた「Lemon」で第69回NHK紅白歌合戦に出場。メイン会場であるNHKホールではなく、郷里の徳島県にある大塚国際美術館にて歌唱を行った。
その後もテレビドラマやCM、アニメ主題歌などのタイアップを通じ、老若男女問わず幅広く支持されている。
音楽活動と並行してイラストレーターや映像作家としても活動しており、自身の楽曲のアルバムジャケットや、アニメーションによるミュージックビデオ等を制作している。

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米津玄師 / Kenshi Yonezu / ハチ
10

なぜ、米津玄師の楽曲は大勢の人に愛されるのか

国内でもトップクラスの人気と知名度を持つ米津玄師について。
彼の楽曲を好きという人は老若男女実に幅広い。
何故、彼はこんなにもたくさんの人に愛されるのか。筆者なりに考察してみた。

人はそれぞれが持つ記憶や経験・ 価値観に共感できる歌に触れた時「これ、いい曲だな」と感じるのではないだろうか。
例として、「恋人と別れたショックでなんにもできない!」と歌った曲があるとする。
似た経験をした人ならば「わかる!そうなっちゃうよね」と共感するが、
「いや別れたってそこまではならないよ…」なんて人は共感度や感動度は低いだろう。
しかし米津玄師の曲の持つ「共感」は、自身の経験や価値観という縛りを受けないように思うのだ。
ドラマや映画で泣いたことはないだろうか。自分の経験ではないのに、登場人物に共感して感動してしまう。
それが自分と異なる性格や価値観の主人公であったとしても。
米津玄師の曲を好きになるときは、この感覚がとても近い。
彼が大勢を魅了するのは、曲の一つ一つに良い映画の主人公のような存在を感じるからではないかと思う。
例として「MAD HEAD LOVE」という曲がある。歌詞やMVからは幸せとは思えないような暴力的な恋愛模様が読み取れる。
筆者にはそれに共感できる経験も価値観もないのだが、
「この曲の主人公(達)は喧嘩がたえず、心も体も傷つけあっていて、それでも好き合ってるんだな。離れるよりも傷つけあうことを選んだ二人なんだな」
と、いつの間にかその価値観を肯定し、愛憎抱える主人公に共感し引き込まれてしまっていた。
この時の自身の感情の流れが、ドラマや映画を好きになるのととても似ている。
このように自身の経験や価値観という縛りを取っ払ってくれる「主人公」を生む力を、筆者は〝天才的〟と感じている。
米津玄師の楽曲はラップ調のもの、バラード、ロックと様々なバリエーションがある。
その一つ一つに泣き、笑い、叫んでいる魅力的な主人公が存在し、唯一のストーリーを持っている。
万人に愛される主人公が存在しなくとも、曲の分だけ異なる主人公が存在するのだ。
その中にはきっと、あなたを虜にするものがあると思う。