BLUE GIANT / ブルージャイアント

BLUE GIANT / ブルージャイアント

『BLUE GIANT』とは、2013年から『ビッグコミックスピリッツ』において連載されている石塚真一による漫画である。ジャズを題材とする本作品は、世界一のサックスプレーヤーを目指す高校生・宮本大が、仙台、東京、ドイツと拠点を移しながら一歩ずつその階段を上っていく様が描かれている。2016年に舞台をドイツに移してからは、『BLUE GIANT SUPREME』の別タイトルで続編が連載された。

ca_orz_riy3のレビュー・評価・感想

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BLUE GIANT / ブルージャイアント
9

ジャズがわからなくても読める、ジャズが聞きたくなる漫画

「ジャズの漫画」と聞いて、あなたはどんなイメージをするだろうか。
おしゃれ?かっこいい?よくわからない?
そういう少し斜に構えたようなイメージを文字通り「吹き飛ばしてくれる」のがこの「BLUE GIANT」という漫画。
もちろん音は出ないのだが、主人公やその他の登場人物から熱や圧が感じられる。
気迫と情熱が高濃度で描かれている。
音は出ていないのに音を感じ取れるような錯覚に陥る。
専門用語なども少なく、ジャズのことを知らなくても熱中できる漫画だ。

主人公の「宮本大」は高校からサックスを吹き始める。
そこで大には特別な才能が…という「いつもの漫画パターン」ではない。
もちろん師匠が付いてくれたり、幸運に恵まれているのだが、彼はずっと吹き続ける。本当にずっと吹き続ける。
漫画だからいつまでも吹いていられるのだが、苦しいときも悩んでいるときも、本当に毎日吹き続ける。
ありえないほどのストイック。圧倒的練習量。いきすぎて逆にリアルに感じられるほどだ。

もちろん失敗もたくさんしているし、窮地には何度も立たされている。
その中でも彼の頭の中は常にジャズの事しかない。
プロフェッショナルとはこういうものなのかとも思える。
悪路を4WDのような車で走破するような、困難に打ち勝っていく様子が清々しい。
それでいて、いわゆるスポ根とは違う。
「真摯に向き合っている」、「好きで仕方がない」という表現が近い。
暑苦しいと呼ぶにはあまりに純粋で、根性と呼ぶには狂気じみている。

ただ、この漫画は吹き続けている漫画で、息継ぎの日常パートのようなものは少ない。
それが辛く感じる人はいるかもしれない。

幾度となく打ちひしがれても何度でも立ち上がる主人公の姿は、こちらに勇気と興奮、ジャズへの興味をくれる。
オススメの漫画だ。