言の葉の庭 / The Garden of Words

言の葉の庭 / The Garden of Words

『言の葉の庭』は、日本のアニメーション映画。『秒速5センチメートル』や『星を追う子ども』で知られる新海誠が原作と監督と脚本を手掛けた。2013年5月31日公開。キャッチコピーは「“愛”よりも昔、“孤悲”のものがたり」。
靴職人を夢見る高校生のタカオは、雨が降ると学校をさぼって公園の日本庭園で靴のスケッチをしていた。そんなある日、彼はひとり缶ビールを飲む謎めいた年上の女性、ユキノと出会う。約束もないまま雨の日だけの再会を繰り返しながらお互いに少しずつ打ち解けていく。タカオは居場所を見失ってしまったというユキノのために、彼女がもっと歩きたくなるような靴を作ろうと決心する。現代の東京を舞台に、男子高校生と生きることに不器用な年上の女性の淡い恋の物語。
登場人物の心情にあわせて様々な種類の雨を描きわけるなど、新海監督が得意とする緻密かつ繊細な描写が大きな見どころである。万葉集や日本庭園などを題材に描かれ、情感豊かな映像に引き寄せられる。
主人公の男女の声を数々の作品で声を担当してきた入野自由と花澤香奈が演じている。

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言の葉の庭 / The Garden of Words
7

大人びた少年と成長を忘れた大人の物語

この作品は約40分の短編映画ですが、この間に詰め込まれた情景や技術は粋を極めています。

新海誠といえば「天気の子」でも話題になった絵の綺麗さで有名です。
そう言わしめているのは、尋常じゃなく上手い光の表現です。
この作品においては、「反射光」と「雨粒」にそれを見ることができます。
「反射光」とは、周囲の景色から回り込んできた光です。要するに光源の逆側の物の輪郭ことです。
例えば、周りを新緑の木々囲まれた人物のシーンでは光源と逆側の輪郭に緑が使われています。
これは、周囲の木々の緑を頬や服が反射させているという現実に忠実な表現手法です。
これによってキャラクターがより自然で実在感のあるものになっています。

もう一つの「雨粒」ですが、一粒一粒の再現性が半端ではないレベルで描かれています。
陽に照らされて一瞬輝く雨粒や、水面に落下した際の雫が精密に描き込まれています。
これは、天気の子などの別作品と見比べてみるとそのリアル感がより感じられて面白いと思います。

ここまでは表現について書いてきましたが、最後にストーリーについて書いてみたいと思います。
本作は、靴職人を夢見る大人びた男子高校生「孝雄」と、とある事情で休職中の女性「雪野」との出会いと別れを描いています。
二人は雨の日にだけ逢瀬を重ねてお互いを意識し始めますが、それには理由がありました。
二人はお互いに悩みを抱えており、お互いがお互いを救い合える関係と思えたからです。
孝雄は靴職人という夢を持ちつつも、それが狭き門であることを認識し人から「できっこない」と思われているのではないかと常に怯え、焦っていました。
それに対し雪野はその夢を認め、応援してくれるような行動も取ってくれていたことで、孝雄は少しづつ心を開いていきます。
一方の雪野は孝雄を支えつつも自らの問題に手一杯の状態で、どこを向いても味方はおらず前へ進む事が出来ずにいました。
そんな雪野にとって事情を知らない孝雄と話すことは心の癒しとなっていたのです。
この後の展開については、雪野の抱える事情が明らかになるのに従って急展開を迎えますが、その真相と二人の関係性における切なさを、秦基博さんの曲と一緒に作品で感じていただければと思います。

人生で何かに悩んでいる方に響く作品になっている物語を、ぜひご覧ください。