言の葉の庭 / The Garden of Words

言の葉の庭 / The Garden of Wordsのレビュー・評価・感想

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言の葉の庭 / The Garden of Words
8

良くも悪くも人間らしさが露呈した映画

作は「映像が奇麗」だと評価されることがあるが、私は人間模様を評価したい。
舞台は新宿。靴職人を目指す高校生・孝雄と心身ともに疲弊した女性教師・雪野は時同じくして新宿御苑で出会った。お互いに学校、会社をサボった雨の日の庭園。次も、また次も、と雨の日に出会う二人は惹かれあっていく。

設定が非常によくできている。
・雨の日の新宿
・都会にぽつりと存在する新宿御苑
・そのなかに安らぎを求める悩める男と女

互いに不器用なのは生き方だけでなく、性格である。なぜかといえば、夢追う孝雄は大人に反発しつつも現状を受け入れようと苦しみ、社会の枠からはずれた雪野は立ち直ろうとしつつも一人で苦しんでいる。そんな彼らに必要だったのは心安らぐ時間、そして人間だったのだろう。

心の開ける人間が身近な人とは限らない。その現実はネット社会が物語っている。孝雄の求めたものは理解してくれる大人。その理想は”母”である。しかし肝心な実母は遊び呆け頼りにならない。孝雄は雪野という大人の女性に惚れていく。

雪野の求めたものはすべてを受け入れてくれる人。孤独感、罪悪感に苛まれた雪野には癒され笑う時間が必要だった。それが孝雄。

彼らは親密になればなるほど、その差に気付いていく。高校生の孝雄、女性教師の雪野。年齢も違えば社会的地位も違う。生きている場所も異なる。共通するのは生きていく支えを求めることのみ。はたしてともに生きていけただろうか。

鑑賞後には都会のじめじめとした雨に一点の光を差すような、すがすがしい気持ちを味わえるかもしれない。

言の葉の庭 / The Garden of Words
10

究極の癒し

新海誠さんの小説「言の葉の庭」の映画。言葉で表せられないくらいにとにかく美しい。
「君の名は」で大ヒットした新海誠さんだが個人的には言の葉の庭の方が現実味が強くしんみりとした感じが好き。映像も音楽も文句の付け所がない。映画にしては、それぞれの登場人物のセリフ量はとても少ないのだが、絶妙な雨や光の描写だけで登場人物の繊細な心を全て表現できている。特に雨が物語の中で大きな役割を果たしているのだが雨が滴る音、地面に当たって跳ねる音、激しく力強く降る音など雨の映像だけでも映画が一本作れると思うほど素晴らしい。またエンディングで流れる秦基博さんによるrainという曲のカバーが映画にぴったりで最高だ。
この映画を観た後は雨の日には、決まってこのrainが聴きたくなる。上映時間46分と非常に短い映画でだがそれを感じさせないくらいの内容の濃さと満足感が得られる。
個人としても言の葉の庭は6、7回は見ているので何度見ても飽きない映画だ。原作に比べ情報量は一段と少ないが、とても秀逸にまとまっていて大事な場面がしっかり抜粋されているので不満はない。原作が再現されていない映画でがっかりする事は良くあることだが、言の葉の庭に関しては原作を既に知っていても映画も全く違う魅力があるので観ることをお勧めする。
反対に、映画を先に観たという人は原作を読むことによって細かい情報が得られ映画では少ししか触れられなかった孝雄の兄や雪野の元恋人、高校のクラスメイト、更には孝雄のバイト先の先輩達にまで触れられているのでより言の葉の庭を知ることができる。映画、小説どちらも素晴らしいの両方とも観て読んでほしい。