平沢進 / Susumu Hirasawa

平沢進とは、テクノポップを得意とするミュージシャンである。
1979年にP-MODELを結成し、「テクノ御三家」のうちの1つとして当時のテクノポップブームを牽引した。1989年にソロデビューし、その後は個人にて活動。
「レーザーハープ」や「テスラコイル」など、個性的な楽器を用いたライブパフォーマンスや観客の反応や選択により進行が変化していく「インタラクティブ・ライブ」の実施など、常に先進的な試みを行ってきた。
また映画『パプリカ』の主題歌である「白虎野の娘」は第79回アカデミー賞歌曲賞のノミネート候補となるなど、国外からの評価も高い。
電子音が幾重にも重ねられた重厚なサウンドと、抽象的だが示唆に富んだ歌詞が大きな魅力である。またVOCALOIDにいち早く可能性を見いだし、上述の「白虎野の娘」にも利用するなど、楽曲制作を通じて様々な試みを行っている。
米津玄師や今敏など、他のアーティストやクリエーターに大きな影響を与えた人物としても知られている。

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平沢進 / Susumu Hirasawa
9

歌詞、メロディ味わったことのない世界観を覗いてみたいあなたへ。

プロレスラー長州力さんの入場曲「パワーホール」はご存知でしょうか。テレビ番組でも使用される有名な曲なので皆さんもどこかで一度は耳にしたことがあると思います。電子音が奏でるポップかつキャッチーなフレーズは入場曲としてリングを盛り上げます。ご紹介する平沢進さんはこのパワーホールの作曲者です。メジャーデビューは1997年でP-MODELというバンドのボーカルを努めました。プラスチックス・ヒカシューと並びテクノ御三家と呼ばれています。初期はプログレッシヴ・ロックを感じさせる技巧を凝らしたメロディーが特徴です。時代が進むに連れポップなテクノサウンドを使用したバンドへと変貌していきます。この変遷にも歴史があり、WikipediaなどでP-MODELを検索するだけでも彼の音楽に対する姿勢を伺い知ることができます。ちなみにかきふらい氏による漫画「けいおん!」の主要キャラクターたちはこのP-MODELのメンバーの名前をとって名付けられたといわれています。
そんなP-MODELを1988年12月に「凍結」と称して休止します。翌1989年平沢進はソロ・アルバム「時空の水」をリリースします。ソロデビューから彼は先進的な試みを行っています。例えば1999年には早くもインターネット上にてMP3形式で新曲を配信しました。その他にも太陽光発電を使用したライブやライブにストーリーを付与し観客の歓声などの行動によってそのストーリーが変化していく「インタラクティブ・ライブ」と呼ばれる他のアーティストではなかなかお目にかかれないパフォーマンスを味わうことができます。
ここまで彼のやってきた事を記してきましたがソロデビュー以降の彼の楽曲の特徴を紹介します。彼の音楽はストリングス、ギター、ファルセット、多重録音を多用するまるでオペラのようなロックのような"平沢進"という一つのジャンルとして表現することしかできない楽曲群です。しかしそのどれも整合性があり芸術的とさえいえる緻密さが溢れ出ています。一旦彼の楽曲にハマッてしまえばまさに沼の深みへ沈んでいく事になるでしょう。さらに彼の綴る歌詞は非常に難解です。彼の楽曲のタイトルで検索すると大抵「〇〇 意味」「〇〇 考察」と候補に出てきます。聞いた方たちがそのように検索せざるを得ない程に一度聞いただけでは全くその意味を理解することが難しいのです。歌詞の世界観はSF、社会風刺、人と人との繋がり、死生観などを感じることのできるある一種ポエミーなものです。難解ではありますが、メロディーにバッチリと合致する言葉遣いがむしろ耳馴染みを良くしています。考察好きの方にもおすすめできるのが平沢進です。
ここまでで書ききれない彼の歴史、魅力はまだまだ沢山あります。他のアーティストたちとは全く違う新しい世界を覗いてみたい方は是非彼の音楽を聞いてみてください。どこかで視聴して少しでもピンとくることがあれば幸いです。