ギヴン

ギヴン

『ギヴン』とは、新書館『シェリプラス』で連載されたキヅナツキのBL漫画原作による青春アニメ。2019年7月から放送された。フジテレビ「ノイタミナ」初のBLコミックのアニメ化作品として、話題となった。卓越したギターの腕を持っている男子高校生・上ノ山立夏は、ギターの腕が上がるほど、音楽への熱が冷めていくのを感じていた。だが、偶然隣のクラスの佐藤真冬と出会い、運命の歯車が動き出す。真冬は、聴く者をを魅了する歌声という才能があったのだった。真冬は、立夏の所属するバンドの練習を見学しに行くことになった。

machinosyoka1のレビュー・評価・感想

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ギヴン
10

BLに抵抗がない方には、ぜひ見ていただきたい作品です

タイトルにも記載した通り、この「ギヴン」という作品はBL、いわゆる「ボーイズ・ラブ」と呼ばれるジャンルに分類されます。
しかし、いわゆるR-18的な要素は全編通してほとんど含まれませんし、物語の主軸もそこにはありません。
私自身、普段は全くBL作品は読まないのですが、こちらの作品は友人に勧められて見てみたところ、抵抗なく楽しむことができたのでこうしておすすめしています。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、ここから作品を見ての私の感想をお伝えしたいと思います。
私がこの作品を通じて感じたこと、そしてお伝えしたいことは大きく分けて2つあります。
まず1つが、「音楽」が良すぎる、ということ。
2つ目が、キャラクターが非常に魅力的、かつ共感できる要素に溢れているということ。
以上の2点について順に詳しく触れていきたいと思います。
まず、「音楽が良すぎる」という要素についてお話ししたいと思います。
この物語は、主人公が所属する「バンド」を中心に物語が展開されており、そのため作品中に歌唱シーン、演奏シーンも登場します。
漫画でも十分に楽しむことはできますが、「音楽」を実際に楽しむためには、ぜひアニメ版・映画版の「ギヴン」を見ていただきたいです。
オープニングやエンディング、劇中歌、どれをとっても本当にすばらしいのですが、音楽を楽しむ際にはぜひ「音」や「声」だけでなく、「歌詞」にも注目してみてください。
直接的な描写がなくとも、このシーンのことを歌っているのかな?、このキャラの心情に寄り添った歌詞なのかな?と、様々な考えを巡らせることができます。
また、作者であるキヅナツキ先生、楽曲提供をなさっているセンチミリメンタルの温詞さんのお二方ともに「言葉選び」がとてもすばらしいです。
「人間の心情を理解しすぎでは…?」とならざるを得ない適切な表現に何度痺れたことかわかりません。
覚えはあるけれど、決して言葉にすることはできなかったいくつものモヤモヤとした感情をふわりと優しく包み込んでくれる、そんな音楽が「ギヴン」という作品には多く存在します。BLに抵抗がある方は、音楽だけを聞いてみても良いかもしれません。それくらい、おすすめしたい「音楽」がこの作品には溢れています。
続いて、キャラクターが非常に魅力的、かつ共感できる要素に溢れている、という点についてお話しします。
この作品は、先述しました通り、主人公が所属するバンドを中心に物語が展開しており、登場する主要人物は皆、「音楽」に携わっています。
しかし、この作品を楽しむ上で、音楽の知識は必要となりません。(知識があることで、より楽しめる場面もあるとは思います。アニメでは実際に「音」の要素がプラスされるので、知識がある方がこの場面は面白いな、と感じる部分もありました。しかし前述した通り必須ではありません。)
話を元に戻しますが、この作品では「音楽」、「バンド」を通して、またさらにその枠を超えて、彼らの人間性が丁寧に描かれているため、自分自身が「音楽」を嗜んでいなくとも、彼らの感情に「ああ、自分もこの感じには覚えがある」といつの間にか共感を覚え、思わず自分を重ねてしまいたくなるのです。
恋人を亡くした高校生、天才ヴァイオリニスト、いつの間にか音楽を楽しむことを忘れてしまった大学生、などなど、一見しても自分との共通点などなさそうな彼らにも、確かに自分と同じように悩み、苦しみ、希望を求める姿がありました。そして、苦しみの中でもがき、それでも前を向く彼らの姿を見ることで、私自身もゆっくりと前を向く勇気をもらうことができました。
日常生活を送る中で、ふと疲れや不安、言葉にできないような孤独感に苛まれたとき、この作品をぜひ見ていただきたいです。
きっと、作品が、登場人物が、優しく寄り添ってくれると思います。
漫画版・アニメ版・映画版のどの「ギヴン」もそれぞれ非常に多くの魅力に溢れているので、ぜひご覧になってくださいね。