裏バイト:逃亡禁止(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『裏バイト:逃亡禁止』とは、田口翔太朗によるホラー漫画。漫画雑誌アプリ『マンガワン』にて毎週土曜日更新で連載中。白浜和美と黒嶺ユメを中心に、常に命の危険がある裏バイトに身を投じ、様々な怪異と対峙、高額な報酬を得ていく。1エピソードが基本的に前中後編で構成されているオムニバス形式である。毎回異なる怪異が登場し、ゾクッとさせられる結末も多い独特な味わいを持つホラー漫画である。

『裏バイト:逃亡禁止』の概要

『裏バイト:逃亡禁止』とは、2020年より漫画雑誌アプリ『マンガワン』にて連載中の田口翔太朗によるホラー漫画である。一週間遅れで漫画配信サイト『裏サンデー』でも公開されている。
漫画の構成は、1エピソードが基本的に前中後編となっているオムニバス形式を取っている。
内容として、白浜和美(しらはま なごみ)と黒嶺ユメ(こくりょう ゆめ)の二人が、高額な報酬だが命の危険がつきまとうハイリスク・ハイリターンな裏バイトに手を染めていく。
各エピソードに毎回異なる怪異が登場し、主人公たちは怪異による死の罠をかわしながら高額な報酬を得るのだが、怪異によって毎回のように犠牲者が発生し、裏バイター以外の一般人も巻き込まれて大量の被害者が出ることも多い。主人公二人は生還するが、他の裏バイターや関係者の顛末は鬱展開のバッドエンドになることがほとんどである。ごくまれに怪異が登場するホラー回と見せかけたギャグで終わる回もある。
毎エピソードで異なる職種や怪異が登場するため、バリエーションが非常に豊か。読んでいて背筋が凍るような描写が突然出てくる場合もあり、ホラー漫画としての完成度が非常に高い。時折差し込まれるギャグ回はホラーとシュールギャグが絶妙に合わさり、人死に・鬱展開が多い本作において清涼剤の役目を果たしている。

『裏バイト:逃亡禁止』のあらすじ・ストーリー

ユメハマコンビ結成

リゾートバイトで偶然出会った和美(左)とユメ(右)

リゾートレストラン「緑心庵」でのホールスタッフ募集に応募した白浜和美(しらはま なごみ)は、同様に応募して来た黒嶺ユメ(こくりょう ゆめ)と出会う。
実は、ユメには嫌な予兆を匂いで感じ取る特殊能力があり、そのおかげで和美とユメはバイト中の窮地を脱する。オーナーがふたりに襲い掛かる中で和美はユメが中学の同級生だったことを思い出す。
間一髪のところで逃げることに成功した後、和美からハイリスクハイリターンのワケあり裏バイトを一緒にやろうと誘われるユメ。こうして和美とユメの裏バイトコンビが結成された。

知名度がほとんどない島・福音島(ふくいんとう)で助勤巫女の裏バイトをする和美とユメ。新年会の夜、同じ裏バイターの未帆(みほ)が島民たちに殺され福ノ神への生贄とされる。未帆の親友であり、一緒に裏バイトに来ていた真琴(まこと)は、自らを福ノ神に捧げて未帆を殺した島民たちを一人残らず無惨に殺すように願う。福ノ神は願いを聞き届け、島民184名は不可解な事故により全員無惨な死を遂げた。
自らの身を犠牲にした真琴を見た和美は、自分たちが同じ立場であったら逃げて、とユメに告げる。ユメは約束しかねると言い、一番大事なものは和美と自分の命であり、奪われた時は誰であっても絶対に許さないと和美に語った。

裏バイトで様々な人との出会い

和美とユメは水族館スタッフとして、バックヤードツアーの受付と管理を任される。今回は和美の後輩の篠月橙(しのつき だいだい)も一緒に勤務することに。
水族館に巣くっている怪異・マザーフィッシュの誘惑に橙が取り込まれそうになるが、和美の一喝でかろうじて生還することができた。

裏バイト仲介人の赤川(あかがわ)からの紹介で、和美とユメ、橙、そして新人裏バイターの緑澤由紀(みどりざわ ゆき)の四人は、探偵である八木琢磨(やぎ たくま)から芸能人吾妻史郎(あづま しろう)の素行調査の依頼を受ける。
四人は和美と由紀、ユメと橙の二人組となって尾行を開始。自身を根暗と卑下し、愚痴を言い出すと止まらない性格の由紀。由紀曰く、まともに仕事も出来ず、気づいたら借金まみれで裏バイトに手を出す羽目になったのだと和美に語る。
吾妻史郎の正面から彼に気づいた者は、間を置かずに不可解な事故で即死する。
この時点で吾妻史郎は既に死亡していたため、町を歩き回っていたのは彼の虚像ではないか、と八木は仮説を立てた。実体のない“虚像”としての存在を守るために、虚像との相互認識が成立した相手を死に至らしめていたのだと推測を語る八木。
無事裏バイトを終えた帰り道、何かに気づいた由紀は振り返り、自身を仲間と認めてくれた和美に「不安しかない仕事だったけど、和美に会えて良かった。ありがとう」と言い残し車にはねられる。その背後には吾妻史郎の虚像がいた。

温泉宿「乳海」に和美とユメはスタッフとして雇われる。
調査した八木から、乳海の売りである温泉「夢ノ湯」の真実を報告された女将の武藤(むとう)は旅館に火をつけ、燃え落ちる夢ノ湯と運命を共にした。
和美とユメは炎上する宿に取り残される。和美は前回の裏バイトで自分をかばって死んだ由紀の死を引きずっていた。他の人間を気に掛けるユメのせいで影響されてしまったと言う和美に、ユメは「私はずっと側にいるから」と和美に寄り添い、宿の炎上崩落にそのまま巻き込まれる。

温泉宿の崩落に巻き込まれたものの、寸でのところで壁を壊した救急隊に救出され、助かった和美とユメ。
世界旅行の計画を立てる夢の中で和美は、何か大事なものを忘れているように感じていた。
ラジオADの裏バイト中、怪異となったリスナーの「がまずみ」からのメールで自分が孤独であることを自覚する和美。
裏バイトを終えた和美は、自分の夢である世界旅行に一番大切な「一緒に行く友だち」を忘れるところだったと言ってユメを誘う。ユメもきっと二人で行こうと返し、約束を交わす。

深まる二人の絆

空き地探しの裏バイト中に、裏バイターたちはきぐるみのような何かに襲撃を受ける。目と鼻の先に迫ったきぐるみにフリーズしてしまったユメ。
金のためならば、他人をも犠牲にする裏バイターの崎村えり(さきむら えり)から、フリーズしたユメを捨ててバディになろうと和美は誘われる。和美はユメを抱き寄せ「私のバディがアンタの事クセ―っつってるんで」と言って断る。
その後、えりは騙して見捨てた友人の高階朱美(たかなし あけみ)に足を掴まれ、きぐるみのような何かから逃げそびれた結果、町の家の中に閉じ込められることになった。

ユメの自宅近くの駅で、あるはずのない13番ホームに迷い込んだ普通の客を案内する、駅員の仕事に就く和美とユメ。普通じゃない客に反応してしまったユメは、連れ去られて消える。13番ホームに入ってきた電車に乗り込んだ和美は、乗客の一員となりかけたユメを抱えて電車から飛び降り、取り込まれずに済む。

電車からは脱出できたものの、今までいたところとは違う世界線に来てしまったことを悟った二人。元の世界線に戻るため、遊園地スタッフとして手がかりを探す。
その遊園地の着ぐるみたちはナイトパレードの光を使って、大人たちを胎児まで退行させて食らっていた。和美とユメは時間逆行の光を浴びせられ、10日前まで時間が戻ったことで元の世界に帰還することに成功する。
戻ってきた後、和美はユメから実の両親に遊園地で捨てられたことを明かされる。

小松茶々、藍川時子との出会い

閑静な高級キャンプ場で連続殺人が起こる。八木の知人で、探偵の小松茶々(こまつ ちゃちゃ)の推理によって連続殺人事件は解決したように思われた。
しかし、その後も不可解な殺人が続き、八木が裏の案件と判断。オヨツと呼ばれる人に取り憑く怪異によって殺人が続いていたことが判明する。ユメの異能でこれ以上の滞在は危険と察した和美、ユメ、茶々、八木の4人は、その場から無事に逃げ出すことに成功した。

和美とユメ、そして探偵の茶々は、行方不明になった娘の捜索の依頼を受けて空き家を訪れる。
ユメの境遇を聞き、キャンプ場での礼として義両親を探すことを約束する茶々。
この空き家に探索に入った探偵たちは人の形のシミと化し、茶々も危うくその一人となってしまいそうになるが、ユメによって助けられる。
後日、ユメの義両親を捜索していた茶々が失踪したことを知る。

藍川気象研究所が気象観測を行っている榊原平原にて、和美とユメは観測を手伝う裏バイトに就く。二人が空を見上げていると、所長の娘の藍川時子(あいかわ ときこ)が「空を見上げてはいけない」と話しかけてくる。
所長に娘と会った話をすると、時子はもう死んでいると話す。
所長に時子が話しかけた瞬間所長が消滅する。既に死んでいたのは時子ではなく所長であった。

老舗の料亭で開かずの間の話を聞く和美とユメ。開かずの間に入った裏バイターの万代(ばんだい)が死亡し、部屋で寝込んでいたユメの顔には万代の顔に出ていたものと同じ死相が。それに気づいた和美は八木に相談、情報を得て呪いを解くために開かずの間を探す。
もう一度開かずの間に入ることで呪いは解かれユメは助かるが、呪いを無効としてしまったことで二人は解雇される。

気象観測の裏バイトにて登場した時子が赤川の事務所を訪れ、和美とユメの二人に直々に発掘調査補助員の裏バイトを依頼する。発掘に関わりおかしくなってしまった人間が一体何を見たのか、時子が所属し裏の事象を研究する組織「Q」が情報を欲しがっていると時子は話す。
考古学者の平川昭雄(ひらかわ あきお)は人間の上位種である異形人類の化石を掘り出したいと言い、手伝う二人。発掘を進める中で、歴史にはデザイナーと呼ばれる存在が関わっていて、不都合があると全てリセットされ、最初から作り直されたことを平川は思い出す。この場から脱出するために発掘を再開する平川たちの前に、異形人類=デザイナーが現れる。
異形人類の情報を欲しがっていた時子だが、平川の行動がきっかけとなり世界は全てリセットされた。

それぞれの家族の謎

工場作業員のバイトにて、工場に長年務めている稲葉(いなば)から、和美の父である白浜達也(しらはま たつや)が娘のために裏バイトの仕事をしていたことを聞いた和美。
仲介人の黒岩(くろいわ)のところで和美の父達也の情報を得るため、対価として人が死んだ部屋の片づけを行う特殊清掃員の仕事を受ける。
裏バイトリーダーの梨本恵介(なしもと けいすけ)が、特殊清掃が終わった部屋に一晩泊まると言い出す。
梨本は昔、通常の特殊清掃員として働いていた経験があった。その清掃業務を通じて死んだ人たちの人生を身近に感じ、親友と思うようになったと和美とユメに語る。徐々に様子がおかしくなった梨本は、「死に勝るものはない」「死にたい」と語り、最後に梨本が「なかたりさん」と呟くと、程なくして部屋の明かりが消えた。和美がライトをつけると、そこには荒廃した部屋と原型をとどめないほどに腐乱した梨本の死体があった。
そこに警察官がたくさんの死体袋を持って訪れる。アパートの全24部屋38体分の特殊清掃を依頼され、本格的な仕事が始まったのだった。

また、黒岩が仲介した裏バイトをこなしたため、和美とユメは黒岩の顔がデザインされた「黒岩スタンプ」をひとつもらった。このスタンプを集めることによって、黒岩からもらえる情報が多くなっていくようだ。

行方不明だった茶々が発見され、病院に収容されるが精神に異常をきたしていた。
和美とユメは八木から、立ち入ったものが誰も生還しない、木谷脳研という伝説の心霊スポットの施設調査と4階にあるというレポートの取得に向かわされる。
無事レポートを依頼人である藍川時子に届け、仕事を完遂したことで茶々をQの医療施設で預かってもらえることになる。

スーパーマーケットで店員として働く和美とユメ。同じ裏バイターの白田(しろた)から、このスーパーマーケットで母が死んだ理由を探っていると聞かされる。
裏バイターの夜間警備員が死亡したため、白田、和美、ユメの三人は代わりとして夜間警備を任される。スーパーマーケットに出没する怪人に関りすぎた白田は、日常がスーパーマーケットに支配されていることに気づく。そこからの解放を望んだため、白田はユメの目の前で惨殺される。
黒岩スタンプを一定数集めた和美は、黒岩から亡き父の情報を得る。父が死んだと聞かされたのは6年前だったが、最後に仕事を請け負ったのが3年前の黒岩案件であった。

和美とユメは指名されて引っ越しスタッフの裏バイトを受ける。
ユメの母親、黒嶺弥生(こくりょう やよい)を知っている様子の金(ジン)と銀(イン)に雇われ、ストーカーにつきまとわれているという依頼主の夜逃げの手伝いをする。
車で逃げる途中で怪異に追いつかれるが、ユメと金の二人で撃退することが出来た。

不穏な未来の予感

益荒川(ますらがわ)花火大会が何者かに妨害を受け、花火を持ち込めない原因の調査を依頼された茶々。調べを進めた茶々は、江戸時代後期に頭部が崩壊する奇病である益荒鬼が流行っていたとの歴史を知る。茶々の助言で何らかの封印を破り、花火大会は無事開催の運びとなった。
しかし、封じられていた怪異の益荒鬼(ますらおに)が花火大会によって解き放たれ、大勢の花火大会の参加者が頭部を破裂させられ犠牲となった。茶々の依頼を手助けしていた八木は、花火大会は200年の間開催されたことはなく、鎮められたのは疫病ではなく益荒鬼という存在だと考察する。
たくさんの人が犠牲になったことに胸を痛めるユメ。和美だけは絶対に死なせないと、泣きはらした顔で和美に告げる。

Qが最初に作ったとされる3つの百葉箱の調査を、時子から依頼される和美とユメ。百葉箱は百葉窓と表現され、時子は異次元や異空間を観測するための窓だと考えているようだ。和美とユメが撮影した写真から、3つの百葉窓は異次元への入り口と出口、そして時間軸の観察をするためのものと時子は推測する。時間軸を観測する百葉窓に映った未来のユメは「許さない」と言っているようだった。

樹海で行方不明になった大学生・滝沢純太(たきざわ じゅんた)の捜索隊が編成されるものの、捜索隊員は全員消息を絶つ。黒岩案件として第三捜索隊が結成され、和美とユメが参加する。樹海を進む中で第一捜索隊、第二捜索隊のメンバーが皆なにかのツルで首を吊っているのが発見される。
第三捜索隊のメンバーも徐々におかしくなっていき、ひとり、またひとりと操られるようにツルで首を吊っていく。和美とユメもお互いの首にツルをかけるが、どうしても互いを殺すことはできない。第三捜索隊のひとり、ボランティアの伊藤サチ(いとう さち)が廃屋で純太を発見するが、純太の腹部は大きな玉状となっており、その玉には皆が首を吊るのに使ったツルのようなものが繋がっていた。純太の腹部の玉から赤子が生まれた瞬間に、和美とユメは正気に戻ることが出来た。
黒岩スタンプがたまったことで、和美の父の達也は最後にQからの依頼を受けたことが黒岩から明かされたのだった。

『裏バイト:逃亡禁止』の登場人物・キャラクター

主人公

白浜和美(しらはま なごみ)

出典: twitter.com

主人公のひとりで、短い金髪、スレンダーな長身美女。性格はサバサバしていて度胸があり、何に対しても物怖じせずに行動・発言できるタイプ。ユメからはハマちゃんと呼ばれる。
世界を隈なく見て回りたいという夢のため、大金を稼ぐべく裏バイトをしている。
父子家庭で育ち、父親である白浜達也(しらはま たつや)は和美が高校生の時に死去している。
後に達也も裏バイターだったことが判明し、父の情報を得るため裏バイトを請け負う場合もある。
裏バイトを続けるのは世界旅行のためと周囲に説明していたが、実は難病にかかっており、大金を稼ぐのは莫大な費用がかかる治療薬のためでもあった。
(旅行にユメを誘う描写もあるため、世界旅行も大金を稼ぐ目的のひとつである可能性は高い)
ユメの異能と和美の持ち前の度胸と力技で裏バイトを何度も無傷で潜り抜けてきたために、業界では「不死身の白浜」と呼ばれている。
裏バイト界隈では有名人であり、他の裏バイターからは憧れの眼差しを向けられたり、バディのお誘いがあったりすることも。

黒嶺ユメ(こくりょう ゆめ)

もうひとりの主人公で、長い黒髪を下で緩く結んでいる巨乳美人。性格は几帳面で静か、裏バイターや一般の市民が怪異の犠牲になることに胸を痛める優しい心の持ち主。弟妹がいるが、血はつながっていない。義理の両親(弟妹の実の両親)が蒸発しており、巨額な借金返済と幼い弟妹を養うために大金を必要としている。
和美の中学の同級生であり、ホールスタッフの回で再会した和美に誘われて、ハイリスクハイリターンの裏バイターとして働くことになった。
嫌な予兆が黒い匂いとして現れるのを感じ取る異能の持ち主。黒い匂いに対して何かしらの対抗策となるものに対しては、白い匂いとして感じることができる。
眠る時は目を開けたまま寝たり、自分の対応力を超えたことがおこると「NOW LOADING…」とフリーズしてしまう独特な癖がある。
絵心はあまりないようで、雪像を作った際は怪異顔負けの造形を披露した。
実の両親である黒嶺が義理の両親を殺したという情報を裏バイトで知り合った銀から得る。
幼少の頃に遊園地で実の親に捨てられた過去が遊園地スタッフの回にて明らかになった。

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