椿の花咲く頃(韓国ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『椿の花咲く頃』とは、2019年に韓国のKBSで放送されたロマンティックラブサスペンスコメディテレビドラマ。日本では2019年Netflixにて配信開始された。シングルマザーのドンベクが警察官ヨンシクと恋に落ち、彼の支えにより徐々に自信を持ち変わっていくラブロマンス。温かい人間ドラマを描く一方、サスペンス要素も入り単なるラブコメではないのも魅力のひとつ。豪華主演の2人と名だたる俳優陣が脇役を勤め上げ、韓国では歴史に残るヒット作となった。

『椿の花咲く頃』の概要

『椿の花咲く頃』とは、2019年に韓国のKBSで放送されたロマンティックラブサスペンスコメディテレビドラマ。脚本はイム・サンチュン、演出はチャ・ヨンフン。
元恋人の故郷である田舎町オンサンにやってきたシングルマザーのドンベク。幼い息子を抱えて彼女は周囲の偏見と闘いながら、「カメリア」という居酒屋を切り盛りしながら生活していた。
6年後、子どもの頃から正義感が強くソウルで警察官となったヨンシクが、左遷される形で故郷オンサンに帰って来た。ある日町の本屋でドンベクの姿を目にしたヨンシクは、彼女に一目ぼれをしてしまいそこから猛アタック生活がスタートする。全力でドンベクを応援し全力で彼女に想いを伝えるヨンシクに戸惑いながらも徐々に惹かれていくドンベク。一方、町では不穏な空気が流れていた。6年前の未解決事件を彷彿とさせる殺人事件が発生したからだ。過去の事件では、その殺人犯はジョーカーと呼ばれ町の人から恐れられていた。同じような事件が再び発生し町に衝撃が走る。さらにジョーカーは、密かにドンベク宛にメッセージを残していた。それを知ったドンベクは以前の殺人事件の恐怖が蘇る。実はドンベクは、あの日殺人事件現場にいたのだった。恐怖に震える彼女の姿を見たヨンシクは、ドンベクを守り、必ずジョーカーを捕らえることを心に誓う。
町の人たちからの偏見や6年前の事件に苦しむドンベクと、純粋な愛で一途に支える青年ヨンシクが心を通わせるロマンスが描かれた作品。ファン・ヨンシク役を演じたカン・ハヌルは、第56回百想芸術大賞で『梨泰院クラス』でノミネートされていたパク・ソジュンをおさえ、男性最優秀演技賞を受賞した。その他同じくドラマ部門でも大賞を受賞し、助演賞にオ・ジョンセ、脚本賞にイム・サンチュンが受賞するなど4冠達成。最終回が同年の地上波ドラマで最高視聴率23.8%を記録するなど、ドラマ史に残る名作となった。

『椿の花咲く頃』のあらすじ・ストーリー

ドンベクとヨンシク運命の出会い

書店でドンベクに一目惚れするヨンシク

田舎町オンサンに、小さな赤ちゃんを連れたシングルマザーのオ・ドンベクが引っ越してきた。彼女はここで「カメリヤ」という居酒屋を始める。美しいドンベクに惹かれて町の男たちはカメリヤに通い始める。小さな町はあっという間にドンベクの話題で持ちきりとなった。しかし、町の女たちからは目の仇のように見られ、苦しい思いをする。ドンベクは町に馴染めず心を開くこともできず孤独の中にいた。しかし、そんなドンベクを唯一支える存在がいた。町の警察官であるヨンシクの母であり、商店街のリーダーでもあるクァク・ドクスンだ。彼女は夫に先立たれ女手一つで息子ヨンシクを育ててきた。今、息子一人を必死に育てるドンベクの姿に、かつての自分を重ねて友人として接していたのだった。
6年後、オンサン出身の青年ファン・ヨンシクが帰郷する。ソウルで警察官をしていた彼は、捕まえた犯人を殴るというトラブルを起こし左遷される形で故郷に戻ってきたのだった。幼い頃から正義感が人一倍強く、純粋でまっすぐな性格のヨンシクはある日、書店でドンベクに出会う。一瞬で恋に落ちたヨンシクは、その日から彼女の虜となる。
ヨンシクがカメリヤを初めて訪れたのは自身の歓迎会だった。そこでヨンシクが見たのは、町の群守を夢見る客のノ・ギュテに手を握られたり、ピーナッツをサービスさせようと執拗な嫌がらせに困っているドンベクだった。権力を笠に着る彼に苛立ちを見せ助けようとするヨンシクだったが、ドンベクは控えめながらも毅然とした態度で「わたしの手首や笑顔の代金は含まれていません」と言い切る。そんな姿に胸を打たれたヨンシクは、「あなたのファンになったので、これから毎日来ます!」と宣言するのだった。当初は「変な人」と感じていたドンベクだが、ヨンシクの直球でひたむきな愛に次第に心惹かれるようになっていく。

迷宮入りした連続殺人犯ジョーカー

平和な町オンサンは、実は6年前恐ろしい事件が起こった過去がある。エステティシャンが殺害され、犯人が「ふざけるな」と書いたメモを現場に残したまま、解決されず事件は迷宮化している。ジョーカーと呼ばれるその犯人の行方は分かっていないが、事件には目撃者がいた。その目撃者とはドンベクだった。被害者でエステティシャンのグモクとドンベクは、当時グモクのエステサロンにいて、ドンベクがマシンの中に入っていた間にグモクが殺害されてしまったのだ。この事件でドンベクは町中から「不運な女」と呼ばれることになってしまう。

そして事件から数年後、ドンベクの店の壁には人知れず「おまえもふざけるな」という落書きが残っていた。この店の壁には来店客の落書きがたくさんあるため、不審な落書きには誰も気づかない。しかしある日ヨンシクがその落書きを見つけてしまう。カメリアの建物のオーナーであるギュテに、店の壁の落書きを消すように指示されたヨンシクは、ドンベクのために落書きを消す作業を請け追っていた。そしてその作業中に落書きを発見。すぐにジョーカーのことが頭をよぎったヨンシクは、写真を撮って署に戻り操作ファイルを調べることにした。捜査ファイルに残った写真と落書きの筆跡はそっくりだった。ドンベクが心配でたまらないヨンシクは、「心配される理由がない」と突っぱねようとする彼女に、「理由ならある」と言ってジョーカーのものと疑われる落書きを見せた。机に隠れて見えなかったその落書きを見たドンベクは青ざめる。そんな彼女にヨンシクは「僕は警察官だからあなたを守る」と誓いを立てた。

対照的なジョンニョルとヨンシク

ドンベクの一人息子カン・ピルグの父は野球選手のカン・ジョンニョルである。彼は現在別の女性と結婚して生まれたばかりの子どもがいるが、妻ジェシカとは仮面夫婦で不仲だった。表面上は仲良くしているものの、妻は子どもをジョンニョルに任せっぱなしである。ひょんなことから故郷である母校のオンサンで撮影することになったジョンニョルは、そこでドンベクと再会する。ピルグにも会ったジョンニョルは、ドンベクとの間に子どもがいることに大きな衝撃を受けるのだった。以降ことあるごとにオンサンへ足を運ぶようになるジョンニョル。ドンベクへの想いを捨てきれずにいたジョンニョルだが、ドンベクが彼から去ったのには理由があった。当時から人気野球選手だったジョンニョルは、ある日ドンベクが妊娠検査薬を持っているのを発見する。妊娠しているのか問いただすジョンニョルに、「妊娠していない」と嘘をついたドンベクだが、そのときジョンニョルは心から安堵した表情を見せた。彼の中ではまだ結婚も子どもも考えられなかったのだ。本当はピルグを身ごもっていたドンベクは、そんなジョンニョルの表情に傷付き家を出ることを決意。以降彼とは一度も会っていなかった。

ジョンニョルは、自分がオンサンへ行くたびにドンベクの横にいるヨンシクを見て苛立ちを隠せない。そして息子ピルグのことも気になり何かと世話を焼く。ある日ジョンニョルがカメリアで飲んでいるところに再びヨンシクがやってきた。ドンベクに頼まれ、店に防犯カメラを設置するためにやってきたのだった。それが気にくわないジョンニョルは、ヨンシクを屋台へ連れ出し「これ以上ドンベクに同情するな」と釘を刺す。しかしヨンシクは「ドンベクを愛している」と彼女への熱い想いを告げて立ち去るのだった。

ドンベクへの想いがまだ残っているにも関わらず、「不運の女」と言ったり「ピルグが不憫だ」と言ったり、彼女の置かれた環境を悲観するジョンニョル。一方「あなたは素晴らしい人だ」「あなたならできる!」「大好きです!」とどんなときでも全力でドンベクを応援して寄り添い、ストレートに想いを告げるヨンシク。2人はドンベクから見ると対照的に映った。

周りの人たちからの偏見に下を向いて生きていたドンベクは、全てを肯定し愛してくれるヨンシクの存在に救われていく。そして彼女自身も前向きに、自信を持って生きて行こうと徐々に変わっていくのだった。

最愛の息子ピルグ

ドンベクの息子ピルグは8歳の野球少年である。物心ついた頃から母ドンベクを守らないといけない、という責任感を強くもっていて、町の人たちにいじめられている母の姿を見ると全力で助けに行くような男の子だ。そんな日常に突如現れた父ジョンニョルと、母を愛していると公言するヨンシクの存在に、ピルグは混乱と怒りを覚えていた。

誰も教えてくれなくても、ジョンニョルと母の関係を見ていて彼が父親であると分かったし、母に言い寄るヨンシクは大嫌いだった。

ある日ピルグは野球の試合でバッターボックスに立っていた。だが相手ピッチャーの悪質ないやがらせにより、デッドボールを受けその場に倒れ込んでしまう。フェアじゃないやり方が許せないピルグは相手ピッチャーを殴って乱闘騒ぎを起こす。一方ピルグの振る舞いを許せない相手チームの監督は、彼の頭を叩き「先輩ピッチャーに謝れ!」と激怒した。理不尽な事態に涙を流すピルグだが、突如ヨンシクがヒーローの如く現れ、相手ピッチャーの頭を一発殴ってくれた。そして相手監督に向かって「僕の子だ!ピルグをいじめたらただじゃおかない!」と言い放ったのだ。ピルグを全力で守るヨンシクに、一連の出来事を見ていたドンベクは遠くからほほ笑む。一方こっそり息子の試合を見に来て観客席にいたジョンニョルは、悔しそうな表情で2人を見ていた。ピルグはこの出来事以降、少しずつヨンシクに心を開いていくようになる。

不可解な出来事と狙われたドンベク

カメリヤの壁の落書きに驚くドンベク(画面左)とヨンシク(画面右)

ヨンシクは、ジョーカーを捕らえるべく捜査を続けていた。しかし一向に解決への道は開けない。そんな中、ドンベクの店近くや町中で誰かが置いたと思われる猫の餌を見つける。当初はさほど気にしていなかったヨンシクだが、その餌を触ったせいで手荒れがひどくなり、調査をすると餌から致死率9割の農薬が検出された。猫の餌は定期的に誰かが追加しているようだが誰かは分からない。

ドンベクは6年前の事件の目撃者のため、ヨンシクは彼女の身をいつも案じていた。ある日ドンベクの買い出しに付き合ったヨンシクは、彼女とともにカメリアに戻ってくる。店に入った瞬間ヨンシクは壁に大きく赤スプレーで「ふざけるなと言ったろ。お前を毎日見てるぞ」と書かれた落書きを目にする。思わずドンベクに見せないよう抱きしめたヨンシクだが、ドンベクもその落書きを見てしまう。カメリアには防犯カメラを設置したばかりだが、犯人の姿は防犯カメラには映っていなかった。死角を選んで犯行に及んだようだった。店を熟知していると思われる犯人ということは、ヨンシクが良く知る町の人間の誰かかもしれない。そのことに背筋が凍ったが同時にドンベクのことが心配でならない。ドンベクもショックを受け店にいるのが怖くなった。

6年前ジョーカーが殺人事件を起こす直前、不可解な連続放火事件が発生していた。そして再び、ピルグの通う学校やかつて殺人事件現場となったビル近く、湖などでボヤ騒ぎが起こる。一連の不審火事件にヨンシクと所長はジョーカーの存在を疑わずにはいられない。不安に思っていた矢先、ついにドンベクが被害を受ける事件が発生してしまう。市場に買い出しに来ていた彼女は、隣接するビルの中で火事に巻き込まれたのだった。何者かによって扉が閉められ外に出られないドンベクは激しい火と煙のせいでその場で気絶してしまう。一方ヨンシクは急報を受け事件現場に急ぐ。そして自身もヤケドし負傷しながらやっとの思いでドンベクを救出することに成功した。

ヒャンミの死と一連の事件の真相

遺体となって運ばれるヒャンミ(画面中央)

湖の中から、行方不明だったチェ・ヒャンミが遺体となって見つかった。ヒャンミはカメリアで働く女性だった。店から宅配に出かけたまま消息が分からなくなっていたが、彼女のスマホのGPS位置情報が湖から発信されていることが分かり捜索していた矢先だった。ヒャンミがいなくなったあの日、宅配に行くのはドンベクになるはずだった。ジョーカーは明らかにドンベクを狙っている。ヒャンミの死を知り泣き崩れるドンベクを見たヨンシクは、彼女を守りジョーカーを必ず捕まえると心に誓うのだった。そして町の人たちもいつしかドンベクを守る行動に出始める。

6年前の事件の日、ジョーカーの後を追ってエステサロンに入っていく人物がいた。それはドンベクの母ジョンスクだった。かつて貧困から娘を養えず置き去りにした過去を持つジョンスクは、この日数十年ぶりにドンベクに会う決心をしてドンベクがいるエステサロンの外で、彼女が出てくるのを待っていたのだった。緊張から喉が渇いたジョンスクは自販機で飲み物を買って飲もうとしたところ、塗料の強烈な匂いがする男とぶつかる。男はそのままエステサロンの入るビルの中へ消えていった。しかし直後サロンの入っている窓から明かりが消える。ただ事ではないことを察知したジョンスクはサロンに急ぐ。ジョーカーはグモクを殺害した後、マシンの中にいるドンベクに気付いたがマシンが開かず躊躇している間に警報機が鳴った。そしてすぐさま退散しドンベクは難を逃れたのだった。娘の危機を察知したジョンスクが警報機を鳴らしたのだった。

ドンベクの母は、実はずっと前から彼女を見守っていた。ピルグを預ける際にドンベクが利用していた乳児院で働いていたこともあった。認知症を装ってドンベクに近づき生活を一緒にしはじめたのは、自分の死亡保険金を彼女に渡すためだった。またジョンスクは真犯人の目星がついていた。それは金物店のフンシクだった。カメリアに防犯カメラを設置した人物である。一方ヨンシクも、フンシクが猫の餌を置いたことを知り、彼の家からそっと猫の餌を持ち帰り調査していた。30年来の友人であるフンシクを疑いたくはないものの、ヨンシクの中ではフンシクがジョーカーではという疑惑が確信に変わりつつあった。

亡くなったヒャンミの遺体の爪から皮膚が出たため疑惑が浮上していたフンシクがDNA鑑定に応じるが、結果はフンシクのものではなく彼の父親のものだった。真犯人がフンシクだと確信していたヨンシクは愕然とするが、広域捜査隊の捜査には任せておけないと悟り独自にDNA鑑定を行う。

フンシクの父は息子をかばうため、自分が殺人を犯したと自白。ヒャンミをドンベクだと思い殺害し、ヒャンミを運ぶ途中で爪が当たったと説明した。しかしヨンシクは「おじさんは人を殺せる人じゃない」と言い、ヒャンミの口の中から普段からフンシクが使っている黄色い耳栓が出てきたことを知らせる。すると父はフンシクがヒャンミを殺害したことを彼自身の持っていたノートから知り、後始末のために動いたことを涙ながらに話した。フンシクは小さい頃から猫を拾ってきては殺していたという。「怪物になった息子の責任は自分が取らなければ」とヨンシクに話した。

フンシクの父の供述から逮捕されたフンシクは、「ジョーカーはどこにでもいる」と不気味な笑顔を見せ、ヨンシクの純真さが気に入らないと言った。ヨンシクは彼に鋭いまなざしを向け、「悪人はそういないが、善人はいくらでもいる。悪人がどうあがいても頭数では勝てない」と反論した。

プロポーズとその先の未来

ヨンシクは火事の中からドンベクを助けたとき、これ以上彼女を一人にはさせたくないと思い、2人が運ばれた病院でヨンシクの無事を泣きながら安堵するドンベクにプロポーズをした。愛を確かめ合った2人はその後困難を乗り越えて結ばれる。ヨンシクの母も当初は2人を反対していたものの了承し周囲からも祝福された。ピルグもまた、ヨンシクを家族として受け入れるようになる。元恋人のジョンニョルは、妻ジェシカと向き合い互いに支え合って生きていくこととなり、それぞれの未来を歩み始めた。

そして月日が流れ、大人になったピルグがメジャーリーガーとして記者会見に臨んでいる。「テレビの前の両親にも感謝の気持ちを伝えたいです」と話している。息子の記者会見をオンサンの自宅で見ていたドンベクは、立派な姿に涙する。彼女の横に座るヨンシクが「また泣いているのか」と笑い、2人はぎゅっと手を握り合ったのだった。

『椿の花咲く頃』の登場人物・キャラクター

主要人物

オ・ドンベク(演:コン・ヒョジン)

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