SOUL CATCHER(S)(ソウルキャッチャーズ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『SOUL CATCHER(S)』(ソウル キャッチャーズ)とは、神海英雄による学園・音楽漫画。公式略称は「ソルキャ」。吹奏楽や指揮がテーマの作品である。2013年に集英社の『週刊少年ジャンプ』にて連載を開始。その後、『少年ジャンプNEXT!!』での連載を経て、『少年ジャンプ+』に移籍し完結している。
主人公・神峰翔太は人の心が見えるという特殊な体質を持っていた。それ故に人間関係に臆病だったが、自身が通う鳴苑高校吹奏楽部の刻阪響と出会って指揮者として吹奏楽部に入部してから世界が一変し始めた。

『SOUL CATCHER(S)』の概要

『SOUL CATCHER(S)』(ソウル キャッチャーズ)とは、日本の漫画家・神海英雄による学園・音楽漫画。公式略称は「ソルキャ」。高校生吹奏楽や指揮をテーマにした青春漫画であり、部活で吹奏楽に取り組む高校生達のさまざまな気持ちがぶつかり合う様を、ファンタジーな表現を交えて描いている。集英社の『週刊少年ジャンプ』2013年24号にて連載を開始。同誌で2014年31号まで連載をし、その後『少年ジャンプNEXT!!』2014 vol.4から2015 vol.2の間、短期的に連載。最終的にウェブコミック配信サイト『少年ジャンプ+』に移籍し、2015年8月2日から2016年2月14日まで連載された。単行本が全11巻出ている他、小説版も3巻出ている。

主人公・神峰翔太(かみね しょうた)は人の心が見えるという特殊な体質を持っていた。それ故に人間関係に臆病になり、人との交流を避けてきた。ある日、神峰は自身が通う鳴苑高校の文化祭で吹奏楽部に所属するサックス奏者・刻阪響(ときさか ひびき)の演奏を聞いて衝撃を受けた。人の心を掴んで離さない刻阪に、神峰は勇気を出して声をかけた。すると逆に神峰は刻阪に興味を持たれる。神峰の特殊な体質を知った刻阪は、神峰に吹奏楽部に入って指揮者にならないかと誘う。神峰は刻阪の誘いに乗り、吹奏楽部に入部。こうして神峰の見る世界は変わり始めるのだった。

『SOUL CATCHER(S)』のあらすじ・ストーリー

神峰翔太と刻阪響との出会い

鳴苑高校に通う1年生・神峰翔太(かみね しょうた)は、「他人の心が見える」という特異体質を持っていた。心が見える神峰は、過去心の状況を見て家族や友達にアドバイスを送ったことがあるが、それが原因で相手を怒らせたりしてしまい、人間関係を崩してしまった経験が何度かあった。その経験から、心とは他人が動かすことはできないものであり、その心がたとえ苦しんでいるのが見て取れてもどうすることもできないのだと神峰は思うようになる。そうして他者との関わりを極力持たずに生活してきた。

そんな神峰にとって人がたくさん集まる文化祭という行事は地獄のようなものだった。神峰は人混みを避けて屋上へと向かう。そこでサックス奏者として活躍する吹奏楽部員・刻阪響(ときさか ひびき)と出会う。神峰の心を掴んで離さない屋上で聞いた刻阪の音をもう一度聞くために、神峰は勇気を出して講堂で行われる吹奏楽部の演奏会へと足を運ぶ。そこで刻阪の演奏が人々の心を震わせている様を見た。演奏会終了後、神峰は刻阪の元へ行き、刻阪の音楽の秘密を探ろうとした。そこで神峰は刻阪に「(刻阪の)音 届かない人が出てくるのか…」と呟く。それを聞いた刻阪は神峰を音羽病院という大きな病院に連れて行った。

音羽病院には、刻阪の1つ下の幼馴染・滝沢桃子 (たきざわ ももこ/通称:モコ)が入院していた。とてもキレイな歌声を持つモコは、ストレスか疲労からか、ある日突然声が出なくなってしまった。ボーカリストを目指すモコにとってそれはとても不安なことで、ついにはモコのの精神が治療を諦めてしまった。刻阪はそんなモコを助けるために自身のサックスの演奏を日々聞かせていたが、それも届かない。神峰と一緒に病院に行った日も刻阪の演奏がモコの心に届くことはなかった。そして刻阪はこの日、もしモコを助けられなかったら音楽をやめようと決意していた。

それを聞いた神峰は刻阪を止める。今まで人との関係を避けてきたが、この時だけは引いてはいけないと神峰の中の何かが告げていた。翌日神峰と刻阪は再び音羽病院を訪れる。そして刻阪はモコとよくセッションしていた曲を演奏した。神峰はモコの心を見て、音楽がわからないなりに演奏している刻阪にアドバイスを送り続ける。その結果、モコは刻阪の音楽に感動して涙を流し、「あ゛たし…がんばる゛よ…」と声を出すことに成功した。

刻阪は神峰のメチャクチャなアドバイスで自身の音楽が格段に良くなったこと実感。神峰がその能力を持って生まれてきたのは、音楽をするためだと言って指揮者として吹奏楽部へ入ってほしいと刻阪は頼んだ。神峰達が通う鳴苑高校の吹奏楽部は、中堅の強豪校。近年地区大会で金賞を取ることはあっても全国大会に進めない、いわゆる「ダメ金」ばかりだった。それはモコのように吹奏楽部員が何か心に問題を抱えているのではないかと刻阪は推測。神峰に導いてほしいと頼み込んだ。神峰はその場では刻阪の願いを拒否したが、翌日再び刻阪に勧誘され、指揮者として吹奏楽部に入部することを決意したのだった。

指揮者として吹奏楽部に入部

神峰と刻阪はさっそく吹奏楽部の顧問・谺夕子(こだま ゆうこ)の元へ向かった。谺の返事はノー。そもそも吹奏楽部は楽器をやるための部活であり、指揮者として生徒が入部するのは前代未聞。しかも音楽は全く初心者の神峰が、だ。しかし谺は刻阪の演奏がここ2日間で格段にレベルアップしたことを感じていた。その刻阪がここまで神峰のことを推すのであればあるいは。そう考えた谺は神峰にテストをすることにする。吹奏楽部にはいろいろな楽器をするパートがあり、各パートをまとめ上げるパートリーダーが存在していた。谺のテストとは、神峰がパートを1つずつ周り、パートリーダー全員に指揮者として認めてもらうという内容だった。

神峰と刻阪はさっそくパートリーダーが集まる会議に出席。谺から事情説明があり、会議は解散。神峰は最初に打楽器(パーカッション)パートへと入ることになった。そしてパートリーダーの打樋透(うてび とーる)を認めさせることに成功する。その様子を見ていた部長の奏馬俊平(そうま しゅんぺい)は、神峰に次はトランペットパートに来てほしいと打診した。奏馬が所属するトランペットパートのパートリーダー・音羽悟偉(おとわ さとい)は「暴君」と呼ばれて恐れられている。入部する時に助け舟を出してくれた奏馬たっての願いということもあり、神峰は次にトランペットパートへと向かう。音羽は刻阪同様、天才的な腕前を持つトランペット奏者だった。それゆえに孤独であり、パートからの疎外感を感じていた。それに気づいた神峰は音羽の心を導き、同時に奏馬の心も救うことい成功。トランペットパートにも指揮者として認められ、順調な滑り出しをするのだった。

伊調鋭一との出会い

神峰は刻阪、音羽、サックスパートの歌林優菜(かりん ゆうな)と共に竹風高校という学校を見学しに行くことになった。そこで伊調鋭一(いちょう えいいち)という男子に出会う。伊調は神峰達と同じ年で、「世界のイチョウ」として世界的に有名な指揮者・伊調剛健(いちょう ごうけん)を祖父に持つ男だった。そして神峰と同じく、学生の立場で指揮者をしている。成り行きから神峰も竹風高校吹奏楽部のメンバーに対して指揮を降ることになった。まだまだ音楽初心者だった神峰は、合奏の途中でどこを演奏しているのかわからなくなってしまい止まってしまう。しかし伊調は神峰の指揮力の底力を見た。自分よりも具体的に音楽を”見ている”神峰に、伊調はライバル心を燃やす。一方の神峰は鳴苑高校に戻り、また各パートを回るのを再開する。

そんな中、鳴苑高校がある群馬県内の吹奏楽強豪校・天籟高校から、「天籟ウィンドフェス(てんらいウィンドフェス/通称:天籟WF)」への招待状が鳴苑高校に届く。「天籟WF」とは、天籟高校が毎年12月に開いている演奏会だ。強豪校4~5校が招待され、各校との懇親も兼ねている。しかし観客からどの学校の演奏が素晴らしかったかという投票が行われるため、否が応でも各校の実力順位付けされてしまう。鳴苑高校も「天籟WF」に向けて練習を始めるのだった。

天籟ウィンドフェス

神峰は「天籟WF」への練習の間も各パートを周り、バスクラリネットの御器谷忍(みきたに しのぶ)がパートリーダーを務めるファゴット・バスクラリネットパート、クラリネットの邑楽恵(おうら めぐみ)がパートリーダーを務めるクラリネットパートを味方につける。そして次のフルートの吹越花澄(ふきこし かすみ)率いるフルートパートにいる間に、「天籟WF」当日を迎えた。「天籟WF」には、天籟高校、伊調のいる竹風高校、そして吹越花澄の妹・吹越聖月(ふきこし みづき)がいるソニトゥス学院高校(ソニトゥスがくいんこうこう)などが参加。各校が今持てる力を出し切って演奏をし終えた。

各校の演奏が終わった後、シークレットゲストとしてやってきていた伊調剛健が各校に対してアドバイスを送る。その中で伊調剛健は神峰の指揮に対して叱責に近いキツイ言葉を送り、最後に「グッドじゃない。最高(ファンタスティック)!」と締めくくった。終始怒り口調だったため、それが結局怒られているのか、褒められているのか、よくわからない空気が漂う。しかし伊調剛健の孫である伊調鋭一だけは、祖父・剛健が神峰に期待を寄せていることがわかった。伊調剛健は期待を寄せている人物にほどキツイ指導をするからだ。それによって伊調鋭一は神峰へのライバル心を強く燃やすのだった。

桜の音

「天籟WF」以降、オーボエの木戸雅(きど みやび)がパートリーダーを務めるオーボエパートを味方につけ、コントラバスのパートリーダー・弦野政彦(つるの まさひこ)にもなんとか認めてもらった。

そして春になり、神峰や刻阪は2年生へ進級。鳴苑高校に新入生が入学してきた。そんな中吹奏楽部にコントラバスの経験者・遠藤さやかが入部してくる。遠藤は神峰を未だ認めていない、金管楽器パートの4人のパートリーダー達と同じ中学校の出身だという。神峰は残る4パートを攻略するために本格的に始動した。しかしトロンボーンのパートリーダー・金井淵涼(かないぶち りょう)、ホルンのパートリーダー・管崎舞(かんざき まい)、ユーフォニウムのパートリーダー・星合美子(ほしあい よしこ)、チューバのパートリーダー・川和壬獅郎(かわわ じんしろう)にはただならぬ雰囲気があった。そして神峰と刻阪は4人の過去を知った。

ホルンの管崎には双子の兄・咲良(さくら)がいた。中学時代のある日、咲良は金井淵をかばって事故に遭い、両腕が動かなくなってしまった。天才的なピアニストとしての才能があった咲良の人生を狂わせてしまったとして金井淵は深い自責の念を抱くようになる。そしてまだ咲良が元気だった頃に5人で演奏した「桜の音」を再現するためだけに音楽をするようになった。神峰は4人が背負っているものの重さを知る。それでも4人の協力なくして鳴苑高校吹奏楽部全国大会出場はありえない。神峰は4人にぶつかっていき、管崎、星合、川和を味方につけることに成功。その過程で咲良とも出会った。

金井淵の協力を得られることなく、鳴苑高校は伊調剛健主催のスプリングコンサートへ出場することになった。鳴苑高校は次のコンクールで演奏する予定の課題曲を演奏する。その中で自分の実力以上の力を神峰によって引き出された金井淵は、心のどこかで神峰を認め始めた。2曲目は本来なら自由曲をするところだが、神峰の要望によりアンサンブルに変更。そこにはボーカルとして立つ咲良の姿もあった。神峰のピアノ、咲良の歌、そして管崎、星合、川和、金井淵の6人のアンサンブル。その中で神峰はついに「桜の音」に辿り着く。こうして神峰は金井淵の協力も得ることができたのだった。

全国大会へ

全てのパートリーダーに認められた神峰は、正式な指揮者として壇上に立つ。地区大会まで各々が猛練習を積み、ソニトゥス学院高校などの強豪校を敗って、ついに鳴苑高校は悲願の全国大会出場の夢を果たした。しかしそれはまだ夢の一歩に過ぎない。全国大会で最高の栄誉である金賞を獲得するために、鳴苑高校吹奏楽部は練習を続けた。

そして全国大会当日を迎える。北は北海道から南は九州まで。全国の吹奏楽強豪校が一同に集い、それぞれが最高の演奏をする。鳴苑高校が演奏する頃には、会場の空気はそれまで演奏してきた他校の演奏の余韻に満たされてる。その余韻は鳴苑高校吹奏楽部の面々に苦戦を強いた。しかしそんな中、指揮者の神峰だけは楽しそうに笑いながらタクトを振り続ける。一同はそれに応えて今までで最高の演奏をした。観客は神峰の指揮による鳴苑高校の音楽に、7色だったり5色だったりと色数が違うそれぞれの虹を見る。それこそが神峰が目指し続けてきた「虹の音」だった。

鳴苑高校の演奏の結果は金賞。鳴苑高校吹奏楽部一同は夢を見事に叶えるのだった。

『SOUL CATCHER(S)』の登場人物・キャラクター

主要人物

神峰翔太(かみね しょうた)

CV:鈴木達央(VOMIC)

『SOUL CATCHER(S)』の主人公の1人。鳴苑高校73期生で、物語開始時点では1年生である。「他人の心が見える」という特異体質を持っており、過去人間関係を壊した経験がある。そのため心とは他人が動かすことはできないものであり、その心がたとえ苦しんでいるのが見て取れてもどうすることもできないという葛藤を持つようになった。しかし同じ鳴苑高校の同級生で吹奏楽部員の刻阪響との出会いをきっかけに自分の能力に意味を見出し、吹奏楽部に入部して指揮者を目指すことになる。吹奏楽部に入部する前は目の前のことから逃げるクセがついていたが、入部後は「逃げずに立ち向かうこと」を基本理念とした行動をするようになる。

刻阪響(ときさか ひびき)

CV:阿部敦

『SOUL CATCHER(S)』のもう1人の主人公。鳴苑高校73期生で、物語開始時点では1年生である。神峰と同級生。サックス奏者として吹奏楽部に所属している。天才的なサックス奏者としての腕前があり、作中に登場する吹奏楽雑誌『吹奏楽ジャーナル』に取り上げられるほどの実力を持っている。他校生の間でも有名。神峰の「他人の心が見える」の能力を知る数少ない人物で、神峰の良き理解者である。神峰の「他人の心が見える」という能力を活かして指揮者になってはどうだと提案。これをきっかけに神峰は吹奏楽に入部。神峰と共に鳴苑高校の悲願・全国大会出場へ向けて奔走していく。

鳴苑高校(めいえんこうこう)

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