3×3EYES 幻獣の森の遭難者(サザンアイズ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『3×3EYES 幻獣の森の遭難者』とは高田裕三によるアクション伝奇ロマン漫画である。WEB漫画サイト『ヤングマガジン海賊版』にて2014年第35号~2015年第35号まで、『eヤングマガジン』では2015年第36号~2016年第33号で連載された。作者の代表作である『3×3EYES』の正統続編作品である。主人公・藤井八雲は宇宙ステーションで獣魔の卵の駆除をしている最中に獣魔女王・エキドナに遭遇したことをきっかけに、とある事件へと巻き込まれていく。獣魔や呪文を使ったアクションが魅力となっている。

『3×3EYES 幻獣の森の遭難者』の概要

『3×3EYES 幻獣の森の遭難者』とは高田裕三によるアクション伝奇ロマン漫画である。タイトルの「3×3EYES」はサザンアイズと読み、「3つ目」と「3人」を表わしている。講談社の運営するWEB漫画サイト『ヤングマガジン海賊版』にて2014年第35号~2015年第35号で連載。その後、『eヤングマガジン』にて2015年第36号~2016年第33号にも掲載された。単行本は全4巻となっている。作者の代表作である『3×3EYES』の正統続編となっていて、ストーリーも直接的な繋がりがある。本編の続編と言うこともあり、古参のファンからの評価は高いものたなった。

前作『3×3EYES』にて不老不死の術を使う聖なる魔神の一族・三只眼吽迦羅(サンジヤンウンカラ)の少女・パイとの出会いをきっかけに不死身の守護者・无(ウー)となった主人公・藤井八雲(ふじいやくも)は、人間になることを望むパイのために旅に出た。旅の中で、世界を無に帰そうと目論む三只眼の王・鬼眼王(カイヤンワン)と対峙することになる。そして、鬼眼王・シヴァの行おうとしている世界を浄化する儀式「サンハーラ」を止めるべく、八雲は旅の道中で仲間となった者たちと協力してシヴァと戦う。無事にシヴァの目論見を阻止することができた八雲とパイであった。パイは人間になることは叶わなかったが、愛する八雲がそばにいる幸せを選び、彼と一緒にいることを決めた。

本作は前述の「サンハーラ」の戦いから12年後を描いている。「サンハーラ」以降、八雲は妖撃社という怪物退治などの人には難しい仕事をこなす会社に所属して、様々な依頼をしていた。ある日、国際宇宙ステーションに産み付けられた獣魔の卵の駆除依頼を受ける。獣魔の卵を駆除しようとしている中、八雲は獣魔の卵を産む女王・エキドナと遭遇する。さらに、フランスのパリにも大量の獣魔の卵が発見されたという報告が上がってきた。八雲はパイや仲間たちとパリへ向かい、そこで様々な思いが蠢く戦いへと巻き込まれていく。

『3×3EYES』がアニメ化したさいにパイ役を声優の林原めぐみがしたことで、以降シリーズと深い関係がある。パイ役の他にも林原めぐみはシリーズ関係の楽曲を多く担当したことがあり、本作の連載期間中の2015年におこなわれた歌手デビュー25周年記念企画では『3×3EYES』と連動したプロジェクトが発表された。『3×3EYES』シリーズのをイメージした楽曲が収録されたCD「サンハーラ~聖なる力~」の発売に伴い、CDジャケットは高田裕三によるイラストが採用された。

『3×3EYES 幻獣の森の遭難者』のあらすじ・ストーリー

パリで蠢く陰謀

不老不死の術を使う聖なる魔神の一族・三只眼吽迦羅(サンジヤンウンカラ)の少女・パイとの出会いをきっかけに不死身の守護者・无(ウー)となった主人公・藤井八雲(ふじいやくも)は、人間になることを望むパイのために旅に出た。その旅のなかで旅の中で、世界を無に帰そうと目論む三只眼の王・鬼眼王(カイヤンワン)と対峙することになる。鬼眼王が企んだ世界浄化の儀式「サンハーラ」の阻止するために八雲と最後の三只眼吽迦羅・パイとその仲間たちは日本で熾烈な戦いを繰り広げた。鬼眼王の守護者であり不死身の无(ウー)であるベナレスとの死闘をくぐり抜けた八雲は、鬼眼王をも倒した。鬼眼王はパイのコピーであるカーリーに鬼眼王の地位を譲り、ベナレスとともに月の居城へと下がっていった。
「サンハーラ」を阻止してから12年後。无(ウー)と呼ばれる不死人の八雲は闇の怪物(モンストルム)問題専門の妖撃社に身を置きながら、様々な仕事をこなしていた。ある日、国際宇宙ステーションに獣魔の卵が産み付けられていたため、駆除してほしいという依頼が入る。八雲は宇宙ステーションで親しくなった宇宙飛行士の若口(わかぐち)に「サンハーラ」以降自分の感情が希薄になってしまい、恋人のパイから愛情を貰うことで支えてもらっていると語る。八雲の話を聞いた若口は「人間の幸せは交換である」と彼に話す。若口の話の続きを聞いていると、宇宙空間に獣魔の卵を産む女王・エキドナが現れた。八雲は契約している獣魔でエキドナを倒そうとするが、女王ということで獣魔で攻撃することができなかった。その後、八雲は宇宙から地球へと落下してしまう。地球へと降ってきた八雲のもとに、妖撃社の社長である李・鈴鈴(リー・リンリン)からフランスで獣魔の卵が見つかったという連絡が入る。

フランスのパリへと向かった、八雲と八雲の恋人であるパイと、八雲の友人・ハズラット・ハーン、その妻・葉子、2人の娘・セツ一行。パリに着いたハーンは「年間2個見つかれば良い方の獣魔の卵がパリ市内に4つもあるのは異常だ」と不審感を露わにする。八雲とハーンは獣魔の卵は人為的に設置されたものであると考えて、敵を探っていく。一方、パイ、葉子、セツはカフェで休んでいる最中に闇の怪物であるウコバクの襲撃を受ける。ウコバクはセツを攫おうとするが、そこに八雲の仲間である舞鬼(ウーカイ)が合流してウコバクと対峙する。さらに、化蛇の怪物である葉子の水を操る能力で加勢してウコバクを追い詰めた。しかし、ノルマルテが時間操作の能力を使ってウコバクのスピードを上げて攻撃しことで葉子と舞鬼が負傷してしまい詳しい情報を得ることはできなかった。さらに、そばにいたパイとセツも連れ去られてしまった。
八雲は相手の目的を探るために動いていると、 八雲の力を狙う甲子美智瑠 (きのえねみちる)とノルマルテ・ウリュプスの親友である工藤千夏 (くどうちなつ)、渡部唯華 (わたなべゆいか)、有村沙雪 (ありむらさゆき)という女子高生に出会う。3人は獣魔と契約しており、獣魔術を使って八雲に襲いかかる。さらにそこに、美智瑠たちの仲間である闇の怪物・ゲゲネイスも加勢してきたことで、八雲は捕縛される。

一方、攫われたパイとセツは美智瑠 とノルマルテと対峙していた。パイは企みを諦めるように美智瑠たちに促すが、美智瑠は「諦める選択肢はない」と返した。美智瑠の返答にパイは「八雲を争いに巻き込まないでほしい」と頼む。そこに、ゲゲネイスが合流して、ウコバクと共謀して美智瑠を誘拐してしまう。ゲゲネイスはノルマルテに八雲の持つ力を自身に定着させることに協力すれば、ノルマルテの望みを叶えると交渉をする。そして、ノルマルテに「明日まで猶予をやる」と言い残して、ゲゲネイスはその場を去った。残されたパイとセツはゲゲネイスから攻撃を受けて負傷したノルマルテを介抱した。そして、ノルマルテが鬼眼王の无・ベナレスが作り出したグリフィンという怪物であり、今はベナレスから捨てられて美智瑠と過ごしていることを聞く。さらに、ノルマルテは能力の1つである、時間を操作する「加速」を使う度に寿命が縮む呪いをかけられており、寿命の残りが非常に少ないことをパイは知った。

ゲゲネイスに捕まっていた八雲は、パリの地下に残された採掘場跡にいた。ゲゲネイスの拘束を破って、そこを探索していると地下になんらかの術が施されてることに気づき、さらに誘拐された美智瑠を見つけた。八雲は美智瑠をゲゲネイスの置いて行った見張りの怪物から守ることで彼女の心を開き、ノルマルテが「合成」という能力を持っていて、それを使うことで12年前に死にかけていた美智瑠を助けてくれたことを知る。八雲は美智留の話からノルマルテたちが无の力をなにかに合成するつもりであることを悟る。美智瑠と八雲が話をしているとウコバクが現れたため、八雲がウコバクたちの狙いを探る。八雲はゲゲネイスたちはエキドナを召喚するつもりであることを知った。そこに、ゲゲネイスが現れ、八雲の不意を突くことで腕を千切り奪っていった。片腕を奪われた八雲は美智瑠を連れて、退避すること決めた。

怪物たちによる戦乱の世

美智瑠を連れて逃げた八雲は滞在先のホテルにたどり着いて、美智瑠の介抱をしていた。しかし、美智瑠の身体にはゲゲネイスの一部が取り憑いていた。ゲゲネイスの目的はノルマルテの合成の能力で无の力を自身に合成して、ベナレスと戦うことで地球を戦乱の世に変えるというものであった。八雲がゲゲネイスの話を聞いている頃、月からカーリーが部下のガルベルとウルベルを連れて地球へやってきていた。カーリーはパイとノルマルテの近くに降りたため、八雲がパイの元へ向かう。

空からカーリーが地面に降り立った衝撃でパイが気絶してしまったためノルマルテが介抱していたところに、ゲゲネイスが美智瑠を人質にした状態で現れた。さらに地下に設置された魔法陣が発動して、エキドナが地球へと呼ばれてしまった。八雲がパイたちの元を辿り着くと、美智瑠のためにノルマルテがゲゲネイスに八雲の腕を合成するところであった。八雲の腕を合成されたゲゲネイスは八雲の无の力を奪う形で使えるようになり、さらに召喚したエキドナと契約することで強大な力を手に入れた。无の力とエキドナの力でパリ市内を暴れるゲゲネイスに、感情が希薄になってしまった八雲でも怒りを表してゲゲネイスを止めようとする。しかし、ゲゲネイスが八雲を押しのけて、カーリーに攻撃したことで主の危機を察したベナレスがやってきてしまった。

ゲゲネイスはベナレスに対して、勝った場合は自身の起こした戦乱に参加し、ノルマルテをベナレス直属の組織・九頭龍将(くずりゅうしょう)に入れろと要求した。ゲゲネイスはかつてノルマルテに助けられた恩を返すためには、ベナレスに呪いを解いて貰わなければならなかったので、ベナレスの部下にノルマルテを戻す必要があったのだ。ベナレスがゲゲネイスの要求を承諾したことで、パリ市内を巻き込んだ戦闘が始まった。八雲はベナレスに再び月に帰ってもらうために、ゲゲネイスの加勢に向かう。しかし、「サンハーラ」以降力が戻っていない八雲では敵わず追い詰められてしまう。そこへ、ゲゲネイスがエキドナを仕掛けてベナレスの力を削ることができた。しかし、カーリーが戦いに参戦して怪我を負ったことでベナレスに无特有の主に危機が迫ると無限の力が湧く性質のせいで削った力が戻ってしまった。戦いを楽しんでいたベナレスは無限の力が湧いてしまったことに興が冷めてしまい、美智瑠を殺すことで今回の事件をすべて終わらせようとする。
実は、美智瑠の心臓には「サンハーラ」のときにナノレベルサイズになった八雲の欠片が合成されていた。ベナレスは彼女を殺すことで八雲の欠片を戻そうと考えており、八雲が完全となればベナレスが闘いを楽しめると思っていたのだ。

事件の終わり

美智瑠は生まれつき心臓が悪く、病院に入院していたときに千夏、唯華、沙雪の3人と友人となった。入院しているときに「サンハーラ」が始まり、治療する者がいなくなった美智瑠は死にかけてしまい、さらに親友の3人は「サンハーラ」の影響で人の形を失ってしまう状況にあった。死にかけていた美智瑠は偶然病院へやってきたノルマルテがナノレベルサイズになった八雲の欠片と美智瑠の心臓を合成したことによって救われ、以降は親友3人を含めてノルマルテに引き取られて一緒に暮らしてきた。しかし、現実の千夏と唯華は美智瑠を忘れて、沙雪は目の関係か「サンハーラ」以降、美智瑠の元へ訪れることはなかったため、ノルマルテは彼女が悲しまないように分身を作って誤魔化していたのだった。それを知った美智瑠は酷く動揺するが、死にかけの自分を救って12年も一緒にいてくれたノルマルテへの信頼は消えず、ベナレスを倒すために八雲たちに協力する。

美智瑠は合成された八雲の欠片を、ゲゲネイスは八雲の腕を、ノルマルテは2人に行った合成を放棄することで八雲にすべての力を返した。すべての力が戻ってきた八雲はベナレスに引けを取らない力を見せた。一方、心臓から八雲の不死の力がなくなった美智瑠は、八雲の契約している石化の獣魔の力で病気の進行を止めて、ノルマルテはどこかへ強制転移させられてしまった。万全の无同士に闘いに終わりはないため、どうにかベナレスを月へ返す必要があった。どうするかと八雲が考えているとパイがベナレスと八雲の間に入って、闘いを止めようとする。ベナレスは八雲が完全体になったとはいえ、まだベナレスの力を超えていないためそれを「倒したところで面白みがない」と言う。
ベナレスは闘いを楽しめたことから、今回は自身が負けたことにしてゲゲネイスの要求であるノルマルテの件を了承して、さらにゲゲネイスを九頭龍将の1人に迎えることを宣言した。さらにベナレスは八雲を自身の元で修行させて九頭龍将の首領に迎えたいと、彼を誘った。ベナレスの誘いを聞いたパイが即座に断ったことで、ベナレスは一旦引くと宣言してカーリーを連れて月へと帰っていった。ベナレスが帰ったあと、パイは八雲が「サンハーラ」以前に戻ったことを確信して「おかえり」と抱きしめた。こうしてパリでの事件は幕を閉じた。

美智瑠は石化を解いてすぐに心臓手術をしたことで生き延びることができ、東京の病院に入院していた。目を覚ましたときには事件から数年が経過しており、事件の顛末も知らなかった。不仲であった両親とも連絡を取るようになるなど、現実へと馴染んでいった。

『3×3EYES 幻獣の森の遭難者』の登場人物・キャラクター

主人公

藤井八雲(ふじいやくも)

本作の主人公の青年。16歳のときにパイと出会って死にかけたことをきっかけに三只眼吽迦羅の守護者・无(ウー)となった。无となったために不老不死であり、外見は16歳のときのままである。12年前に鬼眼王が行った儀式「サンハーラ」で肉体と魂が別れてしまった全世界の人間を身体へと導いたことをきっかけに、全世界の人間のパーソナルデータを取得している。そのため、瞬時に対象のデータを見て身元を調べることが可能。「サンハーラ」時にナノレベルまで肉体を砕いたことで、感情が希薄になってしまっていた。その後、美智瑠が自身の欠片を所持していることを知り、返してもらったことで感情が元に戻った。基本的に優しい性格をしており、美智瑠が敵であると知りながら助けようとしていた。仲間思いで彼らのために戦っている。パイとは主従を超えた関係であり、恋仲として一緒に暮らしている。

獣魔術や精(ジン)を使った攻撃を得意とする。頭の回転が早く、美智瑠の状態と地下に施されたエキドナ召喚の魔法陣からある程度のことを察していた。

ヒロイン

パイ

画像は三只眼の人格が表

本作のヒロイン。聖なる魔神・三只眼吽迦羅の1人。外見は若いが実年齢は320歳を超える。性格は朗らかで陽気である。また、実年齢に伴わない幼さの残る一面をもつ。八雲が16歳の頃に出会い、八雲が死にかけてしまったことで助けるために无にした。食べることが大好きで舞鬼からは「妖怪食っちゃ寝」と呼ばれている。

額にある3つ目の目が開くと三只眼吽迦羅として老成した人格が目を覚ます。このときの状態は「三只眼」と呼ばれる。パイは「もう1人の私」と呼んでいる。三只眼のときは幼さが消えて、大人びた性格になり口調も古めかしいものに変わる。12年前の「サンハーラ」以降、八雲の様子が変わってしまったことを気にかけていた。

八雲の一部を取り戻すために三只眼のほうが本編開始の1年前にゲゲネイスにエキドナ召喚の方法を教えた。

八雲の仲間

ハズラット・ハーン

八雲の仲間の1人。魔法陣や呪術に精通した術師で、妖撃社に協力して様々な依頼をこなしている。12年前の「サンハーラ」時に八雲たちと共に鬼眼王と戦った。自己主張の激しい性格であるため、失言をすることがしばしばある。危機的状況においては判断力に優れてていてすぐさま行動に移せるため、周りからの信頼は厚い。
葉子の夫で、セツの父親。葉子とは基本的に仲の良い夫婦であるが、ハーンの失言などをきっかけに夫婦喧嘩になることも少なくない。作中では、セツを想うあまり葉子と喧嘩してしまうが、すべての戦いが終わった後に謝罪している。
エキドナの魔法陣解除に尽力して、戦いに大きく貢献した。

綾小路葉子(あやのこうじようこ)

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