曇天に笑う(曇笑)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『曇天に笑う』とは、唐々煙によるアクション漫画。2011年から2013年まで『月刊コミックアヴァルス』にて連載された。単行本の累計発行部数は120万部を突破しており、人気の高さから様々なメディアミックス展開をしている。2014年にはアニメ化もされた。物語の舞台は、大変革期を迎えていた明治時代の日本。曇天三兄弟と呼ばれる曇家の3人が、300年に1度目覚めると言われている化け物“大蛇(オロチ)”の復活と、それに伴うそれぞれの運命に立ち向かう姿が描かれていく。

300年に1度目覚めて、全てを滅ぼすと言い伝えられている化け物。「呪大蛇」「大蛇」などの表記があるが、基本的には「オロチ」という呼称が定着している。復活する際の器となる人間は、必ず敵対勢力の血族の中から選ばれる。負の感情に棲むと言われており、精神を病んだ者に憑りつくとされている。オロチの器となった者は記憶や自我を失い、人を喰らい、徐々にオロチに乗っ取られていく。
太陽の光に弱く、天気が曇続きになることが復活の兆候となっている。唯一の敵が自分自身であるため不死身とされており、これまでは討伐ではなく封印という形を取らざるを得なかった。しかし本作の時代では器となった空丸と分離したため、空丸がもう1人のオロチとしての役割を果たして討伐に成功する。

蛇細胞(オロチ細胞)

オロチ細胞に蝕まれた天火の身体。

政府が新薬の原材料として秘密裏に研究を進めていたもの。オロチ細胞が使用された薬は、投与すると常軌を逸した治癒力と身体能力向上の効果が発揮される。しかし毒性が強いため、投与し続けるとオロチ細胞に身体と精神を蝕まれ、最終的には精神崩壊を起こすとされている。投与された者は、オロチの器となった人間のように皮膚に蛇の鱗のようなものが生え始める。

曇家の宝刀(くもうけのほうとう)

「誰も殺めない護る為の刀」として、曇家に代々伝わる護り刀。天火から譲り受けた空丸が所持している。300年前のオロチ復活の際に、封印の術式と共にオロチに飲み込まれた。そのため、封印の術式と融合し、オロチと器を切り離す能力が備わったとされている。

犲(やまいぬ)

右大臣直属の精鋭部隊。オロチの器を破壊することを目的に結成された。メンバーの選考基準に”オロチの器となる可能性がある者”も含まれており、お互いの監視や有事の際の始末も役割の1つであった。
天火の父である大湖が師範を務め、結成当初は天火が隊長となっていた。大湖が殺害され、天火も脱退してしまった後は、天火の右腕を務めていた蒼世が隊長となる。

風魔一族(ふうまいちぞく)

戦乱の時代に名を馳せた忍の一族。幼い頃から舞や殺人、兵法を教えられて育つ。本作の時代ではほぼ全滅したと言われているが、殺人集団と噂され知る人ぞ知る一族として扱われている。一族の者は白い髪と紫の目を持った姿をしている。白子は「風魔は無忍 金にも家にもつかない気まぐれな影 ただ何を於いても目的は遂げる」と語り、特定の主を持たない忍だと称している。一族の頭領である「風魔小太郎」は個人名ではなく、その世代で1番強い者が選ばれその名を名乗ることができる。
オロチの復活に伴い、白子によって代々オロチの眷属であったことを明かされた。金城白子と仮面の男は、2人で10代目風魔小太郎となり、オロチの復活と一族復興の機会を狙っていたのだった。

風魔元服の式(ふうまげんぷくのしき)

4~10歳の子供が正式に風魔の者になるための儀式。心を殺す術を習得するために大切な人を殺し、箱に詰められ何日も闇にさらされ続ける。この儀式を乗り越えた者はその身に闇を宿し、髪は白く、眼は紫色といった風魔特有の姿となる。

『曇天に笑う』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

曇天火「俺に期待するな 近くのもん護るので手いっぱいの小さい男なんだよ」

武田に犲を脱退したことを問い詰められた天火が放った言葉。天火が脱退した分の穴埋めとして犲の一員となった武田は、そのことに納得がいかず天火に手合わせを挑んだ。敗北した武田は、天火の圧倒的な力を実感して「貴方はこんな狭い所で終わる人間じゃない」と話し、天火が犲にいることが国のためになると伝える。嘉神の出没を聞き、家路を急いでいた天火は振り向くこともせずに「俺に期待するな 近くのもん護るので手いっぱいの小さい男なんだよ」と言い放った。
この時まさに「近くのもん」である空丸や宙太郎を助けるために動いていたために、天火の強い思いが込められた言葉である。かつては犲に所属していた天火は、両親が殺害された際に自身も怪我を負い、部隊との意見の相違を理由に脱退した。怪我や意見の相違も脱退の一因ではあったが、弟たちに両親の分まで愛情を注ぐために、家族との時間を選んだのだった。この言葉には、犲として国を護るという大きな夢を持ちながら、家族の幸せも守れなかった自身の後悔も含まれている。

曇空丸「俺は自分の人生をなげく程まだちゃんと生きてない 一緒にぼちぼち成長していこうよ」

自分は半端者だと卑下する錦に、空丸がかけた言葉。忍として命令に従う生き方しか知らず、家族も亡くして何のために生きているのかと悩む錦。その錦の姿に天火との実力差を嘆いていた自分や、天火の死を受け入れられなかった自分を重ねた空丸は、自分たちは似た者同士だと気付く。自身も未熟者だと自覚している空丸は、「俺は自分の人生をなげく程まだちゃんと生きてない 一緒にぼちぼち成長していこうよ」と錦に語りかけ、これからの未来を前向きに生きていく決意を秘めた姿を見せた。このやりとりが、後に錦が曇家の居候となるきっかけとなった。
天火の死からまだ日が経っておらず、不安を抱えたままの空丸にとって、自分を奮い立たせるための言葉でもある。「成長するのは自分の速度で良い」と語っていた天火から譲り受けた思想であり、過去に天火に追いつくために焦っていた空丸だからこそ重みが増す言葉となっている。

安倍蒼世「泣けば弱いなど誰が決めた 恥じる事ではない 人間は悲しみや痛みを受け入れる為に忘れていくように出来ている お前しか知らない瞬間がある その想いを抱えて泣いておけ 忘れる前にな」

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