腸よ鼻よ(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『腸よ鼻よ』とは、島袋全優による闘病コミックエッセイである。コミック配信サイト「GANMA!」にて2017年6月よりWEB上で連載を開始。2019年に行われた「第五回次にくるマンガ大賞 Web漫画部門」にて3位にランクインした。本作の主人公であり著者でもある島袋全優は、19歳の時に潰瘍性大腸炎を発症する。23歳で大腸を全摘出するまでの壮絶な体験を描く。過酷な闘病生活を題材にしながらも、悲壮感を出さないコメディタッチなストーリーが話題を呼んだ。

『腸よ鼻よ』の概要

『腸よ鼻よ』とは、島袋全優による闘病コミックエッセイである。コミック配信サイト「GANMA!」にて2017年6月よりWEB上で連載を開始。2019年に行われた「第五回次にくるマンガ大賞 Web漫画部門」にて3位にランクインした。

主人公の島袋全優(しまぶくろぜんゆう)は、ある日トイレに行くと便器が血まみれになっていることに気付く。薬を飲むものの一向に改善せず、毎食後腹痛・吐き気・血便に悩まされていた。意を決して病院で診察を受けるも腸炎と診断され、下痢止めの服薬を続けるものの状態は良くならず、内視鏡検査を受けることになる。検査結果は「潰瘍性大腸炎」。発症原因不明の難病特定疾患である。ここから全優の厳しく長い闘病生活が始まるのだった。

本作の特徴は、原因不明の難病という重いテーマを扱っているにも関わらず、作者の高度なギャグセンスによって内容が重くならずに笑って読める作品であることが挙げられる。1つ1つのエピソード自体はヘビーではあるが、絶妙な強弱で畳みかけてくるボケとツッコミや他作品のパロディなどが散りばめられ、ページを進めるたびに読者の笑いを誘う。また、登場人物・キャラクターの設定が細かく、非常にリアルに描かれている。ゴリラのようだが優しさのある父、伝説の米軍特殊隊員のような風貌の医者、そしてなんといっても主人公である全優のキャラクターが魅力的である。難病と必死に闘病しているがコミカルさも持ち合わせており、読んでいて自然と勇気付けられたり、クスっと笑ってしまったり色んな感情を抱かせてくれる。本作品はそんな全優の闘病記を面白おかしく表現したコミックエッセイである。

『腸よ鼻よ』のあらすじ・ストーリー

難病発覚

主人公である島袋全優はある悩みを抱えていた。最近トイレに行く頻度が多く、毎回血便で便器が真っ赤に染まるとのことであった。同級生に病院へ行くよう勧められるも中々行けず三週間ほど経過したが血便は収まらず、いよいよ血しか出ない状況になってしまった。全優は決心し病院へ向かったが腸炎との診断により、下痢止めを処方された。しかし、一向に快方に向かわず、大腸内視鏡検査を受けることとなった。検査結果は「潰瘍性大腸炎」。厚生労働省指定の難病である炎症性腸疾患と判明した。明確な治療法は確立されておらず、この日から全優の闘病生活が始まるのだった。

闘病生活開始

当初、腸炎と誤診されたことから担当医に対して不信感があった全優はセカンドオピニオンを受け、専門病院へ転院することになった。再度内視鏡検査を受けた全優だが、全腸型の重症であることが判明し、入院生活を余儀なくされる。入院中には食事療法とステロイド投与を毎日行った。当初食事に対して恐怖があったが毎日続けることにより恐怖が和らぎ、容体も安定に向かっていった。そして退院日を迎え、再び学生として通学し始める。全優の友人であるスーさんから出版社による出張編集部が開催されることを教えてもらい、参加することにした。そこで編集者よりギャグが面白いと高評価を受け、名刺交換を行うことになった。
ある日、携帯にメールが届いていることに気付いた全優。以前名刺交換をした編集者からであり、全優の担当にさせてほしいとの内容であった。編集者のもと、月例賞に応募し奨励賞を受賞するなど漫画家への道は順調に進みはじめた。だが、病状は芳しくはなかった。奨励賞の授賞式後、炎症が再燃し、また入院することになったのだ。

ある日、担当医師より血液浄化療法という新しい治療法を提案された全優。悪さをする白血球を除去するため、2リットルの血液を1時間かけてフィルターに通し、再度体内に戻す治療法だと説明を受ける。この新しい治療法のおかげで体調が安定し、退院することが決まった。
一方、Web用に掲載した読み切り漫画が好評だったことから、編集者より連載用のネームを書いてほしいとの依頼を受ける。ネーム提出から数週間後、連載会議に通ったとの連絡が入った。連載に向け、睡眠時間を削りながら執筆を行う毎日だったため体に負担がかかり、全優は再び入院の指示を受け、最低二週間の絶食点滴生活に入る。入院中も同級生からのアシスタントを受けながら原稿を完成させ、何とか締め切りに間に合わせプロ意識の片りんを垣間見せた。

退院後、医師より注腸薬投与の提案を受ける。注腸の量は100ml、市販の栄養ドリンクと同じ量だが肛門からの挿入となり憂鬱な全優だが何とか母の手を借りて注腸に成功するのであった。
発病して1年、学校を卒業しプロの漫画家として連載デビューへの道を歩み始めた全優であったが、体調は万全とはいかず、再び入院する羽目となった。ほぼ3か月に1回のペースで毎回3週間は入院しており、医師より慢性持続型であるとの指摘を受ける。一旦は退院したものの、仕事量が増えたことにより炎症の数値が悪化の一途を辿っているため、新しい薬である座薬の投与を行うことになった。だが、その治療もむなしく、全優は再度入院する。これが6回目の入院であった。その後も入退院を繰り返す全優。

ある日、担当編集者より連絡があり、「年末準備のため締め切りが通常より2週間早まる」とのことであった。さらに業務に負荷がかかり体調が悪化する全優であった。医師より、これ以上悪化するのであればレミケードという製剤を用いた新たな治療法を行うとの発言を受けるが、すでに様々な治療を受けている全優は意に介していないようであった。

単行本化決定

編集担当者より、いい知らせと悪い知らせがあるとの連絡が入った。いい知らせとは、連載作品の単行本化が決まったこと、悪い知らせとは連載している月刊誌が休刊になることであった。
打ち切りになるのではと動揺する全優ではあるが、編集担当者によると漫画アプリで連載を続けるとのことであった。また、担当編集者のアドバイスもあり、作風も四コマ漫画からショート漫画に一部変更することが決まった。

大腸の全摘出

ある日、全優は両親に大腸を全摘出したい旨を打ち明けた。全優としては大腸を全て摘出すれば炎症を起こすこともないため、全摘出手術を受けたいと考えていた。両親の了解を得た全優は、大腸全摘出手術に踏み切る。手術の内容は大腸を全部取り、小腸を肛門に直接つなぐ「肛門温存大腸全摘出手術」というものである。まず大腸を全て取り、小腸の一部をJ型の袋にして肛門へ縫合。すると、このJ型の袋が大腸の働きをする回腸嚢になり、回腸嚢が落ち着くまでは人工肛門を作る流れになる。人工肛門は一般的にストーマと呼ばれ、ストーマには筋肉がないため自らの意思での排泄が困難なためお腹に専用の袋を付けて生活していくことになる。いざ、手術当日を迎え、無事に成功。島袋全優は23歳にして大腸を失ったのだった。

『腸よ鼻よ』の登場人物・キャラクター

主要人物

島袋全優(しまぶくろぜんゆう)

生まれも育ちも沖縄県出身の漫画家であり、本作の主人公にして作者である。幼少期より漫画家になることを夢見ていたが、19歳のころ、原因不明の難病である潰瘍性大腸炎を発症。好きな食べ物はネギ・キノコ・チョコ・レバー・コーラであったが、潰瘍性大腸炎を発症してから口にできなくなった(後に大腸を全摘出してから再び食べられるようになる)。四コマ漫画が得意である。好きなものはおっさんと筋肉。

S先生

全優がセカンドオピニオンを受け、転院した病院の医師である。眼帯をつけ、髭を生やした老軍人風に描かれている。全優曰く、「強引な医者だけど、技術は確か」な人物で、厳しさと優しさの両方を併せ持っている。

山田先生

眼鏡をかけた人物が山田先生。

S先生の不在中に全優を担当した研修医。自らが研修医であることにコンプレックスを抱いているのか、ことあるごとに自分を卑下するような発言をしている。その一方で、非常に的確で鋭いツッコミを入れることが多い。

島袋家

全優の父

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