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yamatoj4のレビュー・評価・感想

Billie Eilish / ビリー・アイリッシュ
9

全てがボーダレス。捻くれているようで真っ直ぐな感性が魅力のミュージシャン。

第62回グラミー賞主要4部門を含む5部門を受賞、その他各国で数々のビッグタイトルを最年少受賞しているビリー。日本ではドラマとのタイアップもされた世界的ヒット曲「bad guy」で認知度が広がった。耳に残る独特な音楽、ハスキーで囁くような歌声、少しホラーなMV。同世代のティーンに熱烈に支持される歌詞。圧倒的な個性と感性をイメージづけた。けれど数々の賞を受賞している彼女は振り幅がすごい。デビューに繋がった「Ocean Eyes」は透き通ったハイトーンで丁寧に歌い上げる、静かなメロディラインが印象的な名曲。歌詞の彼女らしさは当時から変わらないが、曲の印象や歌声が全く違うので最初ビリーが歌っているとは気が付かないかもしれない。彼女の声の美しさに改めて魅せられる一曲だ。
そんな音楽的才能を爆発させている彼女だが、生き方もとても魅力的だ。「ドラッグはしない。自分には面白く感じないから」「自分の全てを世界に知ってほしいとは思わない」。インタビューへの答えは一貫して真っ直ぐ。自分の感じることを臆することなく素直に言葉に表現するのだ。それは怖い物知らずの自信たっぷりなものとは違い、弱さも脆さも隠さない等身大の彼女の言葉。歌詞にも表現される不安や悲しみ。捻くれてどうしようもない感情。その全てを真っ直ぐに音と声で表現してくれるビリー。ファンへ向けた「私も苦しいよ。一人じゃないよ」と語りかける歌詞に音楽に、年齢性別関係なく多くの人が魅力を感じてしまうのだ。

ダンサー・イン・ザ・ダーク / Dancer in the Dark
8

切ないけど楽しいミュージカル映画

とにかく全体を通して暗くて悲しくて切ない。でも、歌唱シーンは主人公セルマが自分を癒すように、観ている側も癒されるような魅力があります。その歌唱シーンは、セルマが自分を癒すために空想の中で歌っているもの。だから現実ではありえないようなことも起こるのですが、それと現実で起こっていることとのギャップがさらに物語を悲しくさせます。しかし、明るく爽やかで楽しい曲が流れていると、セルマが置かれている現実も忘れそうになります。特に工場での歌唱シーンは必見。機械音から曲が生まれ、セルマが悲しい現実を忘れていく様子が特に理解できました。
セルマが大切にしている音楽と息子のジーンを、最期の瞬間まで守っていたところが本当に心に残っています。最後に自分の命とジーンの視力(これからのジーンの幸せな暮らし)を天秤にかけ、迷うことなくジーンを選んだこと。死を恐れていたにもかかわらず、ジーンの無事がわかったときに死を覚悟したこと。現実的でありながらも強いセルマの姿には心打たれました。
そしてラストシーン。ジーンを思って歌いながらセルマの刑は執行され、歌の途中で体が落下します。セルマの美しい歌声と無機質な音との差は衝撃でした。
ただただ楽しくて面白い映画を観たい、という人にはかなり不向きな映画。しかし、音楽や息子を最後まで愛し続けたセルマの強さがずっと心に残る特別な映画になると思います。