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貴方は目に見えるものばかり見つめていないだろうか。
人は誰しも必ず、生きている上でどうにもならないことや腹が立つことに直面するだろう。
その時、貴方ならどうやってその気持ちを晴らすだろうか。
やけ食い、やけ酒、自暴自棄、それとも殺人か。
若い頃の淡い恋心が次第に執着心に変わり、そして狂気帯びた欲望の出発点になってしまう。そんな男を中心に予想だにしない展開が繰り広げられる西澤保彦の「狂う」という本。
ざっくりした内容としては、昔に抱いていた可愛いはずの淡い恋心が色んな出来事を経て、最終的に男の狂気帯びた欲望の引き金となり、目的のためにただ人をゴミとして扱い、連続殺人を行うという話だ。
自分自身の中で思い込んだ理想と現実が異なった時に、人間がとる行動の最下級を描き、多くの人間が本来持ち合わせているものの理性で抑えている感情に触れた作品である。
世の中で一般的に言われている「狂っている」人間の思考回路に目を向けることが出来、自分とは全くもって異なった思考の仕組みを理解することが出来るだろう。
恋とはなにか、女とはなにか、男とはなにか、という疑問を覚えるような作品だ。どこまでいってもやはり優劣はさまざまな条件で存在することを証明していると感じる。
この世の全ては、本当に金で解決できるものばかりなのだろうか。また、目先のものに目が眩み、足元にある大切なものに気が付けていないということはないだろうか。そう問いかけたくなるような作品であった。