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secretbass0629のレビュー・評価・感想

Jeff Buckley / ジェフ・バックリィ
10

Jeff Buckley -天使の歌声-

90年代前半、一人の天才が音楽界にデビューした。彼の名はジェフ・バックリィ。ギタリスト兼シンガーソングライターである。
父も有名なミュージシャンであり、その父とは一度しか会ったことがない。そしてなんと言っても彼を語るうえで欠かせないキーワードは「歌声」である。水難事故により若くしてこの世を去ることになる彼だったが、たった一枚残したアルバムで聴けるその歌声と卓越したギターテクニックは聴く者の魂を震わせる。
間違いなく技術的な良し悪しを超えているし、個人的な好き嫌いという範疇すら凌駕しているような天上的な何かを感じさせる。そこには孤独な叫びがあり、愛への嘆きがあり、整然とした数学的な響きがある。アルバム『Grace』はボブ・ディランやジミー・ペイジ、ポール・マッカートニーなど名だたる重鎮に絶賛されたが、納得である。
彼の心には間違いなく「父」という存在の疑問というか、アイデンティティへの疑念というものがあった。たった一度会っただけの男の血を間違いなく受け継ぎ、与えられた才能を煌めかせて音楽のプロとしての道を歩んでいる自分への不思議。彼が歌う天上的な声と叫びは、自己同一性への普遍的な問いである。だからこそ誰の胸にも響くのだ。

4na / シーナ
7

4naって誰?

2020年8月に既存の楽曲のカバー動画をアップロードしYouTubeで活動を始めたネットクリエーター4na。
同年11月にアップロードされた楽曲“hazama”が瞬く間に人気を博し、その名を広めることとなった。
その後からも春野、新東京といった次世代アーティストや、SNSで圧倒的支持を得る人気絵師tamimoonなど様々な人物とのコラボが後を絶たない。
彼をこのような人気ミュージシャンに仕立て上げた要素とはいったい何であるのだろうか。
まず第一に、彼は顔出し、プロモーションをせず音楽活動を開始している。
このような秘匿性は、2020年以降にデビューしたアーティストに特によく見られる傾向であり、
視聴者に「もっと知りたい」と思わせることでそのアーティストの世界に引き込むことができるのである。
また、彼の楽曲自体が繊細なボーカルと落ち着いたメロウなメロディーの融合による心地よいサウンドが続くものであるため、
一部分を切り取ってTikTokなどにアップロードされる通称“エモい”動画のBGMとして使われることが多々あり、これも彼の音楽の拡散に大きく影響している。
このように短期間で一気にファンと知名度を得た4naの、これからの音楽シーンにおける活躍への期待は上がっていくばかりである。
彼が作る楽曲や、彼がコラボをする相手にもますます注目していきたい。

俺たちのフィールド
10

数あるサッカー漫画の中で

数あるサッカー漫画の中でも良作と言える作品です。物語の始まりは、主人公が幼少期から始まります。主人公の父親は実業団サッカーの選手ですが不慮の事故で命を絶たれます。父親の死をきっかけにサッカーから離れる主人公ですが、父親の事故死の直接的要因となった少年が成長して主人公の目の前に現れます。少年は、主人公の父親の死をきっかけにサッカーに興味を持ちプロサッカー選手を目指す青年として成長していました。主人公は、この出会いをきっかけにサッカーの世界に戻ります。序盤の展開はスピーディー且つ簡潔的な描き方で青年期まではテンポよく進みます。青年期からプロ、日本代表と大きく成長していく主人公の姿を見ていくのが醍醐味ではありますが脇役として描かれているキャラクター達が非常に面白い。主人公だけの成長を見るだけの漫画ではなく、脇役達の成長も見ることが出来る漫画に仕上がっている。そして何よりサッカーの知識がなくても読めてしまう。キャラクターの個性を重視した描き方をしており、サッカーの展開、戦術をあまり表に出していない。かといってサッカーの躍動感が感じられない描写ではなく、このあたりが作者の凄いところ。まるでフィールドで一緒にプレーしているかのような臨場感を感じられる。また泣けるエピソードが非常に多く散りばめられていて、漫画を読みながら涙してしまう。そんな顔を持つ漫画でもある。男女問わず、非常に勧めたい一冊です。

王様ランキング
9

勇気が出てくる作品

この話は、王様候補の男の子が王様に選ばれるために、様々な困難を乗り越えていく作品です。主人公のボッジは、生まれつき耳が聞こえません。そのため周りの人からは馬鹿にされたり、お母さんからも「あなたは王様には向いていない」と言われてしまったりします。腹違いの弟には殺されそうになったり、かなり不遇な運命をたどります。修行のためにお城から出た際には、お城の兵士に崖から突き落とされてしまいます。味方から裏切られたショックで立ち直れなかったボッジですが、唯一の味方である「カゲ」に励まされて元気を取り戻します。そのあと知り合ったデスパーさんのおかげで、ボッジは戦うことができるようになります。今まで逃げることしかできなかったボッジが、戦いを経て、一人前の王様候補になっていくという物語です。僕は途中までしか読んでいないのですが、登場人物の優しさやあたたかさには涙が出そうになります。冷酷無情に見えたお母さんも、ボッジを危険な目に合わせたくないという描写が見えて感動しました。強敵が出て心が折れそうな場面では、仲間同士が声をかけあっていて、応援したくなりました。主人公のボッジは低身長で聴覚障害持ちなのに、いろんな困難に立ち向かっていくところを読んでいると、僕自身も勇気が出てきます。いろんな人に薦めたい作品です。

写楽心中 少女の春画は江戸に咲く
8

15歳少女、春画を描く

天才絵師写楽の娘・たまきは吉原育ちで15歳。耕書堂2代目・蔦屋重三郎に引き取られ大好きな絵を描きながら毎日を過ごしていた。
かつては名高い絵師を輩出した耕書堂だったが徐々に衰退していく一方。重三郎は起死回生の策としてたまきに春画を描くように命じる。
先代の無念を晴らすため、重三郎がたまきに与えた課題はーー
“由太郎に抱かれてくること“だった!

少女のプライドと誇りをかけた江戸時代のサクセスストーリー。初めはただ楽しく絵を描いていたたまきだったが重三郎の側にいるためにはこうするしかないと抱かれる事を決めた。そして由太郎もまたその想いを察し自らの心を殺してたまきを抱く決意をする。重三郎への恋心との間で揺れ動くたまきの気持ちや、由太郎の葛藤にとても目を惹きつけられました。
愛する母との離別、さまざまな経験を通し培われていくたまきの絵に対する誇り。作者の会田薫さんによりその心情の変化が繊細に描写されています。

精神的にも強くなっていくたまきの成長に今後も期待です。