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redfreesia82のレビュー・評価・感想

めだかボックス / Medaka Box
10

言葉遊びの天才が描いた作品

『めだかボックス』は週刊少年ジャンプで連載されていた、学園バトル漫画です。
原作は西尾維新さんで、作画は暁月あきらさんです。
原作の西尾維新さんは小説なども執筆しており、言葉あそびが非常に上手です。
今回の『めだかボックス』でもバトル展開の中に言葉あそびが非常に多く盛り込まれています。

例えば、主人公がその婚約者たちと戦う場面があります。
その戦いでは、「消失しりとり」が行われます。
これはしりとりをしながら50音表の中から、それぞれの文字が1度きりしか使えないというゲームです。
そのため「しりとり」を使ったら「し」「り」「と」「り」の4文字が50音表から消え、それ以外の文字で以降のしりとりを戦わなければいけません。

これだけでも非常に頭を使わされるかなと思います。
それにもかかわらず、物語を盛り上げるために、50音をほとんど使い切るように話を展開させていく西尾維新さんの手腕は圧巻です。
また、仕掛けはそれだけではありません。
主人公は50音をほぼ全て使い切り、相手が最後に残す50音を操作するのです。
相手に最後残した50音は「こ」「う」「さ」「ん」つまり降参です。
負けを認めさせ、これ以上ない綺麗な幕引きな上、相手が涙を流しながら言ったセリフが「降参である。言葉もない」です。
いや綺麗!50音を使い切ったこととかけて、綺麗に負けたことを表現する「言葉もない」を入れてくるあたりが素晴らしいですね。
これ以外にも人間の感情の機微や、哲学的な要素も多く非常に楽しめる漫画です。

レ・ミゼラブル / レミゼ / Les Misérables
10

一度犯してしまった過ちがあったとしてもどん底にも幸せにもなれる。

時はフランス革命期。貧富の差がとても大きく、貧困に悩む人々は毎日の食べるもの、仕事を探していた。主人公ジャン・バルジャンはまだ幼かった妹にご飯を食べさせるため、パンの1つを盗んでしまう。たったその一つの罪で19年間投獄されてしまう。その後仮釈放の際に再び窃盗をはたらいてしまうが、神父に救われ、これからは人の役に立とうと決意する。その後市長にまで昇り詰め、ある女の子に出会う。その子はシングルマザー家系で、母が働きに出ている間は親戚の家でこき使われていた。母は子どもにご飯を食べさせるため、自分の体や髪などを売り、子に愛情を注ぎ続けるも、身も心もボロボロになってしまう。そのことに気づいたジャン・バルジャンは貧困に悩むその子と母を助けようとするが、母はやがて亡くなってしまい、その娘を大きく育てるため、自分が過去罪人だったことを隠しながら市長を続け、子育てに奮闘する。その後、娘に愛する人ができるも、自分の身を隠すことに精一杯になり、親子関係が崩れそうになるも、娘が愛する人に全てを打ち明け、その人に全てを託し、ジャン・バルジャンは亡くなってしまう。本作品は愛する誰かのために這いつくばって生きたり、人のために自分を投げ打つなど、いいことばかりでない日々の中に愛情や幸せを感じていく物語である。

怒り / Rage
9

「怒り」という感情の複雑さ

この作品は2016年に公開された映画である。
「怒り」とは人間がもつ感情のうちの一つであるが、人は一体どういった時にこの「怒り」という感情を抱くのだろうか。
それは誰かに対して向けられた「怒り」かもしれないし、自分自身に向けられる「怒り」かもしれない。
作品の中でも登場人物はこの「怒り」という感情に翻弄されていく。
信じていた者に裏切られた悲しさから生じる「怒り」、自分を信じて着いてきた人を疑ってしまった自分自身の不甲斐なさに対する「怒り」、うまくいかない状況の中で誰かから向けられた優しささえも見下されているように感じるといった卑屈さから生じる「怒り」。
紐解いていくと、「怒り」という感情はただ単に「気に入らないから腹がたつ」といった単純なケースは少ないのかもしれない。
「悲しさ」「後悔」「劣等感」といった様々な感情が絡み合って生まれるものが「怒り」ではないだろうか。
作品の中でも、登場人物は怒りを表現する際に泣き叫んだり、膝から崩れ落ちたり、笑いだしたり、様々な表情を見せながら「怒り」を露わにしていく。
この作品では「怒り」という感情の複雑さや、些細なことから相手を疑ってしまったり、「怒り」と向き合うことを放棄して堕ちていく人間の弱さが描かれている。
その様子を見て他人事と捉える人はおそらく少ないだろう。自分の心の中にも存在する弱さや愚かさがくすぶられるのではないだろうか。