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gresia336のレビュー・評価・感想

YOASOBI
10

音楽業界に旋風を巻き起こして2年、彼らが目指すものはなにか。

「小説を音楽に」をテーマとして、次々とヒット曲を連発するYOASOBI。
今や常識となりつつあるボカロ(ボーカロイド)曲を生身の人間が歌い上げるスタイルを確固たるものにしたアーティストと言っても過言ではないだろう。卓越した作曲センスのAyaseと、Ayaseが作曲した「ボカロ曲」を見事に歌い上げるikura(幾田 りら)。この2人が生み出す楽曲はどれも、メッセージ性が強く心に重く響く曲ばかり。それでいて軽快なリズムで次々と聴き手に襲い掛かるメロディーの中毒性が、数多くのファンをとりこにしている所以だろう。
彼らがなぜ、ここまでの楽曲を次々と生み出せるのか。それはまさしく、YOASOBIを構成している人間全員が、並外れた努力と才能の塊だからであろう。さきほどAyaseが作曲した曲を「ボカロ曲」とあえて表現したのは、YOASOBIの楽曲はもれなく「人間用」の楽曲ではないからだ。生身の人間が表現できる域を超えてしまった曲を、ikuraはその小さな身体で表現してしまうのだ。しかも一人で。またボカロ曲の難しさはメロディを織りなす楽器にもある。ボカロ曲はPCの作曲ソフトで作成するため、使える楽器は「無限」だ。しかも音階にも制限がない。しかしそのメロディを現場で奏でるのはPCではなく、これもまた生身の人間なのだ。ベース担当の「やまもとひかる」、キーボード担当の「ミソハギザクロ」、ギター担当の「AssH」、ドラム担当の「仄雲」、彼らバンドメンバーの努力と才能が、YOASOBIの楽曲に重みと温もりを与えている。
そんなYOASOBIは2021年12月に初の有観客ライブを成功させている。そのライブはファンにとって、まさしく待ち望んだ瞬間であり至高のひと時だったに違いない。しかしファンは、その先を求めている。YOASOBIもまた、この先を考えている。

「小説」というジャンルの才能が「音楽」という違うジャンルの才能と組み合わさることで爆発する化学反応を、これからも期待せずにはいられない。これからのYOASOBIの活動に、また彼らが生み出す楽曲に、引き続き注目していきたいものだ。

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂
8

大切な気持ちを思い出せる ふしぎ駄菓子屋銭天堂

銭天堂は、幸福なお客様しかたどり着けない、ふしぎな駄菓子屋である。
店主の紅子、愛猫の墨丸、ふしぎな駄菓子を作っている金の招き猫たちが織り成す、観ていると何だかクセになってくる、文字通り不思議な魅力のある作品だ。
なんといっても、紅子のインパクトが強い。見た目は白髪を団子に結い、銭柄で紫色の着物を着たものすごく大きいおばさんだ。ガラポンでその日の「幸運のお客様」と駄菓子の売値(○○年の〇円玉というところまで細かい)を決めている。駄菓子を食べてうまくいかなかった客から逆恨みされても、『銭天堂の駄菓子は紅子さんの味方』と言いながら不敵に笑う。紅子をライバル視する「たたりめ堂」のよどみが、駄菓子作りの要である金色の招き猫たちの誘拐を企てた際には、『分身ガム』と『変化ヒゲ』を使い、見事よどみを返り討ちにしてみせた。さらに銭天堂のオモチャが入ったガチャを設置する際、人に目撃されるも、紅子の目が怪しく光り、目撃者は体が動かなくなる。この時は特にふしぎな駄菓子を口にした様子はない。一体何者なのだろうか?

そんな紅子だが、某有名なせぇるすまんのように、出会った主人公が確実にドーンと地獄に落ちるわけではない。店にたどり着けた「幸運のお客様」の悩みにぴったりの駄菓子をすすめてくれ、使い方や容量を間違わないようにと、忠告もしてくれる。それを守るか守らないかは客次第。願いが叶ったあと、さらに欲を出し、転落するものもいれば、自分を戒めて駄菓子を断つものもいたり、友達や家族に救われるものもいる。さらに道を誤ってしまっても、どうすれば助かるか聞けば教えてくれたりもする。怪しさ満載の紅子だが、大切な事に気づくきっかけをくれる。そしてそれに気づけた者には仏のように優しいのだ。

この作品を観れば、忘れがちな謙虚な心を思い出せることだろう。