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daiheate8

daiheate8のレビュー・評価・感想

ブッダ / Buddha
10

こんな漫画家はもういない。ブッダよりすごい手塚治虫先生

この作品の魅力は、ブッダの物語そのものというよりも、
この壮大な物語を漫画で伝えようとした手塚先生のすごさがわかるような作品です。

まず主人公であるブッダの物語が始まるのは3巻からです。1、2巻の主人公は別の人物でブッダとは直接的には関係性を持ちません。
ただし、その主人公を取り巻く環境に、今後ブッダとの関係性がでてくるので、1、2巻が序章だといえます。
ブッダが仏教を広めようとするところまでが「ブッダ」と考えがちですが、
もう少し深く、違う話からこの物語を始めることで、なぜ「仏教という教えが必要か」ということがわかるようになる構成です。
この辺が普通の漫画とは違う、手塚先生のすごいところだと思いました。
先生はブッダのエピソードを始める前に、読者に理解して欲しいことがありました。
それは、当時のインドなどに存在していた厳しい身分制度による人権の侵害です。
生まれながらの身分から、脱することのできない宿命や差別についてが厳しく描かれています。
その他にも飢餓、病害、自然災害など、こうした厳しい環境で当時の人たちは生きぬいてきたことを知る必要があったのです。

現代人に問いかける、人はどう生きるべきかという哲学的な内容だと思います。

累-かさね-
9

実写映画化された「累 かさね」の原作漫画

口紅を塗ってキスすると顔が入れ替わるというオカルトチックなテーマながら、人間の弱さや愛おしさを丁寧に表現した作品です。主人公のかさねは、美しい大女優の母の子に生まれながら醜い顔を持ち、虐められながら育ちます。しかし、女優としての才能は他の追随を許さないほどでした。偶然母の形見の口紅の力を知り、美しい容姿を手に入れた彼女は後に女優としての人生をスタートさせます。この話の肝となるのは、口紅の効力は一定時間で消えてしまう事、相手も殺しても同じだという事です。顔を交換する相手と利害関係が一致するか、相手を監禁するしか顔を保つ方法がありません。美しい顔を手に入れたかさねは別人のように明るく自信満々に振る舞いますが、醜い顔のときはマスクをして背中を丸めて隠れるように生きています。すれ違う人の嫌悪の眼差し、逆に美しい時の羨望の眼差しに、人間の身勝手さを感じます。美しさと才能が揃ってこその、女優かさねですが、最終巻ではなんと元の醜い姿のまま舞台に立つ決意をします。その舞台は母の物語をそのまま再現したもの。「かさね」という名の通り母の人生を踏襲して生きてきたかさねが、最後に傷つくことを分かっていながら自分らしい道を歩もうとするところに鳥肌がたちます。たくさんの人の人生を狂わせてきたかさねは、ハッピーエンドとは言い難い終わりを迎えますが、最後の1ページに救いがあります。弱いからこそ愛着の湧く主人公でした。