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Mintgirllll2のレビュー・評価・感想

マイホームヒーロー / My Home Hero
9

マイホームヒーローに沼るワケ

『マイホームヒーロー』という作品をご覧になっただろうか。サラリーマンの父親が、娘を半グレ組織から守るために殺人を犯し、どうにか逃げ切ることを命がけで模索するクライム・サスペンスである。漫画・アニメ・ドラマとあり、どの媒体で見ても面白い。その物語の魅力がどういったものか、いくつか挙げてみよう。

1つ目は、主人公の鳥栖哲雄が凡庸代表のような平均的な人物であること。おもちゃメーカーの営業職で、人が良い以外に取り立てて褒めるべきところもない。特徴を強いて挙げれば、ミステリー小説を書くことが好きで、犯罪についての知識が多いということくらいか。妻の歌仙も、若い頃は可愛らしかったかもしれないが、歳を重ねた結果単なるオバさんになっている。娘は大学に行き始めたところだが、さほど優秀でもなさそう。メインの家族が3人とも、凡庸極まる、平均的な人物像なのだ。

だからこそ、裏落ちしたときのインパクトが凄まじい。真っ白なミルクに1点の墨汁を垂らしたかのように、漆黒が急速に広がっていく。もう2度と純白の状態には戻れないのは明白なのに、娘にだけは、自分たちの生活が純白であることを信じさせて。どうにか戻れないかとあがき続ける両親。
娘の人生だけは守り続けようとする両親の必死さがまた凡庸極まりない。でもその凡庸さはとても大事なことなのだと、ショック療法的に改めて気付かされる。

もうひとつは、読者側が、倫理観の相克をずっと持たされるということ。哲雄は半グレ組織の一員を、娘の命を守るために殺めた。さらにそれを隠蔽した。被害者が社会悪とはいえ、命の価値は等しい。読者は哲雄を応援しながらも、彼が命を奪ったという事実をどうしても忘れられない。どうにか生き延びてほしい、残虐な殺され方はしないでほしいと願いながらも、哲雄によって残虐に撲殺された被害者を忘れられない。このモヤモヤした感じが、答えを求めて物語の展開を追わせる原動力になる。哲雄の取った行動は、あるところから間違ってしまったに違いない。でもいったいそのポイントはどこだったろう。一筋縄ではいかない問いの答えを知りたいがために、物語を追うことをやめられなくなるのだ。

そして外せないのが敵役の存在だろう。ホームズにはルパンといったように、同程度の知能レベルで競ってくる手強い相手が必要だ。第1部においては間島恭一という半グレ組織の若者がその役割を担う。恭一は哲雄が犯人であることを証明しようと躍起になりすぎて、かえって組織側に煙たがられて、ニセの犯人に仕立て上げられそうになる。被害者が半グレ組織の重鎮の息子であったため、組織側としては、誰かを犯人に仕立て上げ、見せしめに殺害する必要があるのだ。
恭一の目をくらまし続ける哲雄と、哲雄の尻尾をつかもうとする恭一の、命をかけたデスレースがたまらない。「哲雄、後ろ後ろ!」などと思わず叫び声をあげたくなる。

まだ他にもオススメ要素はたくさんあるが、あとは実際に作品に触れて味わっていただきたい。哲雄と歌仙と共に、壊れてしまった日常をぜひとも堪能してほしい。悪夢が現実化する感覚になること、請け合いである。

ジョジョ・ラビット / Jojo Rabbit
9

違う切り口から見る戦争映画

この作品は戦争映画で、ホロコーストを題材にしています。良くあるテーマではありますが、今作は子供が主人公で、全く違った角度から戦争や差別、迫害を見ることができ、なおかつ終始に渡って笑える部分があり、映像もまるでファンタジー映画のような美しさがあります。一つの作品の中にコメディー、ファンタジー、ヒューマン、戦争など様々な分野、様々な角度から楽しめる要素があるのも今作の魅力です。

アイルヒトラー、ナチスを愛する母親と二人暮らしの少年が主人公です。子供ながらにドイツ軍の訓練に参加し、何か行動する時はいつも頭の中のヒトラーに相談をして、ヒトラーの分身を作り上げていました。その少年の思想はホローコースト、ユダヤ人の差別にも当てはまり、「ユダヤ人を捕まえて殺す」とまで言っていました。
ある日、家に隠し部屋があることに気づき、そこを開けると何とユダヤ人の女性が隠れていました。
最初は、「ユダヤ人は魔女で、殺さなければ」という考えでしたが、初めて会うユダヤ人が普通の人間と変わらないということに気づき始め、少しずつ変化していくというストーリーです。

文字にすると重たい感じがするのですが、テンポよく見られて、笑えて、だからこそ感じるメッセージがある、そんな素敵な作品でした。

ベルセルク / Berserk
9

男なら絶対に燃える物語

三浦健太郎先生の大長編ファンタジー漫画です。
最高に面白い漫画なのですが、確実に読む人を選びます。
主人公と化け物が性行為を行うところから物語が始まるという素晴らしいふるいの掛け方。
序盤から三巻まで主人公のガッツがひたすら暴力的な人物に見えるでしょうが、過去の回想である黄金時代編を読めば主人公の内面に共感できるようになります。

何より圧巻なのは、黄金時代編の最終局面です。
主人公のガッツが怪物に対して異常なまでの憎悪を持つ理由が明らかとなります。
男性なら絶対に続きが気になる熱い物語です。

グロテスクな描写が多いのですが、中世を舞台にしたドロドロとして閉鎖的な世界観と、敵のダークな造形、魅力的なキャラクターによる重厚な人間ドラマが最高に面白く、グロテスクなものが苦手な女性の方でもすらすらと読めると思います。

僕自身が一番好きなストーリーは、回想の黄金時代編が終わった後のロストチャイルド編です。
ガッツの内に秘めた優しさと強さに感動する事間違いなしです。

そこから作者が迷走状態となり執筆ペースも遅くなっているようですが、面白さはキープされていると思います。
最新話では、精神崩壊していたヒロインが復活するというかなり面白い展開が始まったので、今後も要注目です。
まだ読んだ事のない方に絶対に読んでほしいです。