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2khasechiのレビュー・評価・感想

君に届け / 君届 / Kimi ni Todoke: From Me to You
9

心の琴線に触れる作品です

暗くて不気味、近寄り難い「貞子」、爽やかで良い人「風早」というレッテルを貼られた高校生二人が、悩みもがきながら成長していく物語です。
不器用ながらもまっすぐ誠実に相手に向き合う姿、相手に心が届いた瞬間…。涙無しでは読み進められません。
どのキャラクターも心情が丁寧に描かれていて、みんな何かしらに悩んだり、どこか心の弱さがあります。きっと自分や友達に重なるところもあって、愛おしい気持ちになるのではないでしょうか。
千鶴と龍の2人は幼馴染ということもあり、恥ずかしがっているところも素敵です。2人の駆け引きの無い真っ直ぐな気持ちは応援せずにはいられません。
優しくて思いやりのあるあやねちゃんは自己肯定感がとても低くて、どんなに周りが褒めてくれても自分を好きになれないという心情に、共感できるところも多かったです。

大人になっても、高校生くらいの頃の思い出は、宝物のように覚えている方が多いんじゃないでしょうか?
小さなことに一喜一憂して、楽しいことも赤面するほど恥ずかしかったことすら、宝物。
「高校生」という繊細で敏感でまっすぐな時期だからこそ感じ取れる大切なモノが、この作品にはギュッと詰まっています。
なかなかの長編ですが、全体を通して寂しさと優しさに満ちています。みんなと一緒にいるのに何だか寂しい、時間が止まってほしいと思う程かけがえのない瞬間、友達では埋まらない心…。そんな想いがキャラクター達を突き動かしていています。
読んで損はない作品です。

シェフ 三ツ星フードトラック始めました / Chef
7

心もお腹も満足させます

カールは一流レストランの料理長。
持ち前の頑固さから、有名評論家やオーナーと衝突し、自分の気持ちをぶつけたTwitterは炎上。
レストランを辞めて始めたのは、フードトラック。
自分の料理で人を喜ばせたいというシンプルな動機に立ち返り、シンプルなキューバサンドイッチを売りながら、
こんがらがった家族の関係もシンプルにほどけていく…そんな構成が秀逸。
ともに旅する息子(デジタルネイティブの力を大いに発揮)、天真爛漫な別れた妻(美人でびっくり)、
友人(とってもいいやつ)、行く先々で出会うお客さんたちの笑顔。移り変わる車窓の風景。
そしてほんとうにおいしそうなキューバサンドイッチ!
シェフとして父としてともに働き、その背中を見せることから始まり、はじめはぎくしゃくしていた息子とも、徐々にお互い尊敬しあう関係に変化する。
ここでも、ボロの中古トラックをピカピカに磨き上げることから始まって、可愛らしいフードトラックに生まれ変わらせる様子と印象がだぶる。
冒頭でぶつかった有名評論家とも和解し、旅は笑顔で終わりを迎える。
「アイアンマン」を手掛けたカール役のジョン・ファブローがメガホンを取っているだけあって、
マーベル・ファンには見逃せない俳優陣が出演しているのも忘れてはいけない見どころの一つだ。

海の上のピアニスト / The Legend of 1900
8

生涯をたった一つの船の中で

物語は主人公の親友マックス(プルイット・テイラー・ヴィンス)を語り部として幕が開く。
楽器屋を訪ねたマックスは、そこで一枚のレコードと再会する。
このレコードには、かつての親友ピアニストの1900(ティム・ロス扮する主人公の名ナインティーンハンドレッド)の貴重な一曲が収められていた。
1900は、1900年に豪華客船の中でピアノの上に置き去りにされた赤ん坊だ。
機関士のダニー(ビル・ナン)に拾われ、船員達に愛されて育った1900は8歳で再び天涯孤独となる。
そんな幼い1900が生まれて初めて奏でるピアノは彼の健気で切なげな気持ちが表現されていて、映画を観る側の心を一気に惹きつけてしまう。
そんな愛らしいシーンの後に続くのは、もうすっかり過去の遺物となった豪華客船ヴァージニアン号の変わり果てた姿とそこにダイナマイトを運び込む作業員達の姿。
その取り壊される寸前の船に1900が乗っているとマックスは確信する。
かつての豪華客船ヴァージニアン号での1900とマックスは親友として素晴らしい日々を送っていた。
やがて主人公にも淡い恋心が芽生える。相手の女性を目で追いながら奏でるメロディは限りなく壮大で美しい旋律だ。
恋をきっかけに船を降り新たな人生をと決めた1900だが、いよいよという段階でふと目の前のニューヨークの街を眺める。
この時の彼の目に映った景色は夢の新天地アメリカを目指して船旅をする希望に満ち溢れた乗客達とはまるで違ったものが映し出されていた。
過去と現在の時間の流れを容赦なく描いていくドラマは、音楽はもちろんの事、登場人物においても実にアーティスティックに描かれている点も見どころだ。
映画の音楽を手掛けたエンニオ・モリコーネはニューシネマパラダイス等で数々の賞を受賞した有名なイタリアの作曲家である。
本作品は2020年にイタリア完全版として40分以上の未公開シーンが組み込まれた修復版も公開されている。
人物の心の深いところまでを読み解いていくなら、こちらも必見だ。