レッド・ドラゴン / Red Dragon

レッド・ドラゴン / Red Dragon

『レッド・ドラゴン』とは、トマス・ハリスの小説をもとにして2002年に公開されたアメリカのサスペンス映画である。
監督はブレット・ラトナー、主演をアンソニー・ホプキンスである。人食いハンニバルと呼ばれる精神科医の殺人犯ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)に殺されかけた過去を持つ、元FBI捜査官であるウィル・グレアム(エドワード・ノートン)との戦いを描く。見どころは、レクター博士とウィルの頭脳戦と徐々にレッド・ドラゴンと呼ばれる猟奇殺人犯を追い詰めていく所である。

レッド・ドラゴン / Red Dragonのレビュー・評価・感想

レビューを書く
レッド・ドラゴン / Red Dragon
10

狂気な面はその人物の一面にすぎない

「噛みつき魔」と呼ばれる連続殺人犯を元敏腕FBI捜査官が追うサイコサスペンス映画。
レクター博士シリーズの中ではグロテスク要素は抑えめなので、比較的ストーリーに集中できました。
ずっと気になっていたレクター博士が捕まった経緯がさらっと冒頭シーンになっていて贅沢な作品だなと思います。
レクター博士の一言一言が深く無駄のない言葉選びが心に刺さります。
ハンニバルで狂気的な一面ばかり目が行きがちですが、本当に恐ろしいのは常人には理解できないほど知的過ぎることなのではないかと思います。
今回の事件解決のために動いている元FBI捜査官ウィル・グレアムを大きく助け、そして陥れる役回りです。
グレアム捜査官はレクター博士を逮捕した人物で、犯人の心を読むことが出来るプロフェッショナルでした。
正常な精神を保ちつつ犯人の精神に近づくというのは、考えてみると常軌を逸していることで自身も悩んでその才能を嫌っていたのが印象的でした。
引退後は家族と穏やかに暮らしていましたが、心のどこかで事件を求めていた感じが見受けられ隠している狂気的な探究心がレクター博士に気に入られた理由なのだろうと思いました。
この映画が印象的に思えた一番の理由は、犯人フランシス・ダラハイドのストーリーにとても重きをおいていたからです。
同時進行でストーリーは進み、ダラハイドの心の移り変わりがとても分かりやすく描かれていて同情を誘います。
人を殺すことに罪の意識を感じないほど純粋ともいえる狂気の背景には、悲しい理由がありました。
どんなサイコな犯人でも寂しいという感情も、人を愛したいという感情もあり、その愛情が不足することで心に異常をきたすのだと考えさせられる作品です。
どのように犯人を追い詰めるかも面白いですが、キャラクターそれぞれの心境をみて頂けるとよりこの作品を楽しめます。

レッド・ドラゴン / Red Dragon
8

知性を感じるサスペンス「レッド・ドラゴン」

レクター博士シリーズ第3弾「レッド・ドラゴン」。

時系列では、時系列的には「羊たちの沈黙」でレクター博士がクラリスに出会う前の話で、なぜレクター博士が牢獄に入っているのかということも明らかになります。

物語はレクター博士がオーケストラの演奏を鑑賞しているところから始まります。
そしてレクター博士はオーケストラの和を乱す奏者の臓器を調理し、演奏後の食事会で御馳走する…(直接的なシーンは映さず、あくまで「匂わす」程度)。

まず、冒頭から引き込まれて目が離せません!
羊たちの沈黙と同様の、あの不気味で観ていてソワソワする雰囲気があります。
構成的には、捜査官がある事件解決のために牢獄のレクター博士に捜査の協力をお願いする、という形で羊たちの沈黙と似ています。
エドワード・ノートン演じるウィル・グレアムとレクター博士のやりとりは。クラリスとレクター博士のそれに負けない頭脳戦。緊迫感が凄いです。
そして、今回の事件の犯人である「咬みつき魔」ことフランシス・ダラハイドの心理描写も深く掘り込まれていて、悲惨な事件の犯人でありながら引き込まれてしまいます。
「咬みつき魔」という強烈なイメージとは裏腹に、無口でおとなしい男。そのじとっとした雰囲気がより一層、事件の不気味さを増していてよかったです。彼はハリーポッターでヴォルデモート卿を演じるレイフ・ファインズです。彼自身はとても紳士的な雰囲気なのですが、見事に精神異常者を演じ切っていると思います!
さらに、エミリー・ワトソン演じる盲目の女性リーバもまた凄く魅力的。
幼少期のトラウマにより精神異常をきたし、自ら「神」になろうとして虐殺を繰り返す男が、その盲目の女性との出会いを期に苦悩し、葛藤し、揺れ動いていく…。その様子も見ごたえアリです。

ただ、なぜ「咬みつき魔」になってしまったのか、それに犯行の動機がいまいち分からず終い。神になるための儀式なようなものであるのか?それに、「家じゅうの鏡を割るほど顔にコンプレックス」という割には相当美形(これは仕方ないかもしれませんが)。
しかし、幼い頃から「おまえは醜い」と言われ続けているとそう思えてしまうのかもしれません。
元々は普通の少年だったのに、度重なる虐待でこうなってしまったのかと思うと哀れです。

なぜ家族を襲ったかは見ていて納得。
平和そうな家族を壊したいという思いがあったのですね。
その中で光り輝いている「母」。それがダラハイドが一番欲しかったもので、一番憎いもの…
だから人妻を狙ったんですね。その辺は、なるほど。
消化不良な箇所もあったりはしますが、原作はそのあたりももっと深く書いてあるそうです。

今回は羊たちの沈黙よりもさらに目を伏せたくなるような残酷なシーンはほとんどないにも関わらず、相変わらずゾクゾクするし、怖いです。グロテスクなシーンを見せれば怖いだろう!という映画も多いので、この映画はその点でも知的な感じがしてさすがでした。

そして最後に…エドワード・ノートンが美しい!それだけでも観た価値アリ!でした。