哀れなるものたち(映画)

哀れなるものたち(映画)のレビュー・評価・感想

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哀れなるものたち(映画)
9

エマ・ストーン主演『哀れなるものたち』が2024年を代表する映画である理由

第96回アカデミー賞にて、作品賞を含む11部門にノミネートされた『哀れなるものたち』は2024年を代表する1本ではないか。無理やり枠に納めようとする男性と、抑圧された女性の解放というテーマが描かれており、現代社会を生きる女性にとって希望になる物語だ。
本作は天才外科医の実験体となり脳を移植された、いわば”造られた”女性が主人公。彼女を『ラ・ラ・ランド』等で有名なエマ・ストーンが演じている。これまで華美で派手なイメージの作品に出演する事の多かったエマ・ストーンだが、本作は彼女が実験体として外科医の家に閉じ込められた状態という、衝撃的な設定から始まる。この隔離された空間から、外の世界を旅する中で自由を獲得していく展開は本作の主題であり意義深いところ。
だが本作を重要な作品にしているのは、この女性の解放というテーマともう1つ、家族の呪縛という裏テーマが同居していることにある。一見社会的な縛りから解放され、力強く生きている彼女であるが家族というコミュニティに対しては縛られたままなのではないか。そんな疑問が残る展開が待っている。
単に男性からの解放というテーマ性だけではない点が、本作をより重要な作品にしていると言っていいだろう。ストレートに賛美出来ない点が本作の映画的で素晴らしいところ。必見の映画である。