プロヴァンスの休日

プロヴァンスの休日のレビュー・評価・感想

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プロヴァンスの休日
8

南仏プロヴァンスの風に吹かれているようなほっこりする映画

2014年のフランスの作品。主演はあのジャン・レノということになってはいるが、実際は孫役のテオを演じているルーカス・ペリシエだろう。オープニングの汽車の中で居眠りする少年がずっと写っているのがその証拠だと思う。
夏休みに兄、姉、テオの3人は会ったこともない祖父母の家で過ごすことになる。母親が仕事で海外へ行くことになり、子供たちの世話ができなくなったためだが、祖父母と母は長い間確執があり疎遠なのだ。パリに住んでいる3人はプロヴァンスは初めて。ネットの電波もあまり通じない、暑い田舎のプロヴァンス。予想通り最初は打ち解けず反発し合う。
ストーリーはいわば王道、過去にも似たような作品はたくさんあり、展開も予想通りでおっとびっくりなことは何もない。けれどもこの作品ですばらしいのは、テオ目線で描かれる映像の美しさなのだ。
彼は聴覚障害があり、意思の疎通は手話で、セリフはない。テオ目線のとき、大人たちの会話や街の雑踏の音などもすべてOFFにされる。そう思った瞬間ざわついたうるさい世界に戻るのだが、それはテオの世界からの眺めではなくなっているのだ。言葉はなくともだんだんと硬く閉じた祖父の心をほぐしていくテオ。それと同時にオリーブの畑に吹き付けるプロヴァンスの風。ラストに子供たちを迎えに来る母親とのシーンが少しだけあるが、それが実にいい。
コールドプレイの楽曲のエンドロールもしゃれている。疲れた大人たちにおすすめの作品だ。それにしても日本のちまちました夏休みではこのような体験は到底不可能だろう。フランスがうらやましい。