パリ13区

パリ13区のレビュー・評価・感想

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パリ13区
7

鮮やかなモノクロ映画

『燃ゆる女の肖像』で高い評価を得たセリーヌ・シアマが脚本に名をつらね、同作で圧倒的な存在感を見せたノエミ・メルランが出演しているとなれば、見ないわけにはいかないだろう。

舞台はアジア系移民やさまざまなルーツを持つ人たちが住むパリ13区。
コールセンターで働くエミリー、高校教師のカミーユ、大学に復学し法律を学ぶノラ、カムガールのアンバー・スウィート。この4人を軸としたストーリーである。
高層マンションが建ち並ぶ風景は、この社会で生きる若者たちの孤独や不安を象徴しているように見える。その穴をセックスで埋めようとするのはどの国のどの時代の若者たちも同じかもしれないが、とにかく冒頭からセックス、セックス、セックスである。

特に顕著だったのは台湾系のエミリー。演じたルーシー・チャンは本作が長編デビュー作とのことだが、エミリーの不安定さを瑞々しく表現していた。
レストランでの勤務中にメールをして都合がついた男性とセックスをしに出て行ってしまうのはどうかと思うが、戻ってきて軽やかなダンスでフロアを横切るシーンは、一時でも満たされ孤独から解き放たれた様子をありありと映し出していた。

対してノエミ・メルラン演じるノラは、大学でカムガールと間違えられ居場所をなくし、当のカムガール、アンバー・スウィートとネットを通じて次第に心を通わせていく。
体のつながりはないが、お互い幼少期からの写真を見せ合いっこしたりと、心のすき間が埋められていく様子が丁寧に描かれていた。

若者とはとかく不安定で寂しがり屋で周りが見えておらず、面倒くさいことこの上ない。だがモノクロの世界で生きる彼らを見たあとでは体にスッと風が通り、見慣れた景色が鮮やかに映り、若さというのもいいものだなと感じた。