ナイブズ・アウト:グラス・オニオン / Glass Onion: A Knives Out Mystery

ナイブズ・アウト:グラス・オニオン / Glass Onion: A Knives Out Mysteryのレビュー・評価・感想

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ナイブズ・アウト:グラス・オニオン / Glass Onion: A Knives Out Mystery
8

パンチの効いた展開とオチが最高

探偵、ブノワ・ブランが難事件に挑むシリーズの二作目。前作の『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』に引き続き、思わず見返したくなるような仕掛け満載の作品です。今作の舞台はIT業界を代表する世界的な大富豪のマイルズ・ブロンが所有するギリシャの孤島が舞台。彼と友人たちのパーティーに何故か招待されたブノワは絶海の孤島というシチュエーションと、マイルズと友人たちの複雑な関係性に「事件」のにおいを感じる…というのが本作の導入部です。

この作品の最も挑戦的な部分は、「ミステリーの難解さ」を逆手に取ったオチです。今回のテーマはマイルズの元ビジネスパートナーだったカサンドラを誰が殺したのか。ブノワとカサンドラの双子の妹であるヘレンは島にいる人々の動機を探りますが、全員に動機があり、同時にそれを否定する材料もある、という状態に。最も怪しいのはカサンドラに失脚されそうになっていたマイルズですが、もし彼が犯人であれば自分が真っ先に疑われることなど当然気が付くはず。「マイルズだってそこまでバカじゃないだろう」とブノワも真っ先に犯人候補から外します。
しかし、新たな犠牲者が出て事件が混迷を極める頃、ブノワは真相にたどり着きます。
真相はシンプルなものでした。マイルズはバカだったのです。自分が真っ先に疑われるからやらない、という考えすらないバカで、カサンドラの功績をかすめ取っただけの男だったのです。
犯人が度を越えたバカであるがゆえに逆に事件が複雑になってしまう、というプロットは見事のひとことで、見終えた後にもう一度バカっぷりを再確認するために見返したくなること請け合いです。ただ、一点不満があるとすれば、犯人が度を越えたバカのわりに好き勝手やりすぎて探偵の推理すら無意味になってしまい、最終的にマイルズの持つすべてを爆破するというかなりの力技で解決したこと。この解決方法は好みが分かれるところだと思いますが、上質なミステリー映画を見たい方は必見です。