クーリエ:最高機密の運び屋 / The Courier

クーリエ:最高機密の運び屋 / The Courierのレビュー・評価・感想

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クーリエ:最高機密の運び屋 / The Courier
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キューバ危機の救世主とは誰か?

タイトルの問いに、世の中の人は、まず暗殺されたケネディ大統領を思い浮かべるのではないか。
ソ連の傀儡としてのキューバにミサイルが配備されるのを止めることに成功した。
なんて英雄だ。という具合に。その交渉材料は、ではどこから?
その裏方の事実を伝えるのがこの映画である。

これは、キューバ危機から世界を救ったのは、ジェームズ・ボンドのようなド派手なアクションをするスパイものの主人公ではなくて、一介のセールスマンであったという奇跡のような話である。

気になった方は検索してみてほしい。グレヴィル・ウィンという人だ。

一介の、と控えめには書いたが、彼の営業として人の懐に飛び込む資質が優れていなければ、ソ連側のキーマンであるペンコフスキーの心の氷を溶かすこともできなかったであろう。
そのことを思えば、彼は「卓抜した」セールスマンだったというべきなのかもしれない。

最近の、記録映像を援用してくるタイプの「史実に基づく」映画らしく、エンドロールを観ていくと、実際の彼がどんな人だったのかも窺い知ることができる。

ひいては、日本の世間でいわれるような、草の根レベルの交流なんて意味がないとか、民間部門で何ができるのかというシニカルな問いは、「史実を知らないだけ」ということも学べる。

政府部門だけで交渉していて、この民間人が居なければ核戦争開始だったかもしれないのだから。
そういう意味で、この映画は二重三重に推しておきたい。