ハウス・ジャック・ビルト

ハウス・ジャック・ビルトのレビュー・評価・感想

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ハウス・ジャック・ビルト
10

そうだ、家を作ろう。

2018年に公開された、実在した連続殺人鬼を題材にしたサイコスリラー映画。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などで有名なラース・フォン・トリアー監督の作品。本作においても監督の悪趣味さが存分に発揮されており、観客を大いに喜ばせてくれる。

主人公は建築家を目指す「ジャック」という男(大変セクシーな雰囲気をまとっている)。このジャックが起こした数多の殺人事件の中から5つをピックアップして、それらをなぞりながらジャックという人間を見ていくというのが、この作品の大まかなつくりとなっている。
また、タイトルの『ハウス・ジャック・ビルト(原題”The House That Jack Built”)』は、「ジャックの建てた家」という意味。

一つ目の話では性格の悪い女。二つ目の話では普通のおばさん。三つ目の話ではその当時結婚していた妻とその子供。四つ目の話ではちょっとおバカな美女。五つ目の話では複数の一般人を、それぞれ手にかける様子が描かれる(五つ目については未遂に終わる)。

どのパートでも殺人やその周辺の描写が大変面白く見ごたえがあり、それらに絡めて語られるジャックの「芸術家」としての考えも聞いていて面白い。
またジャックは建築家を目指しているので、自身の理想の家を作るべく、作りかけては壊しまた作っては壊しを繰り返していたのだが、この作品の終盤で彼はついに理想の「家」を作り上げることに成功するのだった。

「老若男女問わず、殺したいと思ったらからには殺す」というジャックのサイコパスぶりには見ていて清々しさすら覚えるほどで、そのうえ自分が殺した人間の死体で遊んだりするので、そこも不謹慎メガマックスという感じで面白い。

2時間35分とかなり長い部類の映画であるが、形式的に短編集のような構成になっているので、おそらく途中でダレるということもないかと思われる。興味を持たれたなら一度見てみることを強くお勧めする。

ハウス・ジャック・ビルト
8

私たちには理解できない感性。

ジャックがしてきた殺人を見せつけてくる映画です。
ジャックがなぜ人を殺したのか、それはわかりませんが、強迫観念にとらわれているって感じの描写でした。最初の被害者が、なぜ彼をからかってしまったのか、それが不運だったなって感じです。
お話は、ジャックが謎の老人に、今までの殺人について語って聞かせる形式で進むため、とてもわかりやすかったです。いろんな殺人があり、怖いし、嫌ですが、どこかコミカルでブラックコメディなのかなって感じでした。見ていられないシーンも多いのですが、そこをあえて描いているところがいいなと思います。ほんと殺人は見ていられない所業です。淡々とそれをこなす主人公が、おそろしかったです。
5番目の事件など、もう捕まっている間中怖かったでしょう。彼には彼の芸術論があり、5つの殺人を通じそれをみせつけていました。その芸術論は、よくわからなかったけど、シリアルキラーと呼ばれる人たちの頭の中には、このような考えがあるのかもしれません。普通の感性じゃなくてあたりまえなのかもしれません。
その後に起きる展開は、なんだかよくわからないものになったのですが、それも幻想的でよかったです。死体で家を作るという描写のすさまじさにおびえてしまいました。