博士の愛した数式

博士の愛した数式

『博士の愛した数式』は、小川洋子による小説。
2003年8月、新潮社より刊行。2004年2月、第55回読売文学賞受賞、同年4月第1回本屋大賞受賞。2005年12月、新潮文庫として文庫化され、発売2ヶ月で100万部を突破し新潮文庫では史上最速を記録した。
美しい数式の世界を織り交ぜ、記憶が80分しか持続しない数学者と母子の交流を描く。
2006年1月21日に映画が公開された。寺尾聰主演。
家政婦の「私」の視点で描かれた原作に対し、映画では中学校の数学教師になった29歳の「ルート」が、クラスでの最初の授業で博士との思い出を語るというものになっている。
映画の公開に合わせ、講談社発行の漫画雑誌『BE・LOVE』に、くりた陸作画で2005年12月から全4回連載され、2006年2月には、講談社コミックスDXとして出版されている。
また、ラジオドラマとしてMBSラジオで2006年3月19日に放送された。出演は柄本明、中嶋朋子、武井証。同年6月30日には、ラジオドラマCDとして新潮社から発売されている。
更には舞台化もされ、同名タイトルで2015年12月に劇団た組公演としてウエストエンドスタジオで上演された。

博士の愛した数式のレビュー・評価・感想

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博士の愛した数式
6

大袈裟な感動やどんでん返しが無く、気が付けば終わる2時間

2006年1月から上映開始。
小川洋子著の同名の小説からなる映画。

まず始めに皆さんにお伝えしたいのは、大ヒットした小説を実写で映画化することはとても難易度の高いものだということ。なぜなら、小説を読む読者が想像するイメージと、映画での表現に大きな違いがあれば読者を納得させることができないからだ。
その点において読者が絶対的に期待していたのは、何とも言い難い温かい空気感ではないだろうか。
本映画では、80分しか記憶が持たない博士と家政婦である杏子、その息子であるルート、普通では考えにくい彼ら三人のやり取りを日常的、かつ終始温かい雰囲気で描かれており、小説を知らない人はもちろん、小説の読者まで納得させられる内容に仕上がっている。

しかし、原作が好きだった読者目線で私が感じたのは、数学博士の異常さが物足りなかったということだ。自分の生活には無頓着であり、身体は痩せ細っていて、部屋はボロボロで服は数着しか持っていない。そんな博士だが、数学だけは世界的な雑誌の難問でも解いてしまう天才なのだ。
寺尾聰が演じる博士は、私がイメージしていたよりも風貌が整っているように見え、実生活に無頓着な博士と天才的な数学博士のギャップが小さく、登場人物が持つ魅力の立体感に欠けるような印象を持ってしまった。

博士の愛した数式
7

数字で心を通わす博士

この作品はとても心が温かく穏やかになります。
タイトルに数式とありますが、難しいことは全くありません。

あらすじとしては、シングルマザーの家政婦の杏子(深津絵里)が博士(寺尾聰)のもとへ派遣されるのですが、博士は交通事故の影響で記憶が80分しか持たないという事情を抱えていました。
しかも博士は数学のことしか頭になく、人付き合いがうまくできず、これまで何人も家政婦が入れ替わっているという状態でした。

それもそのはずで、杏子が初めて訪問したとき、挨拶をしても返ってこない。
居心地悪そうにしていると博士が唐突に靴のサイズを聞いてきます。
24cmと答えると「24。4の階乗だ。」となんでも数学にしてしまう、かなりの変わり者です。

記憶が80分なので、次の日尋ねると当然杏子のことは誰だかわかりません。
毎回自己紹介して、靴のサイズが24㎝と答えなければなりません。

杏子もこの状況に四苦八苦していましたが、博士の数学の話を興味津々に聞いて懸命に博士のことを理解しようと努めます。
ここのあたりの深津絵里さんの演技はとても愛が感じられます。
後に10歳の息子も博士と時間をともにすることになり、家族のような関係を築いていくというストーリーです。

観た翌日からの人付き合いを変えてみようと思わせてくれる作品です。
いつも杏子のように人の話を聴きたいものです。

博士の愛した数式
10

数字でコミュニケーションを取っている

博士が杏子さんやルートと数字の話でコミュニケーションを取るところが好きです。いかにも数学者って感じだし、私には全くわからない分野なので、この数字にはこんな意味があるんだってのが分かって興味深かったです。いろんなことを数学で例えていて、博士がどれだけ数学が好きなのかもわかりました。家政婦をしているシングルマザーと記憶が80分しか持たない博士の交流の話で、毎回会うたびに博士の記憶が無くなっているにも関わらず、博士が杏子さんやルートとどんどん仲良くなっていくのを見て、友情には時間は関係ないんだなと思いました。博士からするとなんでそこまでしてくれるのかわからない部分もあったと思うけど、伝わる、伝わらない関係なし彼らはに博士のために何かしたいと思ったんだと思います。また、未亡人の女性は博士に冷たい感じがしたけど、2人にあのような過去があったとは!何かあるなってのは示されていましたが驚きましたし、悲しいなと思いました。博士だって、未亡人のせいだとは微塵も思ってないとは思いますが、相手に障害が残り、その時のことは覚えてないのかもしれないってなると、罪悪感が払拭でき無いんだと思います。