沈黙の艦隊

沈黙の艦隊のレビュー・評価・感想

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沈黙の艦隊
8

「沈黙の艦隊」が突き刺す世界への独立戦争

まず、原子力潜水艦を「戦闘国家」として独立させる。この発想に衝撃を受けました。世界の政治情勢を鋭く分析できる上に、潜水艦による戦闘のプロフェッショナル。主人公の海江田四郎による世界への宣戦布告は、否応なしに波風を起こします。戦争とは、国家とは、そして平和とは何か。独立国家「やまと」の航海と、それによる世界情勢の混乱は世界を変えられるのか。わくわくしながら読んでいたのですが、その逆の視点で読むことも楽しいです。
日本と共同で開発していた原子力潜水艦「シーバット」の反乱。その後「戦闘国家」としての独立を謳うテロリストたちを仕留めるためには手段を選ばない、世界の警察たるアメリカ。しかし「シーバット」は現存の潜水艦では想像できない操舵によって敵を沈め、航海を続ける。「シーバット」の航海と、それによるアメリカ一強支配の崩壊。世界は独立国家「やまと」を受け入れられるのか。それとも、「シーバット」を沈められるのか。日本は独立国家「やまと」と同盟国になるのか。それともアメリカに忠誠を誓うのか。
湾岸戦争の最中に連載されていただけあって、骨太な読み応えのあるマンガです。この作品のテーマは「独立」です。海江田四郎は何のために独立国家「やまと」を立ち上げ、何のために敵と戦い、何を得ようとしていたのか。ぜひ一読していただきたい名作です。

沈黙の艦隊
9

壮大なテーマ、不朽の名作

かわぐちかいじ先生の30年ほど前の作品。その後アニメ化されていますが今回はマンガのレビューです。日本製だが実質アメリカの指揮下で製造された原子力潜水艦の館長が主人公という設定です。テスト航海に出て、そのまま亡命、さらにその潜水艦で独立国家宣言をする、というのが最初の流れです。一見無茶苦茶なようですが、行動原理や思想が実に合理的。今でいうとN国党の立花さんがちょっとかぶります。海の中にもぐって無線を発信しない限りどこにいるか誰にもわからない、という特性を最大限にストーリーに生かしています。そしてもう一つは核弾頭ミサイルを搭載しているかもしれない、という切り札で実際は使用することなく、たった一隻でアメリカ最強艦隊ともいえる第七艦隊が一歩も動けくしてしまう、戦術の天才でもあるのです。(連載当時)アニメ化されていないマンガの名ゼリフってなかなかないですが、このシーンの主人公のセリフ「わが艦の兵器は通常にあらず」は今でも心に残っています。また、軍事のみならず政治面でもアメリカ大統領が日本の総理大臣にこの事件の責任追及をし、そちらのストーリーも同時進行します。政治と軍事を分裂する、というテーマの中、主人公の運命、日本の進むべき道など壮大なマンガ、是非読んでください。