メイドインアビス / Made in Abyss

メイドインアビス / Made in Abyss

『メイドインアビス』とは、つくしあきひとによる日本のファンタジー漫画作品である。
作者のつくしあきひとは、ゲーム会社でデザイン等を行い、その後フリーのイラストレーターとなっている。本作品にもその経験が活かされ、ファンタジックな美しい背景やイラストが特徴である。
物語はアビスという大穴を冒険する様子が描かれている。主人公リコは人造人間のような見た目のレグと出会い、母を探しながら大穴の奥底に眠る秘密を探っていく。
美しい背景や可愛らしいキャラクターデザインとは裏腹に物語の内容は重く暗いものである。この事に関して、作中のレグの言葉を引用し「度し難い」と表現されることが多い。
テレビアニメは2017年、2022年に放映された。テレビアニメの総集編として、劇場版2019に前編『メイドインアビス 旅立ちの夜明け』、後編『メイドインアビス 放浪する黄昏』がそれぞれ公開された。2020年には新作劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』が公開された。

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メイドインアビス / Made in Abyss
8

【映画】メイドインアビス 深き魂の黎明 【感想と見所】

「メイドインアビス」とは2012年からコミックガンマにて連載中である、つくしあきひと氏原作の漫画です。
2017年にアニメ化され、今回紹介する映画は2020年に劇場版として放映されました。
かわいらしい絵柄とは裏腹に、内容はシビアでハードR15+指定の映画となります。
かわいい少女や少年が楽しく和やかに旅をするといった内容を期待して観ると痛い目を見るのでご注意を...。

~あらすじ~
人類最後の秘境といわれる謎の巨大な縦穴『アビス』。そこから発掘される数々の不思議な力を持った道具『遺物』を求めて『探窟家』達がアビスへと挑み、富と名声、未知とロマン、望郷と憧れといったようなものに魅入られて、危険なアビスを奥底へと冒険にいく物語。アビスから帰らぬ母の背中を追いかける主人公の少女『リコ』とアビスの底からやってきて、さらにリコの母親とも面識がある可能性のある少年『レグ』が力を合わせてアビスの底を目指し数々の人や生き物、困難、未知の世界を突き進む様が描かれています。
今作はその中でもテレビアニメで放送されたストーリーの続編が映画化されたものです。
(今作とは別にテレビアニメの内容を総集編としてまとめたものが劇場版前編、後編と2作あります。
原作未読でアニメ未視聴の方ならば、先に総集編から視聴することをおすすめします。)
『ナナチ』を仲間に加え下層4層から5層へと到達、そこで待ち構える『白笛』の『黎明卿・ボンドルド』各々がそれぞれの信念や憧れを持ってアビス下層を目指す中、交錯するそれぞれの想いや立ちはだかる残酷な理に翻弄されつつも、なんとか5層を攻略し、6層への入口へと至るところまでが今作の内容です。

~感想~
えげつない情緒の嵐の中、ボンドルドのイカれた嘘偽りの無い愛と穏やかな狂気がブレずにどっしり軸としてあったから、エグい内容でも耐えられました。そして最後には謎の感動と清涼感さえ感じるカタルシスが待ち構えていました。
ちなみに私は原作既読なので映画の内容は知っていましたが、それでも心をぶん殴られたかのように激しく揺さぶられ、感動しました。ここまで様々な感情を掻き立てられ、吐き出させられることはなかなかないと思います。感情を無理やりデトックスさせられたせいか、帰り道では謎の疲労感と満足感のようなものに包まれました。

~見所~
正直見所しかありませんが、あえてわかりやすくあげるとするならばこんな感じです。

・「映像が美しい」
美麗な作画によりアビスの未知の異世界観が鮮明に伝わってきます。息をのむほど幻想的な空間や、目を逸らしたくなるほど恐ろしく残酷な環境への没入感が凄まじいです。

・「音楽が美しい」
没入感という点では劇中で流れる音楽が素晴らしかったです。エンドロールも最高で、ラストで搔き乱された情緒と処理落ちした感情を優しく包み込んでそのまま昇華してくれるような音楽でした。また、効果音もとてもリアルで、劇中のえげつないシーンではそれが際立っているように感じました。

・「作画がすごい」
暴走したレグとボンドルドの戦闘シーンは圧巻です。スクリーン内を縦横無尽に移動しヌルヌルと滑らかに動いて激しく戦う描写はその迫力が凄まじかったです。

・「演技がすごい」
声優さんたちの魂の込め具合がすごい。アニメから引き続き『リコ』『レグ』はもちろんのこと、『ボンドルド』無機質ながらも慈愛に満ちた声の表現が一貫していて、とてもよかったです。『プルシュカ』も涙を枯らす勢いでいい演技です。

・「ストーリーがすごい」
原作既読で内容や展開を知っていてもなお、涙なしには見ることのできない物語でした。また、ストーリーと同時にそれを引き立たせる演出も絶妙で、情緒が揺さぶられました。(上映中、館内の至る所から鼻をすする声が聞こえてきたほどです。)

~最後に~
以上、個人的にはとても満足した映画でしたが、最後に1つだけ注意点があります。
それは猟奇的な描写がハードに含まれているということです、画風からは想像もつかないような残酷な目に彼女たちは会うことになります。そのあたりの描写が許容でき覚悟できる方ならば筆者は太鼓判を押してお勧めします。ただ、少しばかり”癖”が過分に盛り込まれた内容(リョナ、ショタ、ケモナー等の要素)でもありますので、やはり万人にお勧めはできないようにも思います。
しかし面白いことには間違いないです。未知への冒険や、少年少女が協力し合い、困難を乗り越えて成長していくような物語が好きな方ならきっと楽しめるかと思います。