青野くんに触りたいから死にたい

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青野くんに触りたいから死にたい
8

好きでいるほどに傷つく二人

この漫画をジャンル分けするのは難しい。高校生のラブストーリーであり、ゾッと震えるホラーであり、いくつもの謎が絡み合ったサスペンスのようでもある。
刈野優里は身近に一人はいそうな女の子。クラスメイトに名前も覚えてもらえてないし、友達らしい友達もいないから体育で二人組を作ると余ってしまう。そんな子が、想いを寄せる『青野くん』に勇気を振り絞って告白したら何とOK。幸せいっぱい、これから二人のラブストーリーが始まる……かと思いきや、付き合い始めてたったの二週間で青野くんは帰らぬ人となってしまう。
しかし物語はここからが本番。なんと幽霊になって帰ってきた青野くん。幽霊でも一緒にいられるだけで嬉しい、そう喜ぶ優里だが、彼は時々人が変わったようにとある要求を始める。

独特な絵柄に苦手意識を持つ人もいるかもしれないが、この絵だからこそ不気味で気持ち悪い空気、溢れる涙や堪える唇といった表情の機微、ちょっとシュールな笑いの場面、全てが豊かに感じられる。
優しい青野くんが一転して恐怖の対象になってしまう、その切り替わりに優里も読者も翻弄される。
初々しくいちゃついた次の瞬間にはクラスメイトが平然と青野くんの身体をすり抜け、「あぁ彼は幽霊だった」と現実を突きつけられる。そんなシーンに何度も寂しさを感じる。

幽霊の自分をコントロール出来ない青野くんと、それでも彼を好きでいつづける優里。
大切にしたいのに傷つけてしまう。守りたいのに危険に晒してしまう。
お互いに想い合い一緒にいたいと願うほど、罪悪感も募ってしまう。
けれどもこれは決して苦しみの物語ではないと思える。そんな中でも二人は確かに幸せを感じているし、放棄せずに道を探している。それに協力しようとする人も現れる。

『青野くん』は何が目的なのか?二人はどうなってしまうのか?
青野くんと優里、そしてそれを取り巻く人々が見つける道を一緒に見てみたいと思える作品。