AKIRA / アキラ

『AKIRA』とは、1982年12月20日号から1990年6月25日号まで『週刊ヤングマガジン』(講談社)で連載された、大友克洋によるSF青年漫画である。コミックスは単行本が全6巻、オールカラー国際版が12巻、総天然色版が6巻、復刻版5巻が刊行され、国内累計発行部数は2016年時点で300万部を超えた。
物語は超能力者とコンピューターの戦いを中心に、軍や反政府勢力、不良少年の争いで都市が崩壊する様が描かれている。作者はこの話の最後に、少年たちが自分たちの道を発見し進んでいく未来に向けてのメッセージを込めた。
1984年には「第8回講談社漫画賞」の一般部門を受賞した。さらにアメリカの「アイズナー賞」で1992年に『オールカラー国際版』が最優秀彩色部門、2002年には最優秀国際アーカイブプロジェクト部門、最優秀国際部門の3つを受賞した。
アニメ映画は1988年に日本で公開され、制作には当時の日本アニメーション映画としては破格の10億円がかけられた。同年12月には国際映画祭参加版が制作され、ハリウッド・リポータ選出の「大人向けアニメ映画ベスト10」で第4位にランクインした。映画は2020年4月にリバイバル公開された。また、漫画『AKIRA』は2020年東京オリンピックなどに関し「予言書」と言われるようになり、話題となった。

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AKIRA / アキラ
9

カリスマと凡人

大友克洋のファンであれば必ず観ているであろう今作は、80年代の要素を残しつつも、とても未来的でサイバーパンクな雰囲気が漂う作品である。
「金田」というカリスマ的存在の少年と、対照的に平凡な少年「鉄雄」の2人を中心として物語が進んでいく。
金田という少年は、赤いジャケットを着て赤いバイクに乗る、暴走族のリーダーである。自信家でお調子者、女好きで仕方のない男だが、仲間の危機には率先して立ち向かう勇気と男気のある男だ。対して鉄雄は平凡で少し気が弱いが、己の中に野心のある男。そして金田に反発しながらも強く憧れている。
私たちの世界にも金田と鉄雄はいる。金田のような人間はこの世界にも一握りで、私たちはみんな「鉄雄」なのだと思う。
人は強いものに憧れ、羨み、嫉妬する。自分も「ああなれたら、あいつみたいに強ければ」と、常にそういうことを思っている。
AKIRAを観ていると鉄雄という人間の愚かさと愛おしさが芽生え、いつの間にか自分自身を鉄雄に投影してしまっていた。
AKIRAという力に壊れゆく人間の脆さと、大きな力を前にしても決して崩れない人間の強さの違いはいったい何なのだろうか。何度も何度も考える作品である。
映画版は原作とは少し違ったストーリーだが、世界観の作り込みもキャラクターの個性もアニメならではで、とても良い。
芸能山城組の民族的な音楽も作品に合っており素晴らしいと思う。