草原の実験

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草原の実験
9

無言の美しさ、悲しさに圧倒される

最初から最後まで、セリフが一切ない少し特殊な映画になります。
父と娘の2人が草原の一軒家に住み、父は毎日娘に見送られながら車で働きに出かけ、娘は献身的に父のお世話をします。この映画の見所の1つとしている、娘がとても可愛らしく、セリフがなくても飽きない大人びた少女の表情で演技をしてくれるところです。美しい彼女には馬に乗った青年と外人風のひょうきんな男性の2人から想いを寄せられます。前半は、そんな綺麗でどこか気なさげで、でも楽しみもきちんとある日常を描いています。ですが、突如、彼女の父親が病に倒れ、軍と思わしき人物の厳しい取り調べやら、不穏な空気が漂います。セリフが一切ないので、ハラハラも一段と強くなります。そして、突然の父親の死。娘は父の通っていた道を辿ります。その先には、鉄格子で覆われた施設があります。不穏は益々、増して行きます。一人ぼっちになった少女は、馬に乗った青年の家へ行きます。そこで、外人風の男と勝負が始まり、買ったのは外人風の男でした。少女は自宅に戻り、外人風の男性と暮らし始め、あやとりをして穏やかな生活を取り戻した…のもつかの間。突如、キノコ雲が上がり、家のガラスは割れて、そして、一瞬にして少女も家も、何もかもを壊します。最後に残ったものは、草原に登る、夕日だけでした。ああ、あれは核の実験をしていた。父は被爆していた。と、最後に分かります。まるで、少女の走馬灯のような、悲しく美しい作品です。