誰も知らない

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5

音楽もほとんどない淡々とした描写

うすら風邪をひき、のどの痛みが取れないので、年末に撮り溜めていた映画を観る。

この映画が制作された2003年は、平日は毎日午前さま、休日は子どもと公園めぐりで、公私とも、最も充実していた時期だったと思う。

だから、本作品が海外で高い評価を受けただとか、主人公が中学生の柳楽優弥だとか、事前情報なしに観た。監督が是枝裕和なのでくらいの、軽い気持ちだった。

音楽もほとんどない淡々とした描写に、どんどん引き込まれる。優しくて、駄目な母親役のYOUの演技もいい。

ラストの羽田空港モノレールの描写は、エヴァの綾波とシンジの電車シーンを想起する美しさだった。

アベノミクス以前の「失われた〇十年」は、歴史的には貧困の時代と称されるのだろう。

現在までの時期を連続して生きる私たちは、心情的にこれを受け入れられない。「日本は裕福な国」というイメージを、私たちの時代に否定されたくないのだ。

しかし、非正規雇用、格差拡大の例を持ち出すまでもなく、貧困の問題は目に見えるところにあった。

息子の通う小学校にも、貧困の問題を抱えているのかなと感じる子はいた。だからといって、自ら動くこともなかったし、たぶんこれからも同じだと思う。

だから景気が少しはマシなこの時期に、できるだけ多くの人が、自ら救われて欲しいと願う。

災害の時とかは別として、困難を克服する過程の幸せの度合は、「他人に救われる相互に助け合う自ら救われる」だと思うから。

傲慢な考えかな。