マザーウォーター

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マザーウォーター
9

楽観刹那主義のススメ

豆腐屋・バー・喫茶店・銭湯を営む人々が、互いに交わり生きる様が描かれています。台詞も、音楽も、無駄がない。水の流れる音、豆をとぐ音、グラスを磨く音、お酒を注ぐ音、パンをかじる音……様々な生活音がきれいに聞こえ、だんだん感覚が研ぎ澄まされていくのを感じます。
特別な出来事が起こるわけではない、なんてことのない日常も、毎日が違う一日。タカコが淹れるコーヒーと同じで、同じものは永遠に作れないというところに良さがある。
人生は、水のように流れているのだ。過去にとらわれたり、将来を案じて分析ばかりしたり、凝り固まっていても仕方がない。もっとシンプルに、自分の気持ちに正直に生きても良いのだと気づかされます。マコトがよく口にする「今日も機嫌よくやんなさいよ」には、そんな意味も含まれているように思いました。
自分が決めたことなら、どうなっても面白い。自分の気持ちに正直に動くことで、人は進化できるのです。赤ちゃんと同じで、大人にだって未来はある。けれど、先のことなんて誰にもわからない。「今」だけで充分なのだ。それは、まさに楽観刹那主義のススメ。ポプラは、その象徴なのかもしれません。家族、仕事、友人、悩みの種は色々とあるけれど、この映画のお陰で気持ちが救われた気がします。