パンズ・ラビリンス / Pan's Labyrinth

パンズ・ラビリンス / Pan's Labyrinth

『パンズ・ラビリンス』とは、「パシフィック・リム」「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督による、内戦後もゲリラ戦が続くスペインを舞台にしたダークファンタジー。母の再婚相手である軍人が暮らす山奥の砦にやって来た少女が、つらい現実から逃れるため童話の世界に浸っていく物語で、現実世界と少女が見る幻想世界が巧みに絡み合うストーリー展開。06年スペイン・メキシコ・アメリカ製作ながら第79回アカデミー賞で撮影賞・美術賞他を受賞。07年・日本公開。

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パンズ・ラビリンス / Pan's Labyrinth
3

オフェリアは美しい

1944年フランコ政権は、反政府組織を弾圧していた。オフェリアは母とともに、母の再婚相手で政権側の冷酷な大尉のもとにやってくる。その砦の近くで、オフェリアは迷宮の守護神パンと出会う。パンは、オフェリアを地下王国の姫だと言い、そこに帰るための三つの試練を与える。
「シェイプ・オブ・ウォーター」とレトロ、グロ、不美人のダークファンタジーという共通する部分が多いです。ラストは「未来世紀ブラジル」を思い出しました。ファンタジーと理解しなければ、辛すぎて悲しすぎます。「シェイプ・オブ・ウォーター」の方が救いがありました。
思った以上に綺麗な映像でした
ストーリーは『ミツバチのささやき』に凄く影響を受けてるのを感じ取れますが、ファンタジー性はこちらの方がかなり強めでしたね

絶望的で行き場の無い少女の一縷の希望は嘘や苦痛の無い王国に帰ること。

あまりにも切な過ぎます
だって彼女の居場所はこの世界にはもうないんですから。
物語の中にしか希望が無いなんて

でも、無垢な少女だからこそ少しは報われた気持ちにはなります。
だって少女にはその王国か確かにあるのですからね

十年以上前に観た時には、ただ気持ち悪く絶望的な映画だと思い、
観たことさえ後悔した。今回、シェイプ・オブ・ウォーターの二本立てがあり、パンズ・ラビリンスは再び観るか、避けるか、とても迷った挙句、ここのレビューを見て、ある人のハッピーエンドだったと気付いたと言う感想で、もう一度リベンジして観た。
一言で言えば「血」、たくさんの血が流れる映画。
なんのために血を流すのか?男達はプライドと利権とを奪い守る争いで血を流し、母は子を産み落とすために血を流し、主人公のオフェリアは、子供ながらも、母と弟のために自分の血を流した。
この物語が少女の幻想なら、母のベッド下の不思議な植物マンドラゴの根は存在しないはず、パンズの世界は実在だと思った。
マンドラゴには、母のためにオフェリアはリアルな自分の血を与えた。
そして、生まれて間もない一番無垢な弟の血を流させることを拒否した。
この世では弱い存在の少女が、更に弱い弟を守ろうとした。オフェリアの魂の気高さが証明されたことで、彼女は本当の自分の王国で幸せに暮らす。
この戦争で悲惨な世界だけがリアル?パンの生きる世界も実在すると思えば、やっと、オフェリアの幸せを受け入れられた。
それにしても、オフェリアが試練に挑む時の、地下の蟲がうごめく汚泥を進む様、晩餐の料理の番人の狂気や、生理的に耐え難い映像が散りばめられています。でも、本当に生理的に耐えがたく恐ろしいのは人間が人間にする所業。自分はまともで立派だと考え、まだ赤ん坊の息子すら、自分の存在を後世に語り継ぐ道具だと思ったまま、戦争に明け暮れ死んだ男。
映像からは嫌悪感のジェットコースターに乗せられました。
それと同時に、怖いもの見たさの魅力に引きずられてもいきます。
そして、あんなに賢いオフェリアが、なぜパンの約束を破り葡萄を食べたのか?彼女も完璧ではなく欲望に流されたのか?疑問はありました。
それでも、泥の中に咲く華のように、オフェリアは美しいと思いました。