メイドインアビス / Made in Abyss

メイドインアビス / Made in Abyss

『メイドインアビス』とは、つくしあきひとによる日本のファンタジー漫画作品である。
作者のつくしあきひとは、ゲーム会社でデザイン等を行い、その後フリーのイラストレーターとなっている。本作品にもその経験が活かされ、ファンタジックな美しい背景やイラストが特徴である。
物語はアビスという大穴を冒険する様子が描かれている。主人公リコは人造人間のような見た目のレグと出会い、母を探しながら大穴の奥底に眠る秘密を探っていく。
美しい背景や可愛らしいキャラクターデザインとは裏腹に物語の内容は重く暗いものである。この事に関して、作中のレグの言葉を引用し「度し難い」と表現されることが多い。
テレビアニメは2017年、2022年に放映された。テレビアニメの総集編として、劇場版2019に前編『メイドインアビス 旅立ちの夜明け』、後編『メイドインアビス 放浪する黄昏』がそれぞれ公開された。2020年には新作劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』が公開された。

Jolly_Rogert1のレビュー・評価・感想

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メイドインアビス / Made in Abyss
8

アビスの呪いと祝福...アビスは人生そのもの?

この作品はアビスと呼ばれる謎の大穴で繰り広げられる冒険譚だ。アビスにはいくつもの遺物と呼ばれる宝が眠っており、人々はこぞって大穴に潜っていく。
しかし、アビスには避けて通れない「上昇負荷」という障害がある。上昇負荷はこの物語に欠かせない要素の1つだ。
アビスに潜るのにはなんら負荷はかからない。しかし、そこから少しでも上がろうものなら、人体に様々な悪影響があるのだ。それは、上昇負荷(アビスの呪い)と呼ばれるもので、深く潜れば潜るほど強くなっていく。「なれはて」と呼ばれる人外になったり、確実に死に至る。

メイドインアビスは主人公のリコとレグは、最下層で待っているであろうリコの母親ライザに遭うことを物語の主軸としている。つまり、この冒険は決して引き返すことのできない、片道切符なのだ。
加えてアビスには危険な原生生物がたくさんいる。とても生半可な気持ちで挑むものではない。
だから、ゆるふわなビジュアルに反して、残酷でえぐい描写が多い。作品にしばしば出てくる言葉でいうなら「度し難い」というべきだろうか。
アビスはしばしば、人生に例えられる。日々、何かに挑み、煮え湯を飲まされ、ときに人生を狂わせるほどの代償を払うことになる。それは子供だろうと同じだ。
あどけない子供たちがひどい目にあうのだから心がなお痛むし、突き刺さる。

そんな呪いに対し、アビスには祝福も存在する。
ナナチはなれはてではあるが、人体実験により、祝福を受けた希少な存在だ。ナナチは他のなれはてとちがい、人間らしい知能や感情も残っているし、上昇負荷の原因であるといわれている「力場」を読むことができる。つまり、呪いにあらがう力を手に入れているのだ。そのモフモフな見た目は、とても愛らしくレグの癒しにもなっている。
癒し要素やギャグをたくさんおりこまれているので、たいへん親しみやすくなっている。

そんな『メイドインアビス』は、作りこまれた世界観と人間模様と多くの謎があいまって、魅力的なハイファンタジー作品に仕上がっていると思う。