海がきこえる

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海がきこえる
8

ジブリマニアが好きだと答える隠れた傑作

ジブリといったら金曜ロードショーと結びつける人は多いと思う。
映画館で直接観ていなくとも、金曜ロードショーで全作鑑賞済みだと豪語する人も少なくないだろう。
だが、金曜ロードショーどころか映画館でも観ることができない、隠れたジブリ作品を知る人はどれくらいいるだろうか。

今作は1993年にスタジオジブリがテレビアニメとして放送した作品だ。
映画ではない点、監督が宮崎駿、高畑勲でない点、再放送がほんの数回しかされていない点から認知度は極端に低い。
しかしながら作品の質が低い訳では決してなく、現に「ジブリ作品で1番好きな作品はなんですか」と聞かれた際に今作を答える人は少なくない。

物語は、言ってしまえばありきたりな青春ストーリーである。しかしながら最大の魅力は、その表現力の凄まじさだ。
ジブリ出身の鬼才たちがまだ若手の頃に集結し、青春のリアルさと懐かしさを完璧に表現している。

青春物語はどれも輝きと憧れに満ちている。しかし、それは高校生のリアルだろうか。
高校時代を懐かしがる時、そこには恥ずかしさや後悔や緊張、少しのスリルを思い出しはしないだろうか。
何もない虚無感や焦燥感に襲われはしなかっただろうか。
今作は特別そういったストーリーではないものの、背景のひとつ、表情のひとつにそのリアルさが全て込められている。
だから観る人は、世代を問わずに今作を自分の思い出とリンクさせることができる。

そう、今作は「拓と一緒に高校時代へタイムスリップし、あの時特別に感じた同級生と再会する」映画なのだ。

こんな作品は他に無いと思う。
本当は満点をつけたいところだが、ストーリーの単調さから好き嫌いが分かれるため、10点中8点に留めることとする。
しかし、私は満を持して今作を人にお勧めしていきたい。