風の谷のナウシカ / Nausicaä of the Valley of the Wind

『風の谷のナウシカ』(かぜのたにのナウシカ)は、もともとは宮崎駿の漫画作品である。2020年12月時点で単行本の累計発行部数は1700万部を突破しており、海外でも8か国語で翻訳・出版されている。宮崎自身がこのコミックの監督・脚本を手がけ、1984年に劇場版アニメとして映画化した。戦争による科学文明の崩壊後、異形の生態系に覆われた終末世界を舞台に、人と自然の歩むべき道を求める少女ナウシカの姿を描くSF・ファンタジーである。高畑勲・鈴木敏夫・久石譲ら、のちのスタジオジブリ作品を支えるスタッフが顔を揃え、スタジオジブリの原点として扱われている作品である。「風の谷」は、海から吹く風によって腐海の毒から守られているが、ある日、虫に襲われた輸送飛行船が風の谷に墜落する。船内には、「火の七日間」と呼ばれる、最終戦争で地球を壊滅させた「巨神兵」の核が積まれていた。やがて巨神兵をめぐる闘争が勃発し、風の谷の王妃ナウシカも陰謀渦巻く戦乱に巻き込まれる。主人公ナウシカが、高度な産業文明を破壊させた大戦争から1000年後の近未来で、巨大な虫や腐海と呼ばれる毒の森とともに生き、人間同士の醜い争いから故郷と人々を守る姿を描いている。

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風の谷のナウシカ / Nausicaä of the Valley of the Wind
8

風の谷のナウシカを映画だけで終わらせるのはもったいない

「風の谷のナウシカ」は数年に1回は金曜ロードショーでも放送される宮崎駿監督の誰もが知る超有名アニメですが、原作のマンガを未だ未読の方はぜひ一読をおすすめします。この物語は、環境破壊で空気の汚染された近未来のヨーロッパが舞台で、航空戦艦を使った各国の戦いやらオームなどの巨大な虫達や巨神兵が登場する冒険活劇ですが、マンガ版では全7巻で合わせるとちょっとした事典並みのボリュームで2時間ちょっとのアニメ版では描き切れなかった世界の謎や放送時間の都合上、未登場のキャラクター等も出て来て読みごたえがあります。アニメでは巨神兵は今の核兵器のような人類にとって脅威的な存在ですし、オームは地球を守る救世主的な存在ですが、原作マンガではそれらの立ち位置がガラッと変わり、1次元から2次元に移り変わるかのような感覚が得られます。原作マンガを読み終わると、宮崎駿が本当に描きたかったのはこういうことだったのかとその世界観と物語のスケールに唸らされます。アニメ版はそれ自体で十分楽しめるものになっているのですが、原作マンガは登場するキャラクターの関係性がより複雑化し、物語も非常に哲学的で奥が深いです。宮崎駿の意図としては、幼少期にアニメを観てこの作品の表面的な世界を知り、ある程度大人になって原作マンガを読むことでこの作品の深部までを知ることができるようにしたのだなと窺い知れます。原作の方も人生で一度は読んでおくことをおすすめします。