百万円と苦虫女

百万円と苦虫女

『百万円と苦虫女』とは、ひょんなことから前科持ちとなってしまい、実家にも居づらくなったフリーター・鈴子が、百万円を貯めては場所を転々し、様々な経験や人との出会いを通して成長していく様子を描いた青春ロードムービーである。2008年7月19日に日本で公開され、興行収入は3億円、観客動員数は19.7万人を記録した。『百万円と苦虫女』の功績が認められ、監督のタナダユキは第49回日本映画監督協会新人賞を、主演の蒼井優は2009年に芸術選奨新人賞を受賞した。

anika-111のレビュー・評価・感想

レビューを書く
百万円と苦虫女
8

自分探しの逆を行く、青春逃避ロードムービー

地味で物静かな21歳フリーターの鈴子(蒼井優)がひょんなことから前科持ちとなってしまうところから物語は始まる。実家に居づらくなってしまった鈴子は「百万円貯まったら家を出て行く」と宣言し、自分のことを誰も知らない街へと一人移り住む。初めは海辺の町へ、そしてまた百万円貯まると山あいの村へ、その次は地方都市へ。人との関わりに疲れて逃避する鈴子が、移り住むたびにさまざまな人と関わりながら少しずつ成長していく青春ロードムービーである。

見どころは主人公を演じる蒼井優がかもし出す独特の空気感。「フラガール」で日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞と新人俳優賞をはじめ多くの賞を受賞している彼女は、派手ではないが役によって見た目や雰囲気が全く変わる演技派女優だ。物静かなように見えて情熱的で不器用な鈴子の繊細さは、彼女の演技と柔らかな独特の雰囲気にとても合っている。

「自分のことを誰も知らない場所に住んでみたい」
人の悪意や煩わさに触れ、そう願った鈴子の心情に共感する人も多いかもしれない。
不器用に右往左往している鈴子が可愛らしく思いつつも、知らない土地を一人で転々とするところは逞しさを感じる。
また、移り住むたびに出会う人たちも個性的で魅力ある人物ばかりなのも見所である。