パンズ・ラビリンス / Pan's Labyrinth

パンズ・ラビリンス / Pan's Labyrinth

『パンズ・ラビリンス』とは、「パシフィック・リム」「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督による、内戦後もゲリラ戦が続くスペインを舞台にしたダークファンタジー。母の再婚相手である軍人が暮らす山奥の砦にやって来た少女が、つらい現実から逃れるため童話の世界に浸っていく物語で、現実世界と少女が見る幻想世界が巧みに絡み合うストーリー展開。06年スペイン・メキシコ・アメリカ製作ながら第79回アカデミー賞で撮影賞・美術賞他を受賞。07年・日本公開。

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パンズ・ラビリンス / Pan's Labyrinth
8

だから少女は幻想の国で、永遠の幸せを探した。

この映画は、内戦後のスペインを舞台にしたダークファンタジー作品です。
主人公は、オフェリアという一人の少女。彼女は父を亡くしたあと、母と一緒に母を見染めた軍人の幹部のもとへ行くことに。母親のお腹にはその男の赤ん坊もいます。父を亡くした悲しみを抱えながらも、環境の悪い森の奥の砦で母親と一緒に移り住みます。新しい父親、ビダル大尉は冷酷残忍な男。母親の具合が悪くても、お腹の中の赤ん坊の命を優先しろと医者に命じるほどです。そんなビダル大尉がオフェリアに優しく接してくれるはずはなく、とても冷たい態度で接します。彼女には居場所がなくなっていくのです。オフェリアの救いは、使用人のメルセデスという女性だけでした。そんな中出会うのが、パンという迷宮の番人や、妖精たちです。パンは、彼女を地底の王国の姫君だと言います。地底の王国へ戻るためには試練を乗り越えないといけないとも。そして数々の試練を彼女に与えます。パンは完全に彼女の見方、というわけではありません。彼女が試練に失敗すれば、その見た目の通りの恐ろしい様子も見せます。オフェリアのストーリーと同時に、現実面では、ビダル大尉がレジスタンスとなっている民衆へ与える惨い拷問のシーンもあり、子どもには刺激が強い場面も。激化する、軍とレジスタンスの戦い、その中で懸命に生きようとするオフェリア。一見、王女として最後は幸せになるのだろうと思わせられますが、話が進むにつれて暗い影に覆われていきます。
ビダル大尉の赤ちゃんを産んだ母親は死に、パンから最後の試練が。赤ちゃんを犠牲にして、地下王国の扉を開くといったもの。しかし、最後に死を迎えたのは、オフェリアでした。彼女は赤ちゃんを守り死んだのです。そこへ駆けつけたレジスタンスや、使用人のメルセデスは悲しみに包まれます。悲劇のラストのように思われますが、その後のシーンでは
純粋無垢なオフェリアの魂が地下王国の扉を開き、最後には地下王国の王女として幸福の光に包まれるのです。
それが彼女の空想なのか、どうなのかは、あなたの判断にお任せします。
「ありのままの現実は、生きるにはつらすぎた。しかし、絶望はやがて金色の光にかわるー。」(DVDパッケージ参照)