ハンナ・アーレント

ハンナ・アーレント

ハンナ・アーレントとは1906年、ドイツ生まれの哲学者である。ドイツ系ユダヤ人であり、ナチズムの勢力が拡大してきた折にアメリカに亡命し、活動を行っていた。代表作は1951年出版の『全体主義の起源』など。1963年、『エルサレムのアイヒマン-悪の陳腐さについての報告』を発表して大論争を巻き起こした。

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ハンナ・アーレント
8

悪魔だと思われていた戦争犯罪人が実は凡庸で愚かな人物であったことを明かす名画『ハンナ・アーレント』

『ハンナ・アーレント』は2012年に公開されたドイツ・ルクセンブルグ・フランス合作の伝記映画で、監督はマルガレーテ・フォン・トロッタ、主演はバーバラ・スコワです。
この作品ではユダヤ系ドイツ人哲学者であり政治理論家のハンナ・アーレントが描かれています。
米国での配給はツァイトガイストフィルム社がとり行い、2013年5月29日に公開されました。
ドイツ人監督のフォン・トロッタの手によるこの映画は、1961年のアドルフ・アイヒマン裁判に対するアレンとの反応をメインストーリーに置いています。
アイヒマン裁判の傍聴記をアーレントは雑誌『ニューヨーカー』で取り上げました。
同裁判に関する彼女の手記はアイヒマンとユダヤ人評議会の描写や今や有名になった「悪の凡庸」という概念の紹介がなされたために幅広い議論を巻き起こしました
映画のオープニングは戦犯アイヒマンのアルゼンチンでの捕縛シーン。
アイヒマンはいわゆる「ラットライン」経由で偽造書類を駆使して逃亡したことが明らかになります。
ニューヨークで大学教授を務めるアーレントは雑誌『ニューヨーカー』にアイヒマン裁判の傍聴記を寄稿することを申し出ます。
裁判では、アーレントはアイヒマンの凡庸さと愚かしさに心を打たれます。
彼女は悪魔のようなアイヒマンを想像していたからです。実物のアイヒマンはとてもそうには見えません。
カフェでの雑談では『ファウスト』が話題にのぼりましたが、アイヒマンはいかなる意味でもメフィスト(悪魔)ではないことが論じられました。