“ぼかし”と“滲み”技法の天才「いわさきちひろ」の水彩画の魅力

いわさきちひろ。(1918年12月15日〜1974年8月8日)は、子供の水彩画に代表される福井県武生市生まれの日本の画家・絵本作家である。左利き。 常に「子どもの幸せと平和」をテーマとした。 初期作品には、岩崎ちひろ、岩崎千尋、イワサキチヒロ名義で発表されたものが存在する。夫は日本共産党元国会議員松本善明。孫は絵本作家の松本春野。

あえて油絵の表現といわさきちひろの水彩画を比べてみよう。当たり前のことではありますが、油彩画には油彩画の良さがあるのは百も承知のことでありますが、改めていわさきちひろの水彩画の素晴らしさを深く味わって観るとき、油彩画では絶対に表現できない水彩画特有の“ぼかし”と“滲み”の表現が際だっていることが一番に挙げられると思われます。

生涯「こども」をテーマに描かれてこられいわさきちひろですが、どの作品を観ても子供が主役となって美しい水彩の中で滲みながら、或いは滲んだ空間に白く浮き立ちながら描かれています。このぼかしや滲みの効果を利用して描かれたいわさきちひろ作品からは、未だ未だ未成熟でどこへ向かっていくのか未知数の子供が持つ「未来」が感じられて、観ている人の目を思わず優しくさせてしまうのではないでしょうか。

絵を描く前に必ず目にする水彩紙の白さを思うとき、いわさきちひろはこの紙の白さ自体を“美しい”と感じられたのではないかという気がします。何故そう思うかと言いますといわさきちひろ作品の多くが紙の白さをそのままに、絵の一部として、或いは白という一色を塗り描いたかのように残されているからです。

これはどこにも書かれていないことで、あくまで想像に過ぎないのですが、同じく絵を描くものとして一言の感想を述べさせていただくと。未だ何も描かれていない白い紙というのは無限の可能性を秘めていてただそれだけで“美しい”と感じられることがあります。大先生で大先輩のいわさきちひろ先生の視点を勝手に想像することは畏れ多いことではありますが、紙の白さが美しいことなど「あたりまえじゃない」と天上から声が聞こえてきそうな気がします。その既に美しく白い紙に、ほんのわずかに鮮やかな水彩絵の具がぼやけて滲んでいる、そこに偶然子供の姿が浮かび上がっている…ほんのそれだけでいわさきちひろの世界が出現しているように見せたかったのかも知れませんね。

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