燃えよペン(島本和彦)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『燃えよペン』とは、熱血漫画家として名高い島本和彦による、漫画家を題材とした漫画。全1巻と短い作品ながら、後ろ向きなようで果てしなく前向きな名言や、人の弱さを雄々しく肯定する迷言の数々が登場する捧腹絶倒の内容で知られる。主人公は架空の人物だが、描かれるエピソードの中には島本和彦の実体験に漫画的な誇張を加えたものも多く、半ば自伝的な作品となっている。
炎尾燃は、漫画制作に心血を注ぐ熱血漫画家である。私物を破壊したり、アイドルに会わせろと編集者に要求しながら、彼は今日も全力で漫画に打ち込む。

『燃えよペン』(島本和彦)の名言・名セリフ/名シーン・名場面

漫画家十訓

コミックスの描き下ろしに描かれている、炎尾燃の漫画家として守るべき10か条。作品の圧倒的な熱量にふさわしい無茶苦茶なものもあれば、意外と真面目な指摘もあり、実際に教訓として壁に飾っている漫画家も少なからず存在する。以下がその内容である。

一、命がけで描け!
一、限界を越えて描け!
一、夢を見て描け!
一、自信をもって描け!
一、思い切って描け!
一、喰うのを忘れて描け!
一、よく寝てから描け!
一、明日も描け!
一、最後まで描け!
一、失敗したら新しいのを描け!

炎尾「おれが法律だーっっ 文句あったら言ってみやがれーっ!!」

漫画家にとって編集者は最初の読者であり、良き協力者であり、そして最大の敵である。良くも悪くも「少しでも人気が出るように」と作品に介入し、漫画家を従わせようとする編集と戦うには、それ相応の闘志と覚悟が必要だと炎尾は語っている。
「おれが法律だーっっ 文句あったら言ってみやがれーっ!!」とは、編集と会う前に炎尾が己を奮い立たせるために叫んだ言葉である。これくらい無茶苦茶なことを全力で宣言すれば、何者も恐れることなく自分の意志を貫ける。そんなことを思わせてくれる名セリフだ。

炎尾「会わないともう…描きません!!」

アイドルの森型似里にすっかり入れ込んだ炎尾は、「森型に会わせてほしい、会わないとこれ以上は描けない」と知り合いの編集者に頼み込む。思わず「会ってどうするんですか」と尋ねてくる編集者に、炎尾は雄々しく力強く「会わないともう…描きません!!」と答える。
無茶な頼みをゴリ押ししようとしているように見えて実際その通りだが、これほどきっぱり言い切られると謎の説得力を感じてしまう。他人と交渉する時は、時にこれくらいの強引さと図々しさが必要なのかもしれないと思わせてくれる名言である。

炎尾「自分がどうしていいかわからんものを 作品の中でいーかげんな結末をつけるなーっ」

自身の三角関係を元に漫画を描き、その中では「振った子のことは忘れて2人は幸せになる」という結末を描いた伊藤。実際の伊藤が未だ振った側の子のことが気になって彼女との幸せを楽しめないことを知った炎尾は、「自分がどうしていいかわからんものを 作品の中でいーかげんな結末をつけるなーっ」と叫んで殴り飛ばす。
炎尾ならずとも思わず同じことを思ってしまう名セリフ。伊藤はこの後「三角関係になった2人の女の子のことは忘れて、新しい恋人と幸せになる」という漫画を描き、再び炎尾に制裁されるのだった。

炎尾「時間が人を左右するのではない…人が時間を左右するのだ!!」

年末進行で複数の原稿の作業が重なり、炎尾とアシスタントたちと疲労困憊となる。それでも後1つ原稿を仕上げれば仕事が終わるというところで、「もう少し頑張ろう」と気合を入れるアイスタントたちに炎尾は「俺は今無性に漫画から遠ざかりたい、漫画なんか描きたくない!あえて寝る!!」と無茶苦茶なことを宣言。本当にベッドに入り込んでしまう。
「休んでいる時間なんてありません」と慌てるアシスタントたちに炎尾が言い放ったのが、「時間が人を左右するのではない…人が時間を左右するのだ!!」という名言である。

やっていることは実に情けないが、それでもあまりに力強く言い切られると「それはそうだよな」となんとなく反論できなくなってしまう。島本和彦の漫画特有の“島本節”ともいうべきカッコいいようでいてどうにもカッコ悪い、1度聞いたら忘れられないインパクト溢れるセリフだ。

『燃えよペン』(島本和彦)の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

全1話で終わった『第2部』の存在

『燃えよペン』以前の炎尾の姿を描いた、『燃えよペン 第2部』という作品が存在する。しかしこの作品は掲載誌が廃刊になったため、全1話のみのものとなっている。

作者島本和彦の実体験ほぼそのままのアニメ化騒動

本作の終盤のエピソードである「嵐の転校生」のアニメ化は、作者島本和彦が初期作品『炎の転校生』のアニメ化という形で実際に体験した内容に多少脚色されたものとなっている。
この作品の主題歌を作る際、実際に作者である炎尾(島本)に歌ってもらったというのも事実で、その歌の音声データも存在している。

島本和彦の漫画作品の記事まとめ

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