アラガネの子(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『アラガネの子』(アラガネのこ)とは、漫画家・佐々木尚が描くファンタジー少年漫画。宝石や鉱石などの”石”が題材となっている。2020年11月から2023年12月まで集英社のWeb漫画アプリ『少年ジャンプ+』にて連載していた。世界観やキャラクターはオリエント風。主人公の少年・灰(かい)は、鉱石職人である朱星(あけぼし)の弟子となって、冒険の旅に出る。師弟の強い絆や旅の仲間との熱い友情、王道と言える白熱したバトルも必見。作中を彩る美しい宝石や鉱石達もまた魅力である。

『アラガネの子』の概要

『アラガネの子』(アラガネのこ)とは、漫画家・佐々木尚が描く少年漫画。公式PVでは「鉱石職人ファンタジー」と紹介されており、宝石や鉱石などの”石”が題材となっている。

2020年11月に集英社のWeb漫画アプリ『少年ジャンプ+』にて連載を開始、2023年12月27日に連載を終了した。2022年7月末ごろ、作者の腱鞘炎が悪化したため、2ヶ月ほど休載期間があった。2021年には「次にくるマンガ大賞2021」で17位を獲得し、翌年の「次にくるマンガ大賞2022」にもノミネートされている。世界観やキャラクターデザインはオリエント風。師弟の強い絆や旅の仲間との熱い友情、王道と言える白熱したバトルも必見。作中には様々な宝石や鉱石が登場し、電子版ではその”石”などにカラーが用いられることも多々ある。また作者の佐々木尚はデジタルでの作業が苦手ということで、原稿はほとんどがアナログ。トーンなどはあまり使用されておらず、線などの描き込みなどによって微細で美しく、また迫力ある絵が描かれている。SNSのX(旧Twitter)では、作業工程や原画の公開もされている。

3年前に何者かに家族や自身の左足を石にされてしまった主人公の少年・灰(かい)は、地下にある集落で1人暮らしていた。そんなある日、鉱石職人の朱星(あけぼし)と出会う。灰は朱星の弟子となり、家族や自分の石化を解くために広い世界に旅に出るのだった。

『アラガネの子』のあらすじ・ストーリー

灰(かい)と朱星(あけぼし)の出会い

導力(どうりょく)と呼ばれる特殊な力で鉱石を加工したり、その特性を引き上げる技術を持つ鉱石職人の朱星(あけぼし)は、旅の途中で萩集落(はぎしゅうらく)という集落に立ち寄った。そこで明け星は灰(かい)という少年に出会う。灰はとある鉱石職人を探していた。灰は朱星が自分の探している人物であると勘違いし、最初朱星を落とし穴に落としたりと酷いことをする。しかし人違いであることがわかった灰は素直に朱星に誤り、事情を話した。

3年前、灰の住んでいた集落は何者かの襲撃に遭った。集落を襲った犯人は何らかの力で灰の両親と妹の白(はく)、そして灰の左足を石にした。以来、灰は家族や自分の足を元に戻すために、その犯人を探しているという。手がかりは、鉱石職人の証であるピアス。その鉱石職人は赤い石に三本の線が入ったピアスをしていた。しかし朱星のピアスには三本線がない。だから誤解が解けたのだ。灰は人違いして酷い目に遭わせたお詫びに朱星に食事を振る舞った。そして灰は朱星にいろいろな”石”のことを教わった。灰は”石”のことを知るのが楽しくて、嬉しくて、翌日また朱星に会う約束をした。

灰と別れた後、朱星は萩集落の領主で宝石商の錆也(さびや)に声をかけられた。錆也が言うには、萩集落には超希少な宝石「レッドダイヤ」があるという。滅多にお目にかかれないレア鉱石の情報を得て朱星は大いに喜んだ。灰にも「レッドダイヤ」を見せてやろうと思った朱星は、翌日灰に会った時に「レッドダイヤ」について話した。しかし灰は急に怒り出し、萩集落よりもさらに地下に続く階段を駆け下りて行ってしまった。朱星もそれを追いかける。

階段を降りると、そこには誰も住んでいない集落があった。その最奥にある家の玄関で灰は倒れていた。朱星は灰に駆け寄り、灰が痛がっている左足を見る。そこには灰の石化した足を苗床に輝く「レッドダイヤ」があった。後から来た錆也は誇らしげに灰の「レッドダイヤ」に語り、さらに灰の家族を苗床に育つ宝石達を自慢気に朱星に見せた。自分や家族をモノのように扱う錆也の酷い言葉に耐えきれず、灰は叫ぶ。すると灰の潜在能力が暴走し始めた。朱星は暴れる灰を抱きしめて灰を落ち着かせる。そして怒り心頭で錆也に向かって剣を抜いた。

朱星は「ルビー/紅玉(こうぎょく)」の適合者で、相当の実力を持っていた。しかし錆也が連れてきた身体が石でできた獣・石化獣(せきかじゅう)を相手に苦戦する。それを助けたのは灰だった。灰は「ダイヤモンド/金剛石(こんごうせき)」の適合者だった。灰と朱星は2人で協力して、「ルビー」と「ダイヤモンド」の力で錆也が連れてきた石化獣を倒す。自由になった灰は、朱星のように強くなれば、自分の足や家族の石化を治す方法を探せるのではないかと考えた。そして「俺を!!あんたの弟子にしてくれ!!」と灰は朱星に頼んだ。朱星は灰の「ルビー」のように輝く赤い瞳に魅入る。そして自身のピアスを灰に贈った。鉱石職人は弟子に自分のピアスを贈るのが習わし。灰は朱星の弟子となり、家族を治すための旅に出るのだった。

三本線のピアスの男・黒鳶(くろとび)

生まれて初めて外の世界を見る灰(右)と師匠の朱星(左)。

灰と朱星は萩集落を出て、地上に出た。そして家を背負った大きなカメ・バオ爺(バオじい)に乗って鉱連盟(あらがねれんめい)に向かう。鉱連盟は全領土の鉱石や鉱石職人を管理する組織であり、そこならば三本線のピアスの男の情報が集まると朱星は考えたのだ。

鉱連盟の東方支部に着くと、鉱連盟監査局第一隊の隊員である黄(こう)という少女が朱星と灰を出迎えてくれた。黄は朱星のことを尊敬しており、今まで頑なに弟子を取らなかった朱星が灰という弟子を連れてきたことに驚いた。朱星はかつて鉱連盟の十二石座(じゅうにせきざ)という組織のトップ集団に最年少で就任し、監査局第一隊の隊長を務めたすごい人物だった。黄は朱星に猛烈に憧れており、灰に対して強い対抗心を覚える。そこで黄は灰に勝負をふっかけた。灰は朱星に席を外させ、黄の勝負に応じることにする。

しかしその勝負の途中、突然町が巨大な石化獣に襲われた。地上にある町は石化獣への対策をしているため、普段石化獣に襲われることはない。結界に何か異変が起きたことを感じ取った黄は、すぐさま避難誘導などに当たった。灰もそれを手伝う。そしてその途中で、三本線のピアスをした男に遭遇した。男の名は黒鳶(くろとび)。「輝安鉱(きあんこう)」という鉱石の適合者だった。灰が問い詰めると、黒鳶は3年前に灰の家族を石にしたことを思い出した。あわや灰も黒鳶に石化されそうになったところに朱星が駆けつける。

朱星は黒鳶の力を圧倒していたが、町の人や灰を人質に取られ、思うように戦えない。そこに黄が呼んできた応援部隊が駆けつけた。監査局第一隊から第五隊の隊長と救護隊の隊長が総出でかかり、町や住人の被害を抑えることができた。しかし黒鳶を取り逃がしてしまう。

騒動の後、朱星と灰は鉱連盟の東方支部長の無明(むみょう)に謁見。朱星は「レッドダイヤ」という希少な石を持つ灰のことをすぐに報告しなかったことを責められた。しかし朱星は黒鳶を捕まえるのを条件にその処罰を躱し、護衛として黄を同行させることを条件に、灰との旅を許してもらうのだった。

青鈍鉱山(あおにびこうざん)にて

鉱連盟東方支部を出た朱星達は、灰の自衛力を上げる武器を手に入れるために青鈍鉱山(あおにびこうざん)へ向かった。そこで朱星は元医者で武器職人である紅斗(べにと)を尋ねた。石食族(せきしょくぞく)という特殊な種族である紅斗は、朱星の旧友である。朱星達は早速紅斗の工房を訪れた。そして灰がどの武器と適応しているかを確かめる。すると灰が適合したのは紅斗の弟子の鉄(くろがね)が作った武器だった。

鉄の作った武器を灰専用に仕上げるまで、灰や朱星達は紅斗の家で世話になることにした。黒鳶の襲撃に備え、家には結界を張って用心をする。しかしその晩、黒鳶の仲間である石食族の少女・紫(ゆかり)の襲撃に遭い、灰は身体全てを石にされてしまった。奪われこそしなかったものの、「レッドダイヤ」を持つ灰を守ることができなかった朱星は、青鈍鉱山領主兼十二石座の1人・鼓水(つづみ)の元に連れていかれた。「アクアマリン/水宝玉(すいほうぎょく)」の使い手である皷水は、十二石座時代から朱星とあまり仲が良くなかった。対面した瞬間に殴り合いになる鼓水と朱星。しばらく罵声を浴びせ合いながらケンカをした後、朱星は鼓水に灰を襲った紫が石食族であることを話し、紫の逮捕を手伝うと申し出た。その代わりに灰を助けるのを手助けしてほしいと朱星は鼓水に頼む。石食族である鼓水は、同胞でありながら犯罪に手を染める紫を前から追っていた。そこで朱星の申し出を受け、協力することにした。

東方支部から第一隊隊長で黄の師匠である左紺(さこん)、第四隊長で「オニキス」の適合者・羅紗(らしゃ)、第五隊長で「アパタイト」の適合者・白藍(しらあい)、救護隊長で「ブラッドストーン」の適合者・千歳(ちとせ)も駆けつけ、石にされた灰を守りながら黒鳶と紫を追う作戦が決行された。

”石と人との狭間”

石にされた灰は不思議な空間を彷徨っていた。そこは石の魂が集まる”鉱脈”という場所だと、突然現れた赤い髪の少年が灰に教える。灰は石化されたことで”鉱脈”に迷い込んだのだという。灰は一刻も早く現実の世界に戻りたかった。しかし突然灰と赤い髪の少年の前に巨大な竜が現れ、灰に試練を課すと言ってきた。試練をこなさなければ竜に魂を食べられてしまう。試練を乗り越えても戻る術はないらしいが、莫大な導力を得ることができるという。食べられてしまっては元も子もないので、灰は仕方なく試練を受けることにした。

竜は石ころの山に灰を放り込み、その石ころの中で最も価値があるものを持ってこいと言った。灰は悩みに悩み、懸命にどれか1つを選ぼうとする。しかしどれか1つ宝石を選べば、それはかつて自分が「『レッドダイヤ』だから」という理由で近づいてきた人間と同じではないかと気がついた。自然の石にはそもそも価値はなく、それに価値を与えたのは人間である。そう考えた灰は石ころを全て磨いて、自分が磨いた石全てに価値があるという答えを出した。何故どれか1つではなく、”全て”を磨いたのかと竜に問われた灰は、かつて自分が取りこぼされた人間であり、寂しくて辛かった過去を思い出した。そんな思いは誰にもさせたくないからだと答える。だから灰はどれか1つではなく、”全て”を選んだ。竜は灰の答えに及第点を与え、莫大な力を授けた。

灰が力を手に入れたことに大喜びしたのは、赤い髪の少年だ。赤い髪の少年は、灰に宿る「レッドダイヤ」の魂。「レッドダイヤ」そのものだった。灰は「レッドダイヤ」の協力を得て、自らの石化を解き、人間の姿に戻ることができた。

黒鳶との決着

灰が”鉱脈”にいる頃、朱星は黒鳶と戦っていた。朱星は以前鉱連盟東方支部がある町で黒鳶と戦った時、黒鳶の「輝安鉱」の毒を盛られていた。毒のせいで思うように動けず、朱星はどんどん黒鳶に押されていく。ついには追い詰められ、朱星も灰同様、黒鳶に石化させられるところだった。その時、灰の全身の石化が解け、元の姿に戻った。元の姿に戻った灰には、”鉱脈”で手に入れた力がある。灰は朱星と協力して、今度は黒鳶を追い詰めていった。完全に手詰まりになった黒鳶は、自らに術を施し石になろうとする。そこへ飛び込んできたのは、別のところで左紺と黄に捕縛された紫だった。紫は黒鳶の代わりに術を受け、全身が石と化す。それを見た黒鳶は戦意を喪失した。

東方支部の町で黒鳶に石化された親子がいた。灰は手に入れた「レッドダイヤ」の力と黒鳶の術を使って、親子を元の姿に戻すことに成功。同じ方法で灰は家族を元に戻せるのではと期待を膨らませた。しかし黒鳶が言うには、黒鳶自身にもう灰の家族を治すほどの力がないという。そのため結局灰の家族を元に戻すことはできなかった。希望を失った灰に黒鳶は、「アラガネの子」になれればあるいは、と言い残し牢へと戻っていった。

「アラガネの子」とは、古い伝承に出てくる謎の人物だ。その昔、あらゆる石の力を使って今の大地を作りあげたという伝承が残っている。そのためには各地にある遺跡を調べる必要があった。灰と朱星は世話になった鼓水に別れを告げて、青鈍鉱山を後にする。旅の仲間は黄と、灰の武器が仕上がるまで同行するという紅斗と鉄だ。5人は「アラガネの子」の伝承を頼りに新たな旅に出るのだった。

遺跡の試練

灰達はまず鼓水の祖父・鼓道(つづどう)が治める龍神集落(りゅうじんしゅうらく)に立ち寄った。そこで鼓道から集落を荒らす盗賊を退治してくれたら、遺跡に入ってもいいという許可をもらう。そして灰は遺跡の中で「アクアマリン/水宝玉(すいほうぎょく)」の試練を受けた。巨大なタコの化け物と戦うハードな試練だったが、灰は一緒にいた黄や鉄と力を合わせて試練をクリア。灰は「アクアマリン」の力を手に入れることに成功した。

次に向かったのは、東風集落(こちかぜしゅうらく)。しかし、東風集落へ行くための道が塞がっていたため、予定を変更して銀鱗集落(ぎんりんしゅうらく)へ向かった。銀鱗集落は黄の故郷で、黄の兄・黄麻(おうま)が領主を務めている。また黄麻は十二石座の一角でもあった。しかし黄と家族は不仲である。正確には黄は黄麻や父の黄龍(おうりゅう)を慕っているが、黄麻や黄龍が黄のことを嫌っていた。黄の一族は代々十二石座を排出してきた由緒ある家柄である。しかし黄は十二石には選ばれず、「タイガーアイ/虎目石(とらめいし)」に選ばれた。そのため出来損ないと謗られているのだ。灰はそれに釈然としない思いを抱えた。

また銀鱗集落には秘密があった。集落の地下には石食族がたくさん住む集落があり、石食族から導力を吸い上げてそれを集落の導力源として使っているのだ。石食族をまるで奴隷のように扱うその仕組みに灰はますますモヤモヤとした感情を抱える。そしてそのモヤモヤとしたものを抱えたまま、銀鱗集落の試練に臨んだ。

藤(ふじ)と潤(うるみ)

灰と朱星は銀鱗集落に来る前に、藤(ふじ)という石食族の青年と潤(うるみ)という石食族の少女に出会っていた。そして潤もまた「アラガネの子」の候補だった。灰達が銀鱗集落の遺跡に入ろうとした時、藤と潤が現れて自分達も一緒に遺跡に入りたいと申し出る。黄麻は2人が石食族であることに最初表情を曇らせたが、最終的には試練を受けるのを許可した。銀鱗集落の試練は「アメジスト/紫水晶(むらさきすいしょう)」のものだった。しかし「アメジスト」の力を得るためには、銀鱗集落そのものが犠牲になることがわかった。灰はそれに戸惑ったが、潤は迷わず力に手を伸ばす。そのため銀鱗集落付近の火山が噴火し、集落は未曾有の危機に直面した。

藤と潤は、長い間石食族を迫害してきた人間に恨みを懐いており、潤は「アラガネの子」になって石食族だけの島を作ることを望んでいた。そのためなら人間にどれだけ犠牲が出ようが構わないというのだ。灰と朱星は潤を止めるために戦い、黄達は銀鱗集落を守るために奔走した。集落を守るために銀鱗集落の人間と地下の石食族が力を合わせる。これによって互いにわだかまりを持ちながらも互いに一歩ずつ歩み寄ることに成功した。また黄も黄麻や黄龍と和解。黄麻は本当は幼い妹である黄のことが可愛くて仕方がなかったが、黄麻が十二石座に就くために黄の力を利用していたことが後ろめたく、ずっと辛く当たっていたことがわかった。灰も最終的に「アメジスト」の力を手に入れた。潤は一時、灰達に捕縛されたが、藤に助け出され共に逃亡。行方をくらました。

灰と家族の再会

銀鱗集落が多大な被害を被ったことを受けて、鉱連盟の本部から十二石座筆頭・虹(イロハ)がやってきた。そして灰や朱星は、「アラガネの子」に関して詳しく調べるために、虹と共に鉱連盟の中央本部に向かうことになった。

鉱連盟中央本部に着いた灰達は、虹から「アラガネの子」の伝承について詳しく聞き、連盟が囲っている「アラガネの子」の候補に会うことができた。灰はそれによって自分が「アラガネの子」になっていいのか迷っていた。「アラガネの子」の試練は周りに多大な犠牲を出す可能性がある。それに灰は自身の家族を治したいという目的があるが、他の「アラガネの子」の候補には国を作りたい、救いたい、という大志があった。「アラガネの子」になれるのは1人だけ。しかも叶えられる願いも1つだけ。そんな人達を差し置いて自分が「アラガネの子」になっていいのか、周りを犠牲にしてでも自分の家族を治したいのか、灰はそう考えていた。朱星はそんな灰の思いを受け止め、灰が辛いなら旅はしなくてもいいと言って、灰の全てを肯定した。

虹もまた灰が悩んでいることに気がついていた。そこで灰が「アラガネの子」にならなくても家族を治せる可能性を提示した。虹の「ダイヤモンド/金剛石(こんごうせき)」の力は、「他人の能力を何倍にも引き上げる」というものである。それによって黒鳶の力を引き上げて、かつて石化された親子を元に戻した時のように家族を治すのだ。灰はその提案に乗り、久方ぶりに故郷に戻る。そして虹の提案してくれた方法で家族の石化を解き、3年ぶりに家族と再会するのだった。

家族を元に戻すことができた灰は、もう旅をする必要はない。悩みに悩んだ結果、灰は朱星にもらったピアスを返し、黄や鉄達と別れて家族と共に暮らしていくのだった。

「アラガネの子」になる決意

灰はずっと願っていた家族との幸せな時間を過ごしていた。しかしその一方で世界は資源不足のせいであちらこちらで争いが起きていた。灰は黄や鉄が心配で電話をかけるが、2人には灰は何も気にせずに家族と幸せに過ごすように言われてしまう。黄や鉄の言葉は心からのものだったが、灰の中には次第に罪悪感が蓄積されていく。

やがて、灰は家族には朱星と各地の集落を見て周ると嘘をつき、再び鉱連盟の門扉を叩いた。虹に会い、自分も「アラガネの子」になりたいと伝え、灰は鉱連盟で「アラガネの子」になるための試練を受け始める。灰は試練を2つ超えることができた。しかしそれと同時に灰の身体に異変が生じていく。足にだけあったはずのレッドダイヤの面積が増え、あちこちに転移。食欲もなくなり、眠くもならない。灰は確実に人ではなくなっていた。

そんなある日、鉱連盟に侵入者が現れた。灰が外の様子を見ようと自室のテラスに出てみると、そこにはかつての師匠・朱星の姿があった。朱星は灰が虹の元へ誰にも何も告げずに1人で行ったことに気がついて灰を助けに来たのだ。黄や鉄達も一緒である。そこで朱星は灰に本当の願いを言うように迫る。灰の願いは「またっ…朱星とみんなと旅がしたい!!」。灰の願いを聞いた朱星は、現れた虹と戦いながら皆と合流する。そして虹から「アラガネの子」に関する真実を聞かされた。”アラガネの子になる”ということは、候補の子供自身が最高峰の”石になる”ということ。そして”石になった”「アラガネの子」を職人が使うことで”「アラガネの子」がどんな願いも叶えてくれる”のだという。真実を聞かされた灰達は、これ以上”石になる”子供――犠牲を出さないためにも虹との戦いを始めた。

戦いの末、虹は灰達に未来を託すことを決める。そして灰は「アラガネの子」に頼らずとも世界を救うため、朱星と旅に出るのだった。

石食族 独立特区の設立

灰達と虹の戦いから3年後。灰達の住む大陸の近くにある無人島が、石食族だけが住む特区として認められ、その記念の式典が開催された。その場には3年前、灰が一緒に旅をした時に出会った人々が軒並み集合していた。成長した灰達は、「アラガネの子」に頼らずに世界を平和にする方法を未だに探し続けている。少しずつ進んでいるその子供達の姿を見て、朱星達大人は少しでもより良い未来が来る予感を感じていた。

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