【黒猫】探偵ものやホラー小説が有名なエドガー・アラン・ポーの代表作【モルグ街の殺人】
ここでは1800年代に活躍した小説家エドガー・アラン・ポーの代表作をまとめた。エドガー・アラン・ポーは『アッシャー家の崩壊』『黒猫』といったゴシック・ホラー小説や、『モルグ街の殺人』といった探偵ものの小説を書いたことで知られる。『モルグ街の殺人』は史上初の推理小説とも言われており、アーサー・コナン・ドイルにも影響を与えた作品である。
エドガー・アラン・ポー - Wikipedia
ja.wikipedia.org
エドガー・アラン・ポー (Edgar Allan Poe、1809年1月19日 - 1849年10月7日)は、アメリカ合衆国の小説家、詩人、雑誌編集者。マサチューセッツ州ボストンに生まれる。生まれた直後に両親を失って商人 アラン 家に引き取られ、幼少期の一時期をロンドンで過ごした。ヴァージニア大学...
ポーの肖像 見れば見るほど短編『アッシャー家の崩壊』の病める主人公ロデリックの顔貌描写に酷似している。幅広い額が強調されるのは、その部位にこそあらかじめ詩的才能が備わるものと想定する疑似科学『骨相学』が、当時のアメリカを席巻していたからである。
Edgar Allan Poe 1809年1月19日~1849年10月7日
アメリカの作家。ボストン生まれだが、のちに自らの育ったリッチモンドなど南部諸都市を生涯愛し、奴隷制を支持した知的貴族主義者。晩年まで経済的困窮に悩んだが、とはいえ後世に与えた文学的影響力は甚大で、『大鴉』(1845年発表)に代表される詩は以後のフランス象徴派へ、『モルグ街の殺人』(41年発表)などの推理小説はミステリーへ、『ハンス・プファールの無類の冒険』(35年発表)などの科学小説はSFへ、各々ジャンル的基礎を与えた。ボルティモアにて客死。
●モルグ街の殺人
The Murders in the Rue Morgue(1841発表)
この短編小説「モルグ街の殺人」が推理小説というジャンルの始まりだといわれ、その舞台設定など非常に緻密に計算された作品。
彼の試みた密室殺人と本格推理、意外な真犯人という三拍子揃った展開が、推理小説に求められる要素を確立した。
天才的探偵像、怪奇性と結末の意外性、物語の前半で推理の材料を読者の前に公開し、最後になって推理を披露する構成、不可能犯罪とトリックなど、コナン・ドイルなどの後世の作家にこのジャンルの約束事として受け継がれる。
この作品に登場する名探偵C.オーギュスト・デュパンはフランスの名門貴族だが、ある事情で財産をなくしパリ郊外サン・ジェルマンにある崩れかけた古い怪しげな館に、事件の記述者である「私」と同居している。
昼は戸を閉め切った真っ暗な部屋で強い香料入りの蝋燭に火をつけ、読書と瞑想にふける。夜はパリの街を徘徊して大都会の闇と影を愛するという一種の奇人。この人物設定は後のシャーロック・ホームズなどの探偵像に影響を与えている。
【あらすじ】
「これから語す物語は、いままで語った命題の注釈のように、読者諸君には見えるであろう。
18――年の春から夏にかけてパリに住んでいたとき、私はC・オーギュスト・デュパン氏という人と知合いになった」
「それからしばらくたったころ、『ガゼット・デ・トゥリビュノー』の夕刊に眼を通していると、次のような記事が我々の注意をひいたのである。
【奇怪なる殺人事件。――今暁三時ごろ、サン・ロック区の住民は、レスパネー夫人とその娘カミーユ・レスパネー嬢との居住する、モルグ街の一軒の家屋の四階より洩れたらしい、連続して聞える恐ろしい悲鳴のために、夢を破られた…】」
様々な外国人たちで賑わう国際都市パリ。そのモルグ街にある邸宅の裏庭で、居住者であるレスパネー夫人の刺殺死体が、四階の密室でその娘カミーユ・レスパネーの窒息死体がそれぞれ発見される。そのあまりに異様で不可解極まるおぞましき事件は、真相究明を難航させた。
そこに名探偵オーギュスト・デュパンが登場し事件は一気に解決に向かう。彼は、犯人のその犯行手口と外国人たちの証言、状況証拠から推理を次々と展開していく。彼の導き出した結論は驚くべきものだった。
Murders in the rue Morgue 3/6
www.dailymotion.com
●アッシャー家の崩壊
The Fall of the House of Usher(1839年発表)
ポーの作品のうち最もよく知られているのがゴシック小説もしくは恐怖小説である。
死に対する疑問、病や腐敗、早すぎた埋葬、死からの再生といったものがテーマとなっている。
それはポーが幼少期に住んだイギリスやヨーロッパへの憧憬やゴシック思想世界からの影響が基になっているといわれる。
「アッシャー家の崩壊」は、旧友アッシャーの屋敷に招かれた語り手が、そこに滞在するうちに体験する様々な怪奇な出来事を描くゴシック風の幻想小説でありポーの代表的な短編の一つである。
【あらすじ】
「雲が重苦しく空に低くかかった、もの憂い、暗い、寂寞とした秋の日を一日じゅう、私はただ一人馬にまたがって、妙にもの淋しい地方を通りすぎて行った。そして黄昏の影があたりに迫ってくるころ、ようやく憂鬱なアッシャー家の見えるところへまで来たのであった」
「ロデリック・アッシャーは私の少年時代の親友であったが、二人が最後に会ってからもう長い年月がたっていた。ところが最近になって一通の手紙が遠く離れた地方にいる私のもとへとどいて、――」
その手紙はロデリックの窮状が切羽詰ったものであり、一日でも早く再開できることを願うという「私」への招待状だった。旧友の危機的状況を感じた「私」は、この友の求めに応えるべくアッシャー家に向けて旅立つ決意をする。
「その筆蹟は明らかに神経の興奮をあらわしていた。急性の体の疾患のこと――苦しい心の病のこと――彼のもっとも親しい、そして実にただ一人の友である私に会い、その愉快な交遊によって病をいくらかでも軽くしたいという心からの願いのこと――などを、彼はその手紙で語っていた」
「彼の願いのなかに暖かにあらわれている真情――が、私に少しのためらう余地をも与えなかった。そこで私は、いまもなおたいへん奇妙なものと思われるこの招きに、すぐと応じたのである」
旧友ロデリック・アッシャーから突然の招待を受けた私は、雲のたれこめた暗い秋の日、荒涼とした景色の中のアッシャー家邸宅に辿りつく。
再会したロデリック・アッシャーは精神を病んで変わり果てていた。彼によれば、その神経疾患はアッシャー家特有のものだという。
滞在するうち、ロデリックの妹マデラインが息を引き取る。私とロデリックの二人は、その亡骸を棺に納め地下室に安置するのだが、その日からロデリックの錯乱は更に悪化していく…
●黒猫
The Black Cat(1843年発表)
酒乱によって可愛がっていた黒猫を殺した男が、それとそっくりな猫によって次第に追い詰められていく様を描いたゴシック風の恐怖小説であり、ポーの代表的な短編の一つ。
【あらすじ】
「子供のころから私はおとなしくて情けぶかい性質で知られていた。私の心の優しさは、仲間たちに揶揄されるくらいに際立っていた」
「私は若いころ結婚したが、幸いなことに妻は私と性の合う気質だった。私が家庭的な生きものを好きなのに気がつくと、彼女はおりさえあればとても気持のいい種類の生きものを手に入れた」
そして「私」と妻は、一匹の美しく大きな黒い猫を手に入れる。
「プルート―というのがその猫の名であった。彼は私の気に入りであり、遊び仲間であった。食物をやるのはいつも私だけだったし、彼は家じゅう私の行くところへどこへでも一緒に来た」
しかし「私」は酒癖が悪く、それは年とともにひどくなり、あたりのものに当たり散らすようになっていった。
「ある夜、町のそちこちにある自分の行きつけの酒場の一つからひどく酔っぱらって帰って来ると、その猫がなんだか私の前を避けたような気がした。私は彼をひっとらえた。そのとき彼は私の手荒さにびっくりして、歯で私の手にちょっとした傷をつけた。と、たちまち悪魔のような憤怒が私にのりうつった。私は我を忘れてしまった。生来のやさしい魂はすぐに私の体から飛び去ったようであった」
そして「私」は、衝動的にプルートーの片目をナイフでえぐり取ってしまう。
後悔したものの、当然のことながら「私」を怖がり避けるようになった猫に理不尽な癇癪を起こし、そのあげく首に縄をかけ木に吊るして殺してしまう。
その晩、屋敷は原因不明の火事で焼け落ち、「私」は財産の大半を失う。奇妙なことに、唯一焼け残った壁には首にロープを巻きつけた猫の姿が浮き出ていた。
その後、良心の呵責を感じた「私」はプルートーによく似た猫を見つけて飼うことになるが、その猫が片目であることに気付き嫌悪感を抱く。さらに最初は、ぼんやりしていた黒猫の胸にある白い模様が、次第にくっきりとした、ある輪郭をあらわすようになり、「私」を震いあがらせる。
耐え難くなった「私」は黒猫を殺そうとするが誤って制止する妻を殺してしまう。そして妻の死体を壁に塗りこみ…
The Black Cat
vimeo.com
●赤死病の仮面
The Masque of the Red Death(1842)
「赤死病」という疫病から逃れて城砦の奥に立てこもり饗宴に耽る王に、不意に現れた謎めいた仮面の人物によって死がもたらされるまでを描いたゴシック風の短編恐怖小説。
●大鴉
The Raven(1845年発表)
ポオの代表的な物語詩。その音楽性や様式化された言葉、超自然的な雰囲気で名高い。
Once upon a midnight dreary, while I pondered, weak and weary,
Over many a quaint and curious volume of forgotten lore,
While I nodded, nearly napping, suddenly there came a tapping,
As of some one gently rapping, rapping at my chamber door.
"'Tis some visitor," I muttered, "tapping at my chamber door —
Only this, and nothing more."
【あらすじ】
心乱れる主人公(語り手)の元に、人間の言葉を喋る大鴉が謎めいた訪問をし、主人公はひたひたと狂気に陥っていく。
主人公は部屋の中に座り、恋人レノーアを失った悲しみに暮れながら忘れられた古い伝説を読んでいる。部屋のドアを叩く音がするので主人公はドアを開くが誰もいない。しかし、主人公の魂はひりひりするほど刺激されている。そして、さっきよりわずかに大きな音が窓の方でするので主人公が窓を開けると、大鴉が部屋の中に入ってくる。大鴉は主人公を気にもとめず、パラスの胸像の上で羽根を休める。
主人公は大鴉の重々しい様が面白くて、戯れに大鴉に名前を聞く。すると大鴉が答える。「Nevermore(二度とない)」、と。大鴉はそれ以上何も言わないが、主人公は大鴉が人間の言葉を喋ったことに驚く。主人公はそれまで友人たちが希望と一緒に飛び去って行ったように、「友」たる大鴉も自分の人生からまもなく飛び立とうとしていると呟く。すると大鴉はそれに答えるかのように、再び「Nevermore」と言う。主人公はその言葉は、おそらく前の飼い主が不幸だったから覚えたもので、大鴉はそれしか喋れないのだと確信する。
●参照リンク
『エドガー・アラン・ポオ論ほか』の補 遺 と 解 説
www.wa.commufa.jp
エドガー・アラン・ポオについて —『エドガー・アラン・ポオ論ほか』の補 遺 と 解 説 — ( 2010, 4、 19 ) 第1部 1.ポオ概観 時 代 ポオの生きたアメリカ・ロマン主義の時代はイギリスのそれより 20 年遅れている。 参照 → [ 注1 ] 「ポオの時代の簡略年表」P.14 人間像 多重人格「ポオの身体には悪魔と天使が同時に住みついている」(N . P . ウィリス) 孤児…