ウルムナフ@kuririn

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ウルムナフ

ウルムナフのレビュー・評価・感想

Mr.Children / ミスター・チルドレン / ミスチル
10

どの世代にも、聞いてほしい。

Mr.Children(ミスター・チルドレン)とは、日本の4人組ロックバンドである。通称ミスチルと呼ばれており、バンド名にMrとChildrenという正反対の意味を込めたのは、子供から、大人まで幅広く自分たちの曲を聞いてほしいということと、年齢を重ねたときに、Childrenだけではおかしいということで名付けたそうだ。1990年には、ミスチル現象と呼ばれ、リリースするCDのほとんどミリオン(100万枚)突破するという異次元ぶりを発揮している。その中で、リリースする曲を手掛けているのがヴォーカルの櫻井和寿で、ほとんどの曲の作詞作曲を担当しており、中でも代表曲といえば、「イノセントワールド」「Tomorrow never knwos」「名もなき詩」「HANABI」などあるが、私に取っては捨て曲はないと思うのが本音である。
また魅力としては、桜井和寿の熱い歌声、聴く人によって解釈が異なって聞こえる歌詞、そしてバンドの一体感。
どれをとっても素晴らしいが、筆者は、歌詞に着目してほしいと感じる。日常の疲弊していく中でそっと、背中を後押ししてくれるようなものが感じられ、前を向いて歩いていける。学生、社会人、結婚、どのフェーズでも共感できる素晴らしいバンドだ。

夢(映画)
10

自分が1番好きな映画 黒澤明の『夢』

まずこの映画の素晴らしい所は必ず「美しい」ことです。どの場面のどのシーンを切り取っても「絵になる」のはすごいことだと思います。
この映画を日本人として日本語でしっかり見られるというのは幸せなことだと思います。8話のオムニバス形式になっているので見る人それぞれ好きな話、嫌いな話は出てくるでしょう。私が好きなのは「第1話/日照り雨」、「第2話/桃畑」、「第4話/トンネル」、「第8話/水車のある村」です。「日照り雨」の狐たちの一糸乱れぬ動き、「桃畑」のリアル雛人形(リアルで再現しようと思う発想もすごいし、実際に行動して作り上げてしまう財力、才覚もすごい)、「水車のある村」の心に染み入るような平和な村の描写、いずれも黒澤明の「異様な」こだわり方が伝わります。
このような映画を撮るのは、今の状況では経済的にも人間的にも不可能だと思います。私は見ている映画にCGが使われていると途端に冷めてしまうたちなのですが(気づかないようにやってくれればOK)、「第5話/鴉」では一部そのようなエフェクトが使われています。その部分は「?」でした。しかしその他は完全に大満足でした。出ている俳優たちもいい味が出ています。好き嫌いは分かれるかもしれませんが、見るなら何かをしながらではなく画面と向かい合って、映画と向かい合って見ていただきたい作品だと思います。

はたらく細胞BLACK / Cells at Work! Code Black
8

不健康生活の体の中は、ブラック企業

この漫画は、アニメ化もされた「はたらく細胞」の数多くあるスピンオフ漫画の一つです。

血や雑菌が飛び交うとは言え、全体的にほのぼのとしている雰囲気の他の原作やスピンオフの多くと違い、はたらく細胞BLACKでは笑えるようなギャグシーンがありません。

主人公である赤血球が働くのは、乱れた食生活やアルコール、喫煙、ストレスにまみれた過酷な体の中でした。
血管は血小板の集まりである血栓や、脂質・マクロファージの死骸・増殖した血管平滑筋細胞であるプラークで狭くなり、酸素を運ぶのも困難です。

登場する体内トラブルは、10年ぶりの喫煙、飲酒、ED、性病、AGA、心筋梗塞といった、依存性があり体内に影響を及ぼすものの摂取から、病気など。

他の体への輸血という職場である人間が変わるという展開もありますが、新たな体もやはりBLACKです。
体内で働く細胞たちが体験する地獄のような日々だけではなく、その体の持ち主が、単に自堕落なわけではなく、不健康な食事や生活習慣にとらわれてしまうほど、辛く過酷な環境で仕事と生活を送っているのが窺い知れます。

彼らの姿を見ていると日常生活における小さな選択が、いかに体に影響を及ぼしているかを知ることができます。
単に娯楽漫画として読むのもよし、不健康生活への戒めとして読むのもよし、というBLACKな作品です。

タブロウ・ゲート
9

タロットファンタジー漫画「タブロウ・ゲート」

作者である鈴木理華さんの「タブロウ・ゲート」はタロット画集を巡るファンタジー漫画です。
舞台は現代日本のとある豪邸。そこに一人で住む少年「氷川サツキ」が主人公です。ある日彼に届いた郵便物の中から覚えのないタロットカードの画集を見つけます。画集のタイトル「TORA(トーラ)」をつぶやいた瞬間、画集が光って何かが出ていくのを見たサツキは呆然とします。そんな彼の前に画集の持ち主を名乗る少女「レディ」が突然現れる。彼女が言うには画集から出た光は「画集の住人(タブロウ)」であるとのこと。二人は散逸したタブロウを回収することになります。
タブロウはそれぞれタロットカードを司っており、固定の人格は持たず主のタロットへのイメージによって人格が反映されます。サツキとレディは主としてタブロウを出現させることが出来るが、二人の呼び出すタブロウは持っているイメージが全く違うため同じタブロウでも人格が全く違います。タブロウごとに持つ特殊能力は変わらないが、人格が違うというのはストーリーの中でいろいろな出来事を引き起こしていきます。それがとても厄介でいて観ている方は面白いです。
また主人公二人はそれぞれに画集への関わりがあり(特にサツキ)そのきっかけやその後の物語への影響は必見です。
ファンタジー漫画としてかなり満足感が得られると思います。

ヨルシカ / Yorushika
9

風景を描く音楽

ヨルシカはn-buna氏とボーカルのsuis氏の男女2人の音楽ユニットです。suis氏の柔らかく優しい歌声とn-buna氏の描くどこか懐かしく、世間や聞き手に向けたメッセージ性の強い歌詞とメロディが特徴のアーティストです。
音楽を聴いているのに、目の前に風景が広がるような世界観と、日常に溢れている何気ない風景を思い出させてくれるます。また、聞き手に対する投げかけや世間に対する不満や誰もが一度は感じたことのある、生きていく上での疑問、価値観を込めて作られた歌は多くの人の心をつかみます。
ミュージックビデオに最新のCGやアニメーションを使用しているにもかかわらず、歌詞には短歌や俳句、和歌を連想させる古風な歌詞が書かれています。作詞、作曲のn-buna氏本人も短歌や和歌が好きなようで良い歌は風景を連想させると言っており、聞き手の頭の中に風景を描き出すような曲の表現力が非常に長けています。
何よりも魅力的なところはヨルシカの2人が自分たちの作ったものを愛していてるというところにあります。
自分たちの好きなものを世の中に発信しているという、強い自信と拘りがあるからこそ多くの人たちの心に響く歌が作れるのだと思います。

古見さんは、コミュ症です。
8

コミュ症の女子高生と個性的すぎるクラスメイトの日常を綴った漫画作品

『古見さんは、コミュ症です。』は私のおすすめする作品の一つです。
あらすじは、有名な進学校である私立伊旦高校に入学した主人公・只野仁人は玄関で同じクラスになる古見硝子と出会います。挨拶は大事と思い、只野くんは古見さんに挨拶をしますが、古見さんは只野くんを睨みその場を去ってしまいます。実は、古見さんは作品のタイトルの通り、人と会話をするのが苦手(コミュ症)だったのです。後に、その事を知った只野くんは古見さんの初めての友達となり、100人の友達を作るという古見さんの夢を叶えるために、あまりにも個性的なクラスメイトを相手に奮闘するというお話です。

この作品で特におすすめしたいポイントは、古見さんの可愛さにあります。コミュ症であるがゆえに人と話すことが難しいのですが、彼女には友達が出来たらやってみたい事が沢山あり、その端麗な見た目に対するかわいらしい願望のギャップに読んでいて心を打たれます。
また、只野くんの幼馴染みで誰とでも仲良くできる長名なじみや、古見さんへの愛が重い山井さん、あがり症の上理さんなど、個性的なクラスメイトが数多く登場するのも見どころです。

2019年5月の時点では12巻まで単行本が出ており、原作のストックの多さから、私がアニメ化を楽しみにしている作品の一つでもあります。笑いもあり、感動もあり、只野くんと古見さんの関係に胸がときめく作品ですので、気になった方は是非書店で手に取ってみてください。最高です。

翔んで埼玉(映画) / Fly Me to the Saitama
9

映画館で声をあげて笑って観られる映画

タイトルは『翔んで埼玉』ですが、実際には1都6県の関東ローカルネタに溢れているため、他地域の方はピンと来ないところがあるかもしれません。
逆に、関東の方は、万難を排してでもぜひ、映画館で声をあげて笑いながら観てください。とくに、埼玉の映画館でご覧になることをお勧めします。

主演が東京都民(二階堂ふみ)と埼玉県民(GACKT)の役なのに、なぜか二人とも沖縄県出身という、不思議なことになっています。
原作には出てこなかった、神奈川県・千葉県・群馬県・栃木県は、とんだとばっちりを被っていますが、それすらも壮大なこの映画の世界を成立させるために必要な要素となっています。

原作は『パタリロ!』で有名な魔夜峰央の同名の漫画ですが、読んでいなくても全く問題ありません。もちろん、読んでいたら、ここまで再現するのか…!と思うこと間違いなしです。
美麗な描写とちょっとの毒を含んだ魔夜峰央の作品世界を、余すところなく、馬鹿馬鹿しくも仰々しく再現していますが、もちろん、魔夜作品を全く知らなくても楽しめます。

出演者と製作スタッフの、魔夜峰央の世界観への熱烈なリスペクトと、「コメディは真面目にやればやるほど可笑しくなる」という姿勢を、本気で全力で表現したことは、日本映画の快挙と言ってよいでしょう。
1カット1カットの画面の情報量の密度がとても高く、建物の設定から小道具の本当に細かいところまで手が込んでいるため、1回観ただけでは見逃してしまうような小ネタが至るところに仕込まれています。
とくに、人物デザイン監修/衣裳デザインを、『累ーかさねー』の柘植伊佐夫が担当していることが大きいです。
『累ーかさねー』のエキセントリックな人物表現が、更にパワーアップしており、非現実的な人物設定を視覚的に語らせて、予備知識ゼロの観客であろうと、この荒唐無稽な作品世界に否が応でも引きずり込むことに成功しています。
原作は「埼玉ディスり漫画」として爆発的に有名になりましたが、映画を観終わったとき、何故か埼玉が好きになっていることでしょう。