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Fukuyama

Fukuyamaのレビュー・評価・感想

彼岸島 デラックス
5

彼岸島は全編通して見たいもの。

あきらという少年が主人公のこの映画は漫画が原作。
そちらの方は見たことはないのですが、鈴木亮平さんの演技が見たくて拝見しました。
この映画にはシリーズがあるので、その間の作品という形です。
ですから、これ1話では完結しないところがちょっと物足りなさを感じました。
もちろん続きが気になってみたくなるのではありますが、これはこれでそれなりの完結がないと気持ちが不燃焼ぎみです。
アキラによって兄であるアツシが倒されたのを区切りとしたいのでしょうが、私としては今一つでした。
ちなみに仮面を被った人間側の男性は顔が見られずにずっと謎めいていて、それの正体も見れないところが残念。
ネットで調べると石橋蓮司さんが演じていた模様なのですが、それならそれで視聴者がドキリとするようなチラリズムや露出感を出してもらった方が良かったような気がします。
有名な方なだけにそれをほとんど感じられなかったのはもったいなく思います。
著名な俳優であっても声だけの露出が多くないと解らないです。
白石隼也さんはとてもイケメンですが、どこか昔ながらの正統派日本人を思わせる出で立ちでなんだか安心感がある青年でした。
彼のフレッシュさも十分に味わえて主人公ヒーローとしてはとても楽しめた作品でした。

禅と骨 Zen and Bones
9

時代に翻弄されたハーフお爺ちゃん禅僧の魂の記録

横浜で生まれ育ったその青年は、次兄を連れアメリカへ帰国したのち音沙汰の無くなった父を探しに、横浜港から氷川丸に乗った。それが母との今生の別れとなるとは知らずに。
戦争とさすらいの血に翻弄された日米ハーフ禅僧の、破天荒な人生を描くドキュメンタリー映画、「禅と骨(Zen and Bones)」。茶花や陶芸を嗜み、日本語の本を英訳、映画「動天」では宣教師を演じ、千玄室や水上勉と親しく交流した、坊さんというより飄々とした風流人、京都天龍寺禅僧ヘンリ・ミトワ(Henry Mittwer)の晩年に密着した作品。この坊さんが童謡「赤い靴」を映画化したいと素っ頓狂な夢を抱いた事により、家族や友人を巻き込みながらも、坊さんの数奇な人生そのものがクローズアップされる事となった。
渡米後ミトワ青年はサチコと出会うも、太平洋戦争勃発。日系人強制収容所に共に抑留される。日本へ送還されたいが為に米軍に志願するも、いつしか家族も増えアメリカに留まり、日本に単身帰国したのは21年後。禅に傾倒し京都妙心寺へ身を寄せる。
LAに残ったサチコはピアノを教え生計を立て、その後娘達が教育の為に日本に呼び寄せられ、最終的に一家は天龍寺内に居を構える。裏千家に出入りし陶芸や生け花も始め、ミトワ青年はやがて僧侶の道へ。時は経ち、京都に変わり者のお爺ちゃん僧侶がいると聞きつけた、「ヨコハマメリー」を完成させたばかりの中村監督と出会った。

赤い靴はいてた女の子
異人さんにつれられて行っちゃった
横浜の埠頭から船に乗って
異人さんにつれられて行っちゃった
(作詞: 野口雨情、作曲: 本居長世)

映画「赤い靴」は実写版、アニメ版、様々な試みがなされたものの、予算の関係や方向性の錯綜でうやむやに。月に一度上洛し、交流の続いていた中村監督のカメラは、感情をあらわにし、禅の道というよりgoing my wayな気分屋爺さんの日々をつぶさにとらえる。多感な時期に言葉もよく分からぬ日本に連れてこられた事が、ある意味未だにトラウマとなっている次女との激しいいさかい、居合わせた長男長女も含め、日本語と英語のちゃんぽんなやり取りとなってゆくカオス的シーンが、観ているこちらの心にグサリと突き刺さる。

若き頃の再現ドラマ内でミトワ青年を演じる、奇しくも同様にドイツ系アメリカ人の父親を持つ(けれど長兄を演じたチャド・マレーンが仰天したほど英語が話せなかったらしい)ウエンツ瑛士の熱演も光る。「刑事さん、私には分かりません。私は日本で生まれた日本人です。」…バラエティ番組の時とも違う、素の状態の自分を出せたという。
他には元芸者の姐御的な母親として余貴美子が出演、そしてエンドロール時にかかる曲は横山剣の歌う「骨まで愛して」。
ミトワは赤い靴の女の子に何を託したかったのだろう。そしてヒトは何処からやって来て何処へ流れてゆくのだろう…そんな事を改めて考えさせられもし、幕が閉じるまでYokohamaが通奏低音のようにゆるゆると根底に流れている作品である。

ラ・ラ・ランド / La La Land
8

この作品の魅力は”意外な結末”

オープニングのインパクトがすごい。高速道路で大勢のダンサーたちが楽しそうに踊るシーンは、見ているだけでテンションが上がる。ストーリー自体は、自分のジャズバーを開くことを夢見るセブと大女優を夢見るミアとのラブストーリーで、二人の関係性が「春・夏・秋・冬」のシーンとともに移り変わっていく様子が描かれている。前半の「春・夏」のシーンでは、ダンスシーンが多めで、テンポよくストーリーが進んでいく。話の展開が早い気もするが、私自身、踊ることが好きなので、ダンスシーンの多い前半部分は気に入っている。見ていると、自分も一緒に踊っている気分になって気持ちがいい。じっくりストーリーを見るというよりは、ダンスや歌のシーンを楽しみながら見るのがおすすめ。後半の「秋・冬」のストーリーは、前半とはガラッと変わり、ダンスや歌は少なめで、セブとミアの関係性の変化が重点的に描かれている。成し遂げたい夢をなかなか思うように実現できず葛藤するセブとミアの姿は、今までに一度でも何か夢を追いかけた経験がある人ならば、きっと強く共感できるだろう。また、二人がそれぞれの夢を叶えるために別れの道を選び、数年後、二人が再開するシーンは、夢を優先させることで結ばれなかった二人の愛が切なく描かれている。意外にもハッピーエンドではないこのシーンは、夢を追いかける人に向けて、本当に大切なものは何かを訴えかけているように感じた。