アルテ

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アルテのレビュー・評価・感想

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アルテ
8

大人になっても心の中のはつらつとした少女の部分を大切にできる

中世イタリアを舞台としたアルテという絵描きを目指す貴族の少女のお話。単行本の巻末後書き漫画を読むに、作者はしっかり時代考証をしているので、世界史好きな人にも楽しめる内容になっています。
現代社会より遥かに女性の生き方が限定されている中で、最初は気合、次第に愛嬌やしたたかさにより次々と障壁を打ち破っていく様子は読んでいて元気をもらえます!
また、他の登場人物についても、障壁に関して「そういうものだから」と受け入れたくましくやり過ごすアルテの母親や、アルテのように障壁を乗り越えていく力はないけど自分なりにできることをやっていこうとするダーチャなど、きっと誰かしらに共感できるはずです。
そして恋愛要素として、師匠であるレオに想いを寄せるようになるのですが、これも単なるラブストーリーに収まるものではないところが味わい深いです。女性絵師という異例中の異例である自分のことを認めてくれた大切な存在として慕い、でも表向きでは恋に溺れるのではなく師匠としてひそかに大切に思い続ける様子が、作品を通して終始描かれております。レオも昔の自分を想起させるアルテをどこか特別な存在とみているのでもどかしさ半分、でも明らかな恋愛というわけではないこの距離感を続けてほしいとも感じます。

アルテ
9

16世記の男尊女卑の世界で、画家を目指すお嬢様

女性はまともな生活をしたければ、男性に気に入られるしかない。
そんな社会で貴族家に生まれた15歳のヒロイン・アルテは絵を描くのが大好きでしたが、そんなアルテを応援してくれる父が急逝し、もともとアルテが絵にのめり込むことを好ましく思っていなかった母は彼女が描いた絵を焼き払ってしまいます。

画家になるには工房に弟子入りするしかない時代で、アルテは知っている工房全てを訪問しますが絵を見てもらうことすらなく門前払い。
どうして話も聞いてもらえないのかを問うアルテに突きつけられた言葉は「お前が女だからだよ」。

多くの人であれば、ここで心が折れて悲しみに暮れそうなものですが、このヒロインは「悲劇のヒロイン」ではなく、その場でこの時代の女性の象徴でもある長い髪を切り落とし「だったら女を捨ててやるわよ!」と啖呵を切ります。
あまつさえ、それでも足りないならとあわや胸まで切り落としそうになったところで、一人で工房を営むレオの無理難題をこなし弟子入りすることに。

この序盤のあらすじがこの作品の最大にして圧倒的な魅力です。
誰でも心折れるような環境の中、ひどい差別を受けながらもその姿勢と実力で徐々に周囲の信用を得ていく。
性別を超越した、しかし強く魅力的な女性であるアルテの姿は読む人に憧れと勇気を与えます。

アルテ
10

漫画の枠を超えた作品

「中世イタリアが舞台の漫画」と知って珍しいと興味を持ち、読み始めたのですが、想像の何倍もワクワクする内容で非常に面白かったです!
男尊女卑の時代に画家を目指した貴族出身の少女アルテが、恩師レオと出会い、高級娼婦のヴェロニカやお針子のダーチャ、同じ徒弟仲間のアンジェロや貴族の娘カタリーナなど、様々な人物に影響されて成長するストーリー。
話の面白さは勿論のこと、アルテが描く絵の美しさがそのまま再現されており、見ているだけで目が癒されます。
また、中世イタリアの美しい街並みや文化も同時に楽しむことが出来、当時の人々の生活の様子を知ることが出来ます。
物語の中でよく食べられているあの大きなパンはぜひ一度食べてみたい!
物語が進むにつれ成長するアルテ、レオとの関係にも変化が訪れる中で、あるスペイン貴族との出会いで大きな転機を迎える場面では、それまで和やかに進んでいたストーリーが一気に緊張感を増し、ハラハラドキドキし読む手が止まりませんでした。
また、お転婆でじゃじゃ馬なヴェネチアの貴族の娘カタリーナとアルテとの絡みは笑いあり涙あり、個人的にとても大好きな場面です。
画家として、そして一人の女性として様々な葛藤の中で成長するアルテ。
女性も男性も、みんなが共感できるストーリーなので、全世代の人にお勧めできます!

アルテ
8

アルテという漫画について

時は16世紀初頭フィレンツェ。貴族の娘である「アルテ」は、父親を失い、お嫁に行くか、修道院に行くかの選択を母親から迫られていました。それは、16世紀初頭のほとんどの貴族娘たちの教育は、礼儀作法、読み書き計算・裁縫・楽器などであり、女は家に居て男の言うことをよく聞き、子を産み育てることが仕事であり、自由の無い生活でした。アルテは、その教育の中に絵を描くことがあり、暇さえあれば絵を描いていました。ところが、父を失い選択を迫られた彼女は、「自分の好きな絵を描いて食べていく」という、当時では考えられない行動に出ます。数々の工房を回り、雇ってもらえそうなところを探しますが、「女」というだけでアルテの書いた絵を見る事すら拒みます。彼女は、自ら女の証である長い髪をバッサリと切り捨て暴挙にでたところで、小さな工房で一人親方として生きる「レオ」に弟子になるテストを受けさせてもらえることに。レオから難題を言われ、何度も弱気な気持ちになりながらもアルテは、最後までこなします。彼女を突き動かした「怒り」の衝動に、自分自身の力で生きていくという強い意志を再確認し、晴れてレオの弟子として第一歩を踏み出し始めようとします。