吉澤嘉代子

吉澤嘉代子のレビュー・評価・感想

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吉澤嘉代子
9

舞台を見てるかのようなライブパフォーマンス

吉澤嘉代子は埼玉出身のシンガーソングライターである。
代表作は「残ってる」。口コミで噂が広まり、話題となった。
この曲は朝帰りの女性の切ない心情を歌ったもので、その歌詞の端々に滲み出ている女性の脆さと一夜の恋の儚さに、共感したファンはたくさんいたことと思う。
この曲のような等身大の恋愛を描いたものだけでなく、彼女の楽曲は子ども時代に夢見た童話のような雰囲気を持つものから、大人の女性の嫉妬や苦悩が剥き出しになったものまで、実に幅広い。
卓越した言葉のセンスと、型にはまらない音楽性で、1つのアルバムを聴いていると、まるで物語を聴いているかのような気分になる。
そんな彼女の最大の魅力は、なんといってもライブのパフォーマンスにある。
普段は大人しく、MC等もたどたどしい(そこが良いところでもある)が、演奏が始まると一気に何かが降りてきたかのように変貌する。
曲に合わせてくるくると表情が変わり、声色が変わり、時には小芝居やダンスをしながらステージの上で輝く彼女はまるで舞台女優のようである。
お気に入りの曲目当てで来ていた観客も、音楽の中に「生きている」彼女を見ると、心を掴まれずにはいられず、一瞬で彼女の世界観の虜になってしまう。
ぜひ、歌手吉澤嘉代子の圧巻のライブパフォーマンスを一度は見ていただきたいと思う。

吉澤嘉代子
8

透き通る歌声、独特の世界観に浸るならこの人です。

吉澤嘉代子さんという方は、1990年埼玉県川口市生まれのシンガーソングライターです。独特の世界観、と表しましたが、この方の作る曲が、「女の子」をテーマにした曲が多いことがその理由です。
色々な女の子、例えば、気になる人からの電話を待っている女の子の「らりるれりん」、旦那さんの首を抱えて車に乗り込む「地獄タクシー」、ヤンキーな先輩に恋をし、釣り合う女の子になるために駄菓子屋へ行き例の”ブツ”を買う「ブルーベリーシガレット」など、様々な事情の女の子になりきった曲を作っています。
登場人物が独特ではありますが、一人ひとりの主人公の気持ちが丁寧に作られています。吉澤さんの描く人は全然違う人たちなのに、どこか自分と似ている所を持っているような、不思議な共感性があると思います。分かるところとそういう世界もあるのかと感心してしまうような面白さが、この方の魅力のように感じます。聞き入っていると、うっかり心の深いところに刺さる歌詞も、魅力の一つです。透き通る声をしていて、「泣き虫ジュゴン」や「ユキカ」といった、寂しさやもどかしさをまっすぐに歌った曲は、一度聞いて見てほしい曲です。透明感のある歌声とともに語られる心の叫びが、とても美しいのです。